海が温暖化を止めるタンクに。海洋のCO2吸収力を上げる技術者が登場

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海が大気中のCO2を吸収することで起こる「海洋酸性化」という問題をご存じだろうか。

海は何百万年も前からCO2を吸収してきたが、近年は大気中のCO2濃度の増加に伴い、CO2を吸収しすぎてしまうことが問題になっている。気象庁によると、海は1990~2020年の平均で1年あたり21億トン炭素を吸収したという(※1)

IPCC(気候変動に関する政府間パネル)は、海洋酸性化が進むと、海がCO2を吸収する能力が低下すると指摘している。すると大気中に残るCO2の量が増え、地球温暖化が加速することが懸念される。また、海洋酸性化の進行により、プランクトンやサンゴなどの海洋生物の成長に影響が及ぶ恐れもある。

アメリカのスタートアップ企業「Ebb Carbon」は、海洋酸性化を抑えて海のCO2吸収能力を向上させるため、独自の電気化学的手法により海から酸を除去する取り組みを進めている。

Ebb Carbonは海水淡水化施設や養殖施設などから受け取った塩水を、水酸化ナトリウム(NaOH)と塩酸(HCl)に分離。そしてNaOHだけを海に戻すことで、海水の酸性化を抑える仕組みだ。HClは海に戻さず、様々な産業用途に使用される。

こうしてNaOHが加わると、海のCO2吸収能力が向上するという。NaOHが大気中のCO2と反応すると重炭酸塩が形成され、重炭酸塩が海中でCO2を1万年以上貯蔵する。NaOHとCO2が反応するときに、海の酸性度を上昇させる水素イオン(H+)が発生しないのも大事なポイントだ。

同社によると、こういった自然の仕組みを利用することで、直接空気回収(DAC)など他のCO2除去技術より低コストでCO2を回収できるという。風や波の力を使ってCO2を捕獲できるうえ、回収したCO2を人工的に処理する必要がないため、エネルギー消費量が少なくて済むのだ。

同社は、この手法を使ってCO2を1トン回収するコストが、今後5年以内に100ドル(約1万円)を下回ると見込んでいる。

Ebb Carbonは、2021年に電子決済サービス大手ストライプから大規模な先行投資を受け、更なる技術の進化が期待されている。世界で様々な炭素除去プロジェクトが誕生するなか、Ebb Carbonの手法が幅広く利用されるようになるのか、今後の動向に注目したい。

※1 気象庁|海洋の健康診断表 海洋による二酸化炭素吸収量(全球)
【参照サイト】 Home | Ebb Carbon | Carbon Removal Technologies

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