【2023年グッドアイデア】「長く使う工夫」と「楽しさ」が鍵?世界のファッション事例7選

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新型コロナウイルス感染症による世界的な混乱を経て、「アフターコロナ」と呼ばれる時代に突入した2023年。ファッション業界ではより「デジタル化」や、環境に配慮した「新しい素材の開発」が進んだ。終わりの見えない物価高の影響で、消費者の節約思考が高まり、フリーマーケットアプリを運営する「株式会社メルカリ」が創業以来の最高業績を記録する(※)など、「今あるものをより長く使う」というこれまでの「大量生産・大量消費」からの転換が感じられた年でもあった。

本記事では、日頃から世界のソーシャルグッドな事例をウォッチするIDEAS FOR GOODが2023年に注目した、ソーシャルグッドな「ファッション」に関するユニークなアイデアをまとめてご紹介していく。

世界のソーシャルグッドなファッション事例7選

01. 服の原料から環境問題に取り組む時代へ

CO2を回収してファッションに。次世代の繊維スタートアップ「Rubi」

アメリカ、カリフォルニアにあるスタートアップ「Rubi(ルビ)」は、CO2を回収し、カーボンネガティブなセルロース繊維をつくる技術を発表した。

その工程は、製造工場などから排出されるCO2を集め、酵素を用いた生化学的プロセスを通じて、CO2をセルロースに変換。そのセルロースを用いてリヨセル糸を作り出すというものだ。つまりRubiの技術を使えば、森林伐採や炭素、水、土地を大量に消費する製造方法に頼らずに、高品質なリヨセルを製造することが可能なのだ。

ルビは、コペンハーゲンを拠点とするラグジュアリー・ファッションブランド「Ganni(ガニー)」と提携し、この新しい糸のサンプルを発表した。今後、生地と衣服の試作を進め、Rubiが開発したCO2由来の糸と、従来のセルロースをブレンドした生地を使用し、Ganniブランドの服を製造予定だ。

  • 国名:アメリカ
  • 団体(企業)名:Rubi
02. お気に入りをより長く楽しめる!子どもと一緒に「成長するシューズ」

子どもの成長にあわせて大きくなる。インド生まれの「咲く」シューズ

インド・プネ出身のサテャジット・ミタル氏と、彼の幼なじみクルティカ・ライ氏による靴ブランド「Aretto」は、子どもの足の発育に合わせて「成長するシューズ」を展開している。

Arettoの靴は、足の形にそって360度拡張する伸縮性に優れた生地を使用。さらに、足の形に合わせてソールに切り込まれた溝が花が咲くように開き、足の成長に合わせて靴の大きさが変わるようになっている。靴のサイズは3段階(18㎜分)拡張できる。

過度な買い替えによるごみを軽減するだけでなく、商品の製作過程においても、廃棄物を最小限にし、再利用素材を使用することで環境への負荷を減らしている。

  • 国名:インド
  • 団体(企業)名:Aretto
03. 環境への配慮と機能性を両立したアシックスの「CO₂排出量世界最少スニーカー」

アシックスが「CO₂排出量世界最少スニーカー」発売。その開発の裏側を探る

世界各国のクリエイターとのコラボレーションなど、海外でも注目されている日本のスポーツブランド「asics(アシックス)」が、CO₂排出量世界最少スニーカーとして「GEL-LYTE III CM 1.95(ゲルライトスリーシーエム1.95)」の販売を開始した。

このスニーカーは、サプライチェーンにおける「材料調達」と「製造」で、従来の製品と比べてCO2排出量を80パーセント削減した。ミッドソールと中敷には、サトウキビ由来のバイオポリマーを融合させたカーボンネガティブフォームを採用し、委託先の工場では太陽光パネルを取り付け、製造に必要な電力を再生可能エネルギーで賄ったり、バイオ燃料を使った輸送で商品を出荷している。

アシックスは、2050年までにCO2排出量を実質ゼロにすることを掲げており、このスニーカーを皮切りに文字通り「一歩ずつ」取り組みを進めていくことだろう。

  • 国名:日本
  • 団体(企業)名:asics
04.ファッションを通して先住民とのギャップを埋め、つながる

オーストラリア発、先住民との「寿命格差」を埋めるファッションブランド

メルボルン発のファッションブランド「Clothing The Gaps(クロージング・ザ・ギャップス)」は、オーストラリアの先住民と非先住民の生活水準の差による平均寿命のギャップを埋めるために設立されたブランドだ。

