2020年6月、シベリアでは38度を記録し(※1)、8月末にはカリフォルニアで600件以上の山火事が発生した。火災ではわずか7日間で東京の2倍にあたる面積が焼失(※2)するなど、異常気象ともいえる事態が世界各地で多発し、気候変動への取り組みをより加速させる必要性が高まっている。
そんな中、スコットランドのブルワリーであるBrewDog(ブリュー・ドッグ)が、スコットランドの南西部にある2050エーカーの牧草地と泥炭地を購入し、広大な森に変えるプロジェクトを発表した。
BrewDogはこれまでにも、気候変動への意識を高めるセゾンビール「Make Earth Great Again」の販売や、空き缶と引き換えに株式をわたすキャンペーン「Cans for Equity」など、ユニークな施策を行ってきた。今回の取り組みにはどのような意図があるのだろうか。
BrewDog is now Carbon Negative.
This means we take twice as much carbon out of the air as we emit.
Our carbon, is our problem. We are going to fix it ourselves with our own 2,000+ acre forest.Read more about the plan here; https://t.co/1sMQIEmiFd#BrewDogTomorrow pic.twitter.com/ky6WGREXh8
— BrewDog (@BrewDog) August 22, 2020
この取り組みで目指すのは、企業として「カーボンネガティブ(排出するCO2よりも、除去するCO2が多い状態)」になることだ。購入した土地は牧草地として使われていたため、今のところ木々は生えていない。そこでBrewDogは、まず数年かけて100万本以上の木を植え、1500エーカーを広葉低木樹の森に変えるという。さらに残りの550エーカーはCO2の隔離に効果的な泥炭地として復元する。
こうした一連の取り組みによって隔離されるCO2は、30万トンと予測され、サプライチェーンも含め、BrewDogの事業によって排出されるCO2の2倍に相当する。CO2の削減量などはすべて第三者によって検証され、結果は公開されるなど取り組みの透明性も確保されている。
また、植林の際は、生物多様性保全に配慮し、洪水の緩和もはかる。さらには持続可能性に配慮したキャンプ場を地元に開設し、地域の経済発展にも貢献していく計画だ。
BrewDogのCEOであるジェームズ・ワット氏は、FAST COMPANYの取材に対し、「私たちは差し迫った気候危機に直面しており、もはやカーボンニュートラル(CO2の排出量と吸収量とがプラスマイナスゼロの状態)では不十分だと思っています。だから、企業として、チームとして、地域の一因として、確実に環境にポジティブな影響があることを行いたいのです」と語っている(※3)。
カーボンニュートラルではもう気候変動の影響を緩和しきれない。そんな気迫が伝わってくるようなブルワリーの取り組み。ぜひ世界的なムーブメントになってほしいものだ。
※1 シベリアで38.0℃観測、北極圏史上もっとも高温か
※2 「東京の2倍の面積」が7日で焼失、カリフォルニアの記録的な山火事
※3 Why this Scottish brewery just bought a forest
【参照サイト】Make-Earth-Great-Again
Edited by Kimika Tonuma