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情報格差(デジタルデバイド)

情報格差(デジタルデバイド)

情報格差とは(What is Digital divide?)

情報格差(デジタルデバイド、またはデジタルディバイド)とは、インターネットなどの情報通信技術(ICT)や、スマートフォンなどのデジタル機器を持つ人と、持たない人のあいだにできる格差のことです。「デジタルな情報にアクセスできない」ことは、さまざまな場面でデジタル化が進んだ現代においては教育的、経済的、そして社会的な格差を生む一因にもなっています。

コロナ禍を経て、パンデミックとインフォメーションをかけあわせた「インフォデミック(誤った医療情報による混乱を意味する)」という言葉も生まれるなか、この問題はますます深刻化するばかりです。

不十分な教育、インフラの不整備、貧困などの理由で情報通信技術の利用が困難な人は「情報弱者」と呼ばれ、就職から普段の買い物まで、さまざまな場面における情報収集で不利であるとされます。また、情報格差は単にテクノロジーに「アクセスできるかできないか」だけではなく、アクセスしているテクノロジーや、情報の質の低さに関しても言われています。

ですので情報格差は、世界的にインターネット使用率の低いアフリカの子供がPCを持っていなくて困る、というようなだとは一概に言えません。先進国でも十分にありえることなのです。下の表を見ると、情報格差はさまざまな特徴を組み合わせたうえで定義づけされることがわかります。

デジタルアクセスレベル

  • インターネットへのアクセス
  • 実際の使用頻度
  • 効果的なインターネット利用(限られた機能だけ使っていないか、など)

ユーザーの特徴

  • 年齢
  • 収入
  • 地域
  • 教育

使う技術の種類

  • 固定電話
  • 携帯電話(ガラケー)
  • デジタルテレビ
  • スマートフォン
  • パソコン

現在、そんな情報格差による不利な状況を変えるため、先進国を中心に世界中で子供のころからICT教育や情報リテラシー教育、プログラミング教育などを取り入れる動きが高まっています。

日本では、住民登録や引っ越しなど行政関連の手続きを原則デジタル申請に統一する「デジタルファースト法」が2019年5月に可決されました。これによる情報格差はどのように解消されていくのか。これからの動きに注目です。

数字で見る情報格差(Facts & Figures)

情報格差の現状に関する数字と事実をまとめています。

  • 世界の人口72億人のうち、インターネットを使う人は40%。使わない人が60%(2014/ITU
  • インターネットを使う人の比率は、先進国では78%、発展途上国では32%(2014/ITU
  • インターネットを使う人の地域別比率は、ヨーロッパが一番多い75%。次にアメリカ対立が65%、独立国家共同体が56%、中東諸国が41%、アジア太平洋が32%、アフリカが19%(2014/ITU
  • ブロードバンド ネットワーク契約数について、世界の人口72億人のうち、先進国の固定ブロードバンド契約率は27%、発展途上国では6%。モバイルブロードバンド契約率は先進国が84%、発展途上国では21%(2014/ITU
  • 日本の個人によるインターネット利用率は80.9%。そのうち、13歳~59歳までは各階層で90%を超える。しかし65歳からは70%を下回る(2017/総務省
  • 日本の世帯年収別のインターネット利用率は、400万円以上の各階層では80%を超える。しかし200~400万円では74.1%、200万円未満では54.2%である(2017/総務省

世界の現状に関するデータは2014年のものですが、まだまだインターネットを日常的に使えない状況にある人が多く、アフリカなど経済格差の激しい地域では、平均して20%以下であることがわかります。

ただ、最近では経済的な発展途上国でも電子決済や、アプリによるタクシー配車などが盛んで、急速に一般市民にインターネットが普及しているという現実もあります。

情報格差が生じる原因(Causes)

情報格差が生まれる原因としては、主に下記が挙げられます。

  • 教育、学歴の差
  • 収入の差
  • 自身と周囲の人間の高齢化
  • 身体的、精神的な障がい
  • ITインフラの不足
  • 住む地域のインターネット需要の差