クロージング・ザ・ギャップスでは、先住民のアイディンティティを印象付けるメッセージや、オーストラリアの先住民の伝統的な国旗を象徴したカラーを採用した商品を展開。先住民の健康増進に取り組む活動に資金を提供し、サポートをしている。

05.衣服のリサイクルも地域活性化も。フィンランドの地方都市の循環経済モデルとは

フィンランド、地域で使えるギフト券と交換で衣服リサイクル率を5倍へ

フィンランドの地方都市、ラフティ。人口12万人ほどのこの小さな都市が、市内で出る洋服などの繊維製品のごみリサイクル率を5倍にした。

2023年6月に試験的に実施した、行政と廃棄物管理を行う団体の共同プロジェクト「The Textile Deposit pilot scheme(テキスタイル・デポジット試験制度)」は、街中に6ヶ所の回収拠点を設け、地域の人々が古くなった衣料品をボックスに入れると、地元のカフェや、プールで使える引換券がもらえる仕組みだ。

回収された繊維製品は、フィンランド最大の繊維加工施設で糸などの繊維に再び加工されるほか、断熱材や防音パネルなどの新製品に使用される。手放した洋服が国内でリサイクルされ、地域活性にもつながるこのマテリアルリサイクルの仕組みは、今後も循環経済のモデルとなるだろう。

06. アフリカ、ウガンダから発信されるサステナブルファッションイベント

先進国の激安古着が流れ着くウガンダの、サステナブル・ファッションイベント訪問レポ

毎年、アフリカ大陸の東に位置する国ウガンダで開催される、持続可能なファッションイベント「Kwetu Kwanza」。今年のイベントでは、草木染めや、ウガンダの伝統的なシンボルを使用したデザインの印刷を学べるワークショップ、ウガンダで躍進する10人のデザイナーによる「持続可能なファッション」をテーマとした作品の展示などがあり、約300名が参加した。

近年、先進国で使われなくなった大量のファストファッションがアフリカの国々に安価に流入し、人々のファッションに変化が起きている。若者を中心に「従来のアフリカファッション離れ」が進み、大量購入・大量廃棄へとつながっているのだ。

この現状を目の当たりにしている彼らから生み出される「Wearable Art(着られるアート)」には、「自分たちの伝統と誇りを呼び覚まそう」という力を感じた。

  • 国名:ウガンダ
  • イベント名:Kwetu Kwanza 2023
07. ドイツのサステナブルファッションまとめ

知られてないけど実はアツい、ドイツのサステナブルなファッションブランド

2023年4月、東京都内で日独のファッション業界のノウハウの共有や、経済交流の促進を目的とした「日独ファッションシンポジウム2023」が開催された。会場にはサステナブルファッションの分野で活躍するドイツの企業によるイノベーティブな素材や製品が集結した。

Bal Designs(バルデザイン)」は素材の調達から縫製までをドイツ国内で行う使用済みのバスケットボールを使ったアップサイクル商品を展開し、120年以上の歴史を持つるスポーツブランド「Erima (エリマ)」は全ての合成繊維を再生品へと置き換えを進めている。

製造業大国で環境保護先進国とも言われるドイツだからこそ生み出されるサステナブルな商品は、企業はもちろん、消費者にとっても非常に興味深い。海外の素晴らしい取り組みを知ることは日本に住む私たちにとって、さらなる問題意識や新しい気づきのきっかけにもなるだろう。

  • 国名:ドイツ
  • イベント名:日独ファッションシンポジウム2023

まとめ

現在ファッション産業が抱える課題は山積みだ。目を背けたくなるような現実に途方に暮れてしまいそうになることもある。この1年、目まぐるしく変化する日常の中で環境問題に対する考えや、人生における価値観が変化した人も多いだろう。しかしながら、消費者も企業も持続可能な社会、そして地球のために何ができるかをあらためて考えるきっかけにもなった年だったとも言える。

課題があるからこそ生まれるアイデアの可能性は無限大だ。「ファッションは楽しい」という気持ちを忘れず、今後もますます多様化が予想されるファッションの動向に注目したい。

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