社会をもっとよくする世界のアイデアマガジン、IDEAS FOR GOODの編集部が選ぶ、今月の「ちょっと心が明るくなる世界のグッドニュース」。前回の記事では、長期休暇中の家計を支える無料のパンの配布や、英国で初めて黒人女性のレストランがミシュランを獲得したことなどを紹介した。
日々飛び交う悲しいニュースや、不安になる情報、ネガティブな感情ばかりを生む議論に疲れたあなたに。世界では同じくらい良いこともたくさん起こっているという事実に少しのあいだ心を癒し、また明日から動き出そうと思える活力になれば幸いだ。
愛に溢れた世界のグッドニュース5選
01. 世界初、スコットランドの“お城”がB Corp認証を取得
組織のサステナビリティを示す方法として注目が高まる、B Corp認証。社会や公益、環境のための事業を実施している企業に発行される、国際的な民間認証制度だ。日本でも毎月のように新たな企業が同認証を獲得している。
一般的な企業が取得するイメージが強いB Corp認証組織に、新たな顔ぶれが登場した。スコットランドのカーロウリー城が、世界で初めて城として同認証を獲得したのだ。認証取得には10年もかかったという。城のオペレーションディレクターであるキース・テイラー氏は「環境とコミュニティへの還元は、カーロウリー城の活動の重要な要素であり続けてきましたが、この認証を取得したことは、私たちがさらに多くのことを実践する後押しになっています」
と、STVニュースに語った。
この城では、ホームレス状態にある人々に無料の食事を提供したり、電気自動車の充電スポットを設置したり、植樹を通じて未利用の土地を再生したりと、多様な取り組みをおこなってきたという。組織の形態を問わず、想いを同じくする仲間がB Corpの名の下に集まる動きは、少し先の未来に希望を感じさせる。
【参照サイト】Scottish Castle first in the world to be awarded ‘coveted’ B Corp certification
02. シャンゼリゼ通りが、今年最大のピクニック会場に
フランス・パリ旅行で外せない観光地の一つであろう、シャンゼリゼ通り。世界各地から多くの観光客が訪れる。しかし、ここは地元住民にとっても大切な場であり、観光地を地元の人々に戻して行こうとする動きがある。そこで設立されたのが、地元の文化的・経済的なステークホルダーが参加する「シャンゼリゼ通り委員会」だ。この委員会が、地域住民のために、あるイベントを企画した。
それが、歩行の日である5月26日に開催された「The biggest picnic of the year(今年最大のピクニック)」だ。当日は216メートルに及ぶギンガムチェックのテーブルクロスが地面に敷かれ、その広さはギネス記録に迫るという。食料の入ったバスケットも無料で配られたそうだ。
もし同じようなイベントが日本の観光地で企画されるとしたら、どんな場所が思いつくだろうか。「観光地」と呼ばれる場所でも、近隣にはその場所を「地元」として生活し、暮らしを営んでいる人がいることを忘れずにいたい。
【参照サイト】The biggest picnic of the year organized on May 26 on the Champs-Elysées in Paris
03. 世界7カ国が再生可能エネルギーほぼ100%の発電を達成
気候変動対策として長らく推進されてきた、再生可能エネルギーへの移行。近年はカーボンニュートラルや脱炭素もキーワードとして加わり、国をあげて取り組みを強化している。しかし残念ながら、2022年度における日本の再エネ電力比率は約21.7%と、未だ低い水準のままだ。
一方、すでにそのゴールに差し迫る国も現れている。アルバニア、ブータン、ネパール、パラグアイ、アイスランド、エチオピア、コンゴ民主共和国の7カ国は、99.7%以上の電力を再生可能エネルギーによって賄っているというのだ。地熱、水力、太陽光、風力が活用されている。これらの国々を筆頭に、ヨーロッパでも再エネの導入が進められている。
上記の7カ国のような事例が出てきた以上、再エネのみでの電力供給が不可能とは言い難いだろう。エネルギーの需要減少と、再エネの供給増加のバランスをいかに実現できるのか。一歩先を行く国々から学べることも多いはずだ。
【参照サイト】Seven countries now generate almost 100% of their electricity from renewable energy in ‘irreversible tipping point’ moment
【参照サイト】再生エネルギー、21.7%に増加 22年度の電源構成
04. スポーツを観戦すると、ウェルビーイングや健康が向上するとの研究結果
スポーツチームを応援している人は、どんな年齢であろうとも、溢れんばかりのエネルギーに満ちている印象がある。大きな声で声援を送り、時に笑い、時に泣く。歓喜に湧いて踊り出す日もあれば、ぐったりと疲れて帰る日もあるだろう。こんな感情の揺さぶられる時間は、心と身体の健康にも結びついているという。
日本の研究チームによると、スポーツを観戦すると、脳が刺激され身体的・精神的なウェルビーイングが向上することが明らかになった。特に、野球やサッカーのような大勢の観客と一緒に観るスタイルのスポーツの場合、共同体意識が高まることが分かったという。同チームは、被験者からの自己申告だけではなく神経画像技術を活用することで実験結果を導いたそうだ。
健康のためにジムでのトレーニングやウォーキングをする人は多い。これから、多世代にわたって「健康のためにみんなでサッカー観戦に行こう!」なんて誘いがあっても、素敵ではないだろうか。
【参照サイト】Watching Sports Boosts Well-being and Improves Your Health, According to ‘Ground-breaking’ Research
05. ハリウッドで開催されたコメディアンによる気候変動ネタのショー「Let’s Not Die!」
環境問題ってなんだか堅苦しい……。そう感じる人は少なくないだろう。科学的な根拠は重要である一方、多くの人にとっては論文での言い回しやニュース番組での表現の中には、お世辞にもとても分かりやすいとは言えないものもある。では、もっと広く気候変動について知ってもらうために、コメディアンが気候変動について語ったら、どうだろうか。
2024年4月29日、気候変動ネタだけを集めたコメディーショー「Let’s Not Die!(死なないようにしましょう!)」が米・ハリウッドで開催された。今回は、気候変動への対応はもう手遅れだと悲観視する「climate doom」をテーマに実施。スタンドアップコメディや音楽、スケッチコメディ、さらには気候科学者へのインタビューも行われたようだ。
コメディと気候変動を掛け合わせたアプローチは、アメリカだけの動きではなく世界各地で広がっている。「昨日のあのネタ見た?」と、気候変動対策が学校で子どもたちの話題になる日も来るかもしれない。もちろん、そんな話題は上がることもなく、環境問題が解決している日が来てほしいけれど。
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