家庭内、または学校におけるICT教育の不足は情報弱者を生みます。生まれ育った環境によっては、貧困でインターネット利用どころではないという場合も。身近な環境でITインフラが無く、周りも使うことができないと、次のIT人材が育ちにくいという特徴もあります。

地方においては、過疎化や高齢化が進んでいるところも多くあり、ブロードバンド設備に投資するメリットが薄いことが、情報格差を生む理由となっています。また、さまざまなテクノロジーの普及が都市部では進んでいたとしても、地方の特に高齢者はそれを使う人が若年層に比べて少ないという理由から、地方は後回しにされ、さらなる情報格差を生みます。

便利なはずのITが?格差を助長する「フィルターバブル」

フィルターバブルとは、過去のユーザー情報をもとに、各人に最適化されたインターネットコンテンツが表示され、似た情報や視点に囲まれてしまう状態のこと。インターネットには、アルゴリズムによりユーザーの興味関心や検索傾向を分析し、コンテンツを選り分ける「フィルタリング」機能、そして、各ユーザーが見たいだろうと思われる最適化されたコンテンツを提供する「パーソナライゼーション」機能があります。

これにより、個人が似たような情報に囲まれ、異なる意見が目に入らなくなってしまっているのです。この状態を、一人ひとりが「情報の泡」に包まれていると表現したのがフィルターバブルの概念です。これも、情報格差の要因の一つとなっています。

情報格差はなぜ問題なのか?(Impacts)

情報格差は、なぜ問題なのでしょうか。主な理由としては下記が挙げられます。

  • 教育的、経済的、社会的な格差の広がり
  • 緊急時の対応遅れによる危険性
  • ITリテラシー不足による犯罪の危険性
  • 高齢者の孤立
  • 国際的な考えや競争に対応できない

災害やテロなどの緊急時では、自分で状況を調べたり、海外であれば言葉をスマートフォンで翻訳したりする能力がなかったりすることによって状況を把握できず、大きな被害を受けてしまうことがありえます。また、ITリテラシーの低さによって個人情報をインターネットにアップしてしまうと、ストーカーなどの犯罪が起こりやすくなります。

情報弱者はインターネットへのアクセスが限られているため(または知らなくて使えないため)、多様な知識や考え方に触れる機会も自然と減ってしまい、教育や経済などの分野においても「弱者」になってしまうことがあります。そして、その「弱者」の立場の人が育てた次の世代も、生育環境から「弱者」になりやすいという悪循環が起こるため問題なのです。

青森の高校生が立ち上げた学生団体LINDEALは、設立のきっかけについてやはり情報格差があったと語っている

LINDEAL設立のきっかけも、2018年に行われた「高校生のための日本の次世代リーダー養成塾」に参加した同団体の初代代表の高校生らが、都市と地方の格差を感じたことだったという。

全国の学生たちが集まってディスカッションをする場で、東京や大阪出身の学生たちが学校の勉強以外にボランティア活動や模擬国連への参加、海外経験をしているなか、青森の高校生たちは「同い年の子がそんな活動をしていることすら知らなかった」ことに気が付いた。

模擬国連などの場では参加者の多様なアイデアや事業内容などが飛び交っており、インターネットでは得られない能動的な学び・体験ができる。また、そこで出会った人との「つながり」が生まれることも魅力だ。イベントに参加できないのなら、後で当日の資料を読めば良い、という話ではなく、その場に参加できる人とできない人の間には、確かな「情報格差」「体験格差」がうまれてしまう。

しかし、こうしたワークショップなどの課外活動の多くは大都市で開催されるため、都市に住む高校生と地方に住む高校生の間に課外活動における「機会格差」があるのは確かだ。

