「人類は、地球で暮らし続けることができるのか」という根源的な問いに、あなたならどう答えるだろうか。
気候変動、紛争、貧困、人口増加、環境汚染、資源の枯渇など、人類が数多くの課題に直面するなか、建築はいかに地球環境に向き合えばいいのか、考えている人たちがいる。
環境に優しい建築と聞くと、再生可能エネルギーの活用、屋上や壁面の緑化、大気や土壌の汚染防止、リサイクル材の活用といった取り組みを思い浮かべる人が多いかもしれないが、よりSF的な世界を想像してみるのもいいだろう。
ニューヨークを拠点に活動する、建築家兼アーティストのブレス・イー氏は、大気中からCO2を回収する、宙に浮かぶ家「Carbon Capture Refuge X(CCRX)」を提案している。地球の磁力を使って家を浮かせるという、斬新なアイデアだ。
同氏が想定するのは、紛争や自然災害で難民が急増した世界だ。人々は、その苦しみと絶望から逃れるため、地上だけでなく空中で生きようと考え始める。
CCRXの要となる設備は、直接空気回収(DAC)に利用するファンと、ソーラーパネルだ。ファンは取り込んだ炭素を、電気エネルギーに変換。エネルギーは、CCRXに張り巡らされたネオン管を通り、床、壁、屋根に電気を供給する。ネオン管は、CCRXの開閉をつかさどる筋肉のような役割も果たすという。
他のCCRXに荷物を送るときは、ドローンが活躍する。また、CCRXは、フローティングファーム(浮かぶ牧場)やフローティングフォレスト(浮かぶ森)と合体し、徐々にエコシステムを回復させるというアイデアだ。
CCRXは、デザイン系ウェブメディアの「Dezeen」が2021年に開催した、「Redesign the World(世界のリデザイン)」というコンペで3位を獲得した。同コンペは、人類が地球で暮らし続けることができるように、未来をリデザインするアイデアを募集した。
CCRXはコンペで、「現実離れしているように見えるが、実は炭素回収など実現可能性のある技術を紹介している」との評価を得た。
私たちはいつか、空中で暮らすようになるのかもしれない。奇想天外な発想こそが、人類の可能性を広げるのではないだろうか。
【参照サイト】Bless Yee
【Instagram】@ bless_yee_artwork