南東ヨーロッパにある人口約700万人の国、セルビア。国連開発計画(UNDP)によると、セルビア人の59%は都市部に住んでおり、自動車やGHG排出量の増加につながっているという(※1)。
CO2を吸収したり空気を浄化したりするために、都市部に木を植える方法があるが、地域によっては十分なスペースがないことがある。また、自然環境の汚染が深刻な場合、木は生きていけないという指摘もある。空気を浄化できる、他の方法はないだろうか。
セルビアにあるベオグラード大学の研究者らは、600リットルの水槽に入った藻がCO2を吸収する、「LIQUID 3」という装置を開発した。
装置はベンチとして使えて、スマートフォンの充電もできる。また、ソーラーパネルが取り付けられており、夜になると光る。LIQUID 3という名前は、「liquid tree(液状の木)」から来ているそうだ。
木も藻も、光合成によってCO2を吸収する点は同じだが、藻は木より効率良く吸収できるというメリットがある。プロジェクトに関わった研究者によると、LIQUID 3に使われている微細藻類は、樹齢10年の木2本もしくは200平方メートルの芝生と同じ量のCO2を吸収。木の10~50倍効率的だという。
とはいえ、研究者らの目的は、木をこの装置に置き換えることではない。都市部で木を植えるスペースがない場合に、LIQUID 3を使いたいという考えだ。
LIQUID 3の藻は水道水で育てることができ、暑さや寒さに強い。木ほど、自然環境の汚染に敏感でもないそうだ。LIQUID 3は特別なメンテナンスが不要で、装置内で発生したバイオマスを1か月半ごとに取り除き、新しい水とミネラルを入れれば、藻が育ち続ける。取り除いたバイオマスは、肥料として使える。
LIQUID 3は、セルビアのスタリ・グラードという街に初めて設置されたそうだ。街中にアクアリウムがあるようなもので、観賞用として親しむのもいいのではないだろうか。
※1 The first algae air purifier in Serbia | UNDP in Serbia
【参照サイト】LIQUID3 – Urban Photo-Bioreactor
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