未来の私たちの生活をもっとも大きく可能性を秘めたテクノロジー。その一つがAI(人工知能)だ。2010年代にはディープラーニング(機械学習)に関するブレイクスルーが起こったことで、AIが社会のインフラに実装される可能性は大きく広がった。今では、世界中の国々が我先にとAIへの投資や教育を行っており、AIの倫理をめぐる議論も活発化している。
IDEAS FOR GOODでは以前に、中国が急ピッチで進める高校生向けのAI教育をご紹介したが、北欧のフィンランドでは、AIについて誰でも無料で学べるオンラインコース「Elements of AI」がオープンした。フィンランド語やスウェーデン語に加えて英語やドイツ語に対応しており、日本からも受講可能だ。
サービスの開発は、ヘルシンキ大学とフィンランドのIT企業であるリアクター社が行った。ネット環境さえあれば誰もが教育を受けられるようにすることで、EU市民にAIの専門知識を身につけてもらう、というEU議長国であるフィンランド(2019年下半期時点)からの贈り物だ。同国はこれまでにもフィンランド人口の1%(=5万5000人)にAIに関する基礎教育を無料提供し、徐々に対象者を増やすことで人々のデジタルリテラシーを高める取り組みをしていた。
コースを受講すると、「AIの本当の意味」「AIがどのようにつくられるか」「AIが今後どのように発展するか」などが分かりやすく学べるようになっている。理論と実践を組み合わせた合計30時間のカリキュラムだ。成績に差は出ないが、修了するには課題の90%を履修し、50%で合格点を取る必要がある。
基礎編であるパート1では、複雑な数学やプログラミングは扱わずに、AIで何ができて、何ができないのか、そして私たちにどのように影響を与えるかを学ぶ。応用編であるパート2では、AIの構築やアルゴリズムについても詳しく扱っている。
急速に変わりゆく社会に適応し生き抜いていくには、一人の人間も生物の種と同様に、進化を遂げていく必要がある。人口が僅かに550万人のフィンランドは、生き残りをかけて、これまでもさまざまな創意工夫を行ってきた。特にデジタル教育分野には力を入れており、今回の「Elements of AI」もその一環だ。AIについて詳しく学んでみたいという方はぜひ一度利用してみてはいかがだろうか。
【参照サイト】Elements of AI
(画像提供:Julia Kivelä & Visit Finland)