「ゼロ・ウェイスト」という考え方をご存知だろうか?
これは、出てきた廃棄物をどう処理するか、という廃棄物ありきの考え方ではなく、そもそも焼却・埋め立て処理がされるようなゴミを出さずに生活するという考え方である。2003年に日本初のゼロ・ウェイスト宣言をした徳島県の上勝町を筆頭に、熊本県の水俣市や福岡県の大木町など、日本各所でもゼロ・ウェイストの動きが生まれている。
先日、日本から南方に約9,300kmにある、ニュージーランド最大の都市オークランドが、ゴミを一切出さないゼロ・ウェイストな街を目指すと宣言した。オークランドの環境・地域委員会が、2018年度廃棄物管理・最小化計画(The Auckland Waste Management and Minimisation Plan 2018)を採択したのだ。
この計画では、まず始めに家庭で出た食料廃棄物を肥料として使用することに力を入れるという。これから数年かけて、オークランド全域の家庭に、肥料にできる生ゴミ専用のゴミ箱を配布していくとのことだ。
環境・地域委員会の委員長であるPenny Hulse氏は「現在、捨てられているものの約40%が有機物、言い換えれば肥料に変えることのできる食料廃棄物です。」と述べている。
今回発表された計画では、以下の9つの優先事項が策定されている。
- 廃棄物の徴収税を増やすよう中央政府に提言
- モノの管理・受託者責任を提言
- 3つの主な商業廃棄物(建設・解体の際に出るごみ、有機ごみ、プラスチックごみ)に対処し、行政サービス提供者ではなく商業廃棄物に対処するファシリテーターおよびパートナーとしての評議員の役割を強調
- 資源のリカバリーネットワークの構築を継続
- 一貫したゴミ収集およびリサイクルサービスへの移行を継続
- 国内での食料廃棄物の収集と配送
- 廃棄物の対処を市営から民営化
- ゼロ・ウェイストな都市の実現のためにパートナーシップを組む
- ゴミの不法投棄、海洋廃棄物に取り組む
これらの廃棄物管理・最小化計画の草案は、議会の10年分の予算と共に、6,759件もの提案を受けて公開協議に提出された。また、聴聞会では約50件の口頭での提案を受け、5日間にわたって12の地元委員会からフィードバックを受けたという。
食料廃棄の他には、不法投棄や海洋プラスチック、危険廃棄物なども、焦点を当てなければならない問題だと捉えている。これからの6年間で、徐々に計画を形にしていくということだ。
以前IDEAS FOR GOODで紹介したように、ニュージーランドでは空き瓶をリサイクルして廃棄物削減と砂浜保全を同時に行うブルワリーや環境問題を考えるニュージーランド航空の機内ビデオなど、会社規模で環境問題をどうにかしようとする動きが多く行われてきた。
しかし、都市規模での動きというのはなかなか珍しい。いままでの会社規模、そしてそれらに賛同する個人規模での動きがあったからこそ、今回オークランドという都市規模でのゼロ・ウェイスト計画につながったのかもしれない。
さまざまな環境問題に対して、個人では何も変えられないと思うこともあり、諦めてしまう人も多いだろう。しかしながら、個人の動きがあってこそ会社規模、そして都市規模などの大きな動きにつながるということを忘れてはいけない。ゴミ問題は、私たち全員が意識すべき問題なのだ。
【参考サイト】Waste plan a step closer to a zero-waste Auckland
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(※画像提供:Shutterstock.com)