【デンマーク特集#0】よい人生ってなんだろう?北欧の小さな国で問い直す、私のしあわせ、あなたのしあわせ

Browse By

北欧の国デンマークは、九州と同じほどの土地に約580万人の人々が暮らす小さな国です。クリーンエネルギーへの移行に力を入れるなど、環境問題への積極的な対策を講じる「環境先進国」として知られています。中でも、過去の記事「2017年の消費電力の43%を風力発電でまかなった国、デンマーク」でも取り上げたように風力発電がさかんです。

福祉国家としても有名なデンマークは、2013年に「世界幸福度ランキング」が発表されるようになってから、上位3位以内にランクインし続けています。国連が発表した2019年度「幸福度が高い国ランキング」では、フィンランドに次ぐ2位を獲得。近年はヒュッゲ(hygge)の概念をテーマにした本が日本語でも出版されていることもあり、デンマークといえば「幸せの国」というイメージが強まっています。

ですが「幸せの国」というときの「幸せ」とは、そもそも何を指しているのでしょう?

ニューハウンの街並み

ニューハウンの街並み

デンマークの幸せだと思えるポイントを思い浮かべてみてください。

かわいらしい街並み。みんなで暖炉を囲む、あたたかな時間。福祉が充実していること。教育費が無料であること。……たくさん浮かんできます。

ですが、デンマークをつくるものはそれだけではありません。日照時間の短い、暗くて長い冬。税金や物価が高いこと。店が早く閉まるために娯楽が少ないこと。……これらも、同じようにデンマークを形づくる要素です。

改めてふりかえってみると「幸せな国である理由」として私たちが挙げているものは、デンマークのひとつの側面でしかないということに気づきます。

霧の日のデンマーク

Image via shutterstock

デンマークは本当に幸せな国なのか?デンマークにおける「幸せ」とは何なのか?そしてデンマークの何がそこまで人を惹きつけるのか?編集部はその答えを探そうと、実際にデンマーク国内の2つの地域(首都コペンハーゲン、ロラン島)を訪ねてきました。

ここからは、特集を始めるにあたって編集部が見つけた「デンマークの今をひも解く切り口」となるキーワードを紹介していきます。

1. 電力自給率800%の小さな島、ロラン島

コペンハーゲンから南西150キロに位置する小さな島です。面積は約890㎢、人口は約6万人。島といっても橋が渡されているので、コペンハーゲンからロラン島まで電車で行くことができます。

ロラン島といえば、有名なのは風力発電。発電に適した風が吹いており、多くの風車が設置されています。島の電力自給率はなんと800%まで達しています。

ロラン島の風車

ロラン島の風車

2.フォルケホイスコーレ

フォルケホイスコーレとは、17歳以上であれば誰でも入学可能な、民主主義的思考を育てる全寮制学校のことです。自分の興味を掘り下げるための場所であり、試験や成績評価は一切ありません。高校を卒業したての10代から社会人、高齢者まで、さまざまな世代が生徒として所属。それぞれが納得するまで自身の知的好奇心を追求しています。現在は国内に70校前後のフォルケホイスコーレが存在しているとのこと。
 
今回編集部のメンバーは、ロラン島のホテルで出張開催された食を通じてフォルケホイスコーレの文化を5日間で体験するプログラム「New Nordic Cuisine」に参加してきました。

ロラン島内に新しく開設予定のフォルケホイスコーレの寮の一室

ロラン島内に新しく開設予定のフォルケホイスコーレの寮の一室

3. ニュー・ノルディック・キュイジーヌ(新北欧料理)

気候が厳しい北欧圏では、食材が乏しいために輸入食品に頼ることが多かったといいます。サーモンやニシンなどを使った質素な食事が中心だったこれまでの北欧料理には、美食というイメージはあまりなかったそうです。

そんな中、noma(ノーマ)というレストランが北欧料理の「新しいかたち」を提案しました。それが「ニュー・ノルディック・キュイジーヌ(新北欧料理)」の始まりです。ニュー・ノルディック・キュイジーヌでは「地産地消」の考え方をベースにし、その土地の旬のものを、伝統的な方法と現代的な方法を織り交ぜて調理します。食材の背景を知り、素材を活かすのも重要な要素です。見た目にも美しい料理をひとつひとつ味わいながらいただきます。

