気候危機を伝える。体温で絵柄が変化するフィンランドのアート切手

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2019年に続き、世界では2020年も史上最高に暑い夏を記録した(※1)。日本でも国内の最高気温記録が更新されるなど、気候変動の影響が加速している。しかし、市民の関心は今ひとつのようだ。2020年3月に行われた意識調査によると、回答者の約50%が「地球温暖化問題に関心がある」という(※2)。逆にいうと残り半分は「あまり関心がない」、「全く関心がない」、「わからない」と回答しており、気候変動に対する人々の意識向上にはまだ余地があるというのが現状だ。

市民の気候危機への関心をいかに高めるかという課題はどこの国でも同じ。北欧フィンランドの郵便局では2018月に、ある仕掛けをしたアート切手を発行した。

種類は左から、気候、鳥、人の移動などを描いたもの。実はこの切手、熱に反応するインクが使われており、こすったり、指で温めたりすると、気候変動への対策に迅速に取り組まなかった場合にフィンランドにどんな影響が起こるのかを表現したデザインが現れる仕掛けとなっている。

気候変動の影響を伝えるアート切手

Image via BERRY CREATIVE

「赤」の鳥の絵柄では骨が表れ、多くのフィンランドの固有種が気候変動によって絶滅の危機にさらされることを表現。「青」の雲から雪が降っているデザインは、雷と雨に変わり、冬の雪の嵐が失われることを表現している。「緑」の人が移動するようなシルエットが描かれたものは、気候変動によって多くの人が母国を離れ、移住しなければならなくなることを表している。

デザインをしたのは、フィンランドのデザイン会社BERRY CREATIVEだ。さまざまな気候変動の影響を深堀し、その中からこの三つの現象をアイコンとして選んだのだという。切手という限られたスペースを活用して危機を表現したユニークさが注目され、Dezeenマガジンが主催する建築&デザイン賞である「DezeenAwards」のグラフィックデザイン部門の最終候補にも選ばれた。

同社の担当者は、Dezeenに対し「切手とは違って、実際には気候変動の影響は元に戻りません」と語る。指を離して、元の状態に戻ったときに感じる安心感。この感覚を忘れずに、今や「気候危機」と呼ばれるこの状態をどうすれば緩和することができるのか。私たちの行動が問われている。

※1 米海洋大気局(NOAA)、世界気象機関(WMO)による調査
※2 株式会社エンゲージメント・ファーストによるインターネットアンケート調査(対象 1,000人)

【参照サイト】Ilmastonmuutos-postimerkki
【参照サイト】Berry Creative designs Climate Change Stamps with heat-reactive ink

(2020年11月5日 追記)切手発行の年に誤りがあったため、修正いたしました。

Edited by Kimika Tonuma

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