世界の喫緊の課題となっている気候変動。2015年に採択されたパリ協定では、地球全体の平均気温の上昇を産業革命前から2°Cより低く保つとともに、1.5°Cまでに抑えることを目標としている。そのためには、世界の温室効果ガス排出量を次の10年間で半減させる必要があり、日本も含めた各国政府は2050年までにカーボンニュートラル(炭素排出量実質ゼロ)を掲げている。
これまで以上の持続可能性が求められていることを受け、世界的なスポーツウェアブランドのナイキは、シューズに「第二の人生」を与えることで製品の寿命を延ばす新たな取り組みを発表した。「Nike Refurbished」と呼ばれる本プログラムでは、米国内にある15の店舗で、購入から60日以内に返品されたシューズの再販売を始める。
返品されたシューズは、状態を一つひとつ点検されたうえで、丁寧に手入れを施され、陳列棚に戻される。痛みや摩擦、汚れの度合いを3段階に分け、そのレベルよって割引価格で新たな顧客に販売されるのだ。これにより、汚れた商品の即廃棄・埋立地行きを防ぐことができる。
ナイキのサステナビリティ・オフィサーであるNoel Kinder氏によると、ナイキの二酸化炭素排出量の70%は、製品を構成する素材の製造によるものだという。そのため、新たなサステナブル素材に関する研究開発を加速させ、低炭素の代替品を市場に投入する。具体的には次の5年で環境に配慮した低炭素素材の使用を全体の50%に増やし、温室効果ガス排出量を50万トン削減するという。
同社はこれまでも、限りなく廃棄をなくしたスニーカー「Atsuma」や、宇宙ごみを活用したスニーカー「Space Hippie」の販売をするなど、素材のサステナビリティに取り組んできた。現在、ナイキのシューズとアパレル全体の製品数の約75%にリサイクル素材が使用されている。
今後はさらに製品の寿命を延ばし環境負荷を低減させるために、新たなビジネスモデルを模索している途中だ。
一度履いたシューズをブランドが再販売するケースはまだまだ珍しい。しかし、シューズを少しでも長く使用し、役目を終えたあとは廃棄するのではなく次の製品の開発に活用することで、サステナビリティを高めることができるに違いない。
【参照サイト】Watch How Nike Refurbished Works
【参照サイト】NIKE REFURBISHED