欧州委員会は2018年11月、2050年までにEU域内の温室効果ガスの排出量を実質ゼロにする「気候中立」の実現に向けた、長期戦略を発表した。さらに同委員会は2019年12月、気候中立を目指すための新たな政策である「欧州グリーン・ディール」も公表。意欲的な目標の達成に向けて、計画を進めている。
EU加盟国として気候中立の目標を掲げるデンマークでは、2022年に同国初の木造駐車場を建設予定だ。首都コペンハーゲンに次ぐ第二の都市オーフスで、建築設計事務所のJAJA ArchitectsやOpen Platformなど、4つの組織が共同で建設を行う。駐車スペースの広さは約17,500平方メートルで700台の車をとめることができ、他にもジムやギャラリー、カフェなどを備えた公共スペースも設けられる。
同計画では駐車スペースをあえてコンパクトにまとめることで、緑地や憩いの場のためのスペースを確保している。6階建てになるという駐車場の正面には、壁面を樹木で覆う垂直庭園がつくられる。駐車場に緑を取り入れることで周囲の風景に溶け込ませる。
さらに1階には、環境にやさしい乗り物やシェアリングサービスを提供する施設がオープン予定だ。充電ステーションやカーゴバイクのレンタル、カープーリングやカーシェアリング車両専用の駐車スペースがあったりと、環境的に持続可能な交通の普及に貢献する。いずれは、これらの施設を上の階にも拡大することを想定している。
多くの車が出入りする駐車場が環境問題に対応する様子からは、一見パラドキシカルな印象を受ける。しかしJAJA Architectsは、この木造駐車場が街の中心部や港と近い距離にあることから「車を街の外に置き、あとは徒歩や自転車、スクーターで移動をすることができる」と、説明している。
利便性を追求する現代社会と、地域の未来を見据えたエコロジカルなライフスタイルが調和する空間。ここで車を乗り捨てて、街へ出てみよう。
【参照サイト】JAJA Architects
【参照サイト】Open Platform
(画像提供:Open Platform and JAJA Architects)