ニュー・ノルディック・キュイジーヌの名を世界に知らしめたnomaは、「世界のレストラン50」で2010年から3年連続一位を獲得。一流レストランとして世界中から注目を集めています。

今回参加したフォルケホイスコーレ・プログラムでは、noma創業者のクラウス・マイヤー氏が1日講師を務め、クラウス氏と一緒に料理をしながら新北欧料理について学ぶ機会もありました。

カリフラワーステーキのプレート

カリフラワーステーキのプレート。ステーキはもちろんその下ソースや飾りつけもカリフラワー

 

4. サステナブルな街づくり

デンマークの首都コペンハーゲンは、サステナブルな都市づくりへの取り組みでも注目を集めています。そのうちの一つが自転車に関するものです。コペンハーゲンには自転車専用レーンや専用信号が存在しており、いつも自転車に乗る人で溢れています。街中にはシェアサイクル・ステーションがいくつもあり、誰でも気軽に自転車を借りられます。電車に「自転車のまま乗り込める車両」が設置されるなど、サイクルユーザーにやさしい仕組みが整っています。

自転車専用ロード

自転車専用ロード

また、コペンハーゲンの公式観光協会は、街全体を巻き込んでサステナブルツーリズムを推進する「Tourism for Good」というプロジェクトを推進しています。例えば移動手段なら「タクシーしか選べない」のではなく「シェアバイクという選択もできる」という状態をつくるというように、旅の最初から最後まで観光客に「サステナブルな選択肢」を提示できるよう町全体で協力していくといいます。

地域経済へのメリットがあるツーリズムですが「移動時に排出されるCO2が気候変動の原因になる」「押し寄せた人たちが地域の資源を大量に浪費する」など懸念点があるのも事実。コペンハーゲンは「都市でもサステナブルな暮らしができる」「経済的利益と、環境、社会へのメリットは両立できる」ことを世界に示し、ツーリズムを「どうしても問題をうんでしまうもの」から「ソリューション」へと変えていきたいとのことです。

サステナブルツーリズム

Image via shutterstock

特集記事では、ほかにも様々な切り口からコペンハーゲンのサステナブルな取り組みを紹介していきます。

5.サステナブルな暮らし

コペンハーゲンでは「環境に良いものでないと買わない/使わない」という消費者が増えてきているといいます。ある飲食店のオーナーは「コペンハーゲン市民にはプラスチックストローを使いたくないという人が多いので、うちの店では紙製のものを使っている」と話してくれました。

また、「オーガニック」もデンマークのコンシューマーライフを語るうえでは欠かせないキーワードです。デンマークでは、生産過程におけるサステナビリティや環境保護、アニマルウェルフェア(動物の福祉)の観点からオーガニックな生産や商品が推奨されてきました。デンマークで、世界に先駆けて「オーガニック農法を促進する法律」が制定されたのは、1987年。今から20年以上も前に「政府によるオーガニック認証制度」が確立されていたといいます。国民一人あたりのオーガニック生産物購入量が世界トップクラスのデンマークでは、国内の一般的なスーパーマーケットでもオーガニック認証ラベルが貼られた商品を目にすることができます。
 
これから始まる特集では、デンマークの「サステナブルな暮らしと街づくり」をヒントにしながら「幸せの意味」について考えていきます。

【参照サイト】世界幸福度ランキング2019年度版
【参照サイト】2017 er nyt rekordår Mere bæredygtig strøm
【参照サイト】NOMA
【参照サイト】STATISTICS DENMARK
【参照サイト】デザインミュージアム
【参照サイト】Tourism for Good
【参照サイト】デンマークのオーガニックフード
【関連ページ】フォルケホイスコーレとは・意味
【関連ページ】一歩先を行く自転車先進国のデンマーク、自転車渋滞を防ぐための電子標識を導入