課外活動で得た情報は、その後の自己形成の材料や物事に対する見方の変化、視野拡大、社会課題への意識向上、モチベーションアップなどにつながる。それらを得ている都市の高校生と地方の高校生のあいだには新たに、「意識格差」がうまれることとなる。

情報格差、体験格差、機械格差、意識格差……

「これらの格差をゼロにすることで、私たちは都市部の高校生と『同じスタートライン』に立つことができる。」 LINDEALのウェブサイトにはこう書かれている。

自分の信じたいストーリーにのめり込む「エコーチェンバー」

エコーチェンバー現象(エコーチャンバー現象、Echo chamber)とは、自分と同じ意見があらゆる方向から返ってくる「反響室」のような狭いコミュニティで、同じような意見を見聞きし続けることによって、自分の意見が増幅・強化されることを指します。ツイッターなどのSNSや、インターネット掲示板など「同じ趣味・思想の人とつながることができる」場で起こりやすい現象です。サイバーカスケードとも呼ばれます。

自分が心地よいと思うコミュニティにいること自体は、悪いことではありません。しかし信じたい情報を信じ、自分の意見を「正しい」と強固に信じこむことは、自分とは異なる考え方を排除することにもつながっていきます。

エコーチェンバーの例として、こんなものがあります。

大のイグアナ好きがいたとする。普段の生活圏内では彼の趣味に賛同してくれる人がいなくても、インターネットで検索すれば世界中の同志(オタク仲間)といとも簡単に出会える。自分はおかしいのだろうかと悩む必要もなく、自分の趣味について堂々と語れる。これがインターネットの良さだ。

だが、熱を帯びたコミュニティが少し道を外し、例えば「イグアナの素晴らしさを解しようとしない世間」への反発心を溜めだすと、話が過激になる。傍から見たらフェイクニュースだったり、倫理的に考えておかしいことだったりしても、本人たちは「正しい」と思ったままだ。

そもそもインターネットは、一生をかけても到底すべてを把握できないほど多様な情報、意見、感想が転がっています。このように集団極性化によって異なる意見を排除し始めると、断絶や不和を生むことにつながるでしょう。

情報格差に対して、私たちができること

これ以上情報格差を広げないために、どうしたらいいのか。さまざまな企業がエコーチェンバーによるフェイクニュースの拡散や、断絶の防止の対策に乗り出していますが、ここでは個人でできることとを、少々極端な例も含めていくつか挙げてみます。

フィルターバブル対策

  • ブラウザ上で履歴を残さないように閲覧(Chromeでいうシークレットモード)
  • Googleアカウントからログアウト
  • 広告のカスタマイズをオフにする

エコーチェンバー対策

  • 集団の中で発信される意見を見たときに「自分たちが多数派だ」と決して勘違いしない
  • 定期的に、自分もエコーチェンバー現象にはまっていないか?と客観視する
  • 安易な情報に飛びつかず、一次情報を探しにいく
  • 「データ」や「事実」を確認することはもちろん、その因果関係を読み間違えないようにする(例:ゲームをする人と性犯罪をする人が同時期に増えた。だからゲームをする人は性犯罪者だ)
  • インターネットには自分と違う意見の人がごまんといることを認識する

また、WEB上には、自分がどのくらいエコーチェンバーの中に入ってしまっているのかを客観的に評価してくれるサービスもあります(▷エコーチェンバー評価システムβ版)。診断結果だけがすべてではありませんが、こうしたツールを使うことは「自分の認知は偏っているかもしれない」と気づくきっかけにはなるはずです。

情報格差の是正に取り組む国際団体(Organization)

情報格差の是正に取り組む国際的な団体としては下記が挙げられます。

情報格差を解決するアイデアたち(Ideas for Good)

情報格差に関連する問題を解決するために、できることは何でしょうか?

IDEAS FOR GOODでは、最先端のテクノロジーやユニークなアイデアで情報格差に関連する問題解決に取り組む企業やプロジェクトを紹介しています。

【参照サイト】The Global Digital Divide

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