コペンハーゲン市に「公共」の果樹。街全体を都市果樹園に

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もしもあなたの住んでいる街から、自由に食料を採集することを勧められたら驚くだろうか。街中に植えてある木から、自由に食べ物を取っていいと言われたら、身の回りの自然を見渡すきっかけになりそうだ。

デンマークの首都であるコペンハーゲン市は2019年、誰もが無料で果物を取って食べることができる「公共の果樹」を市内に植えることを決めた。公園や教会の中庭などに木を植えて街全体を都市果樹園にすることで、人々が果物の味を楽しみつつ地域とのつながりを強めることを目指す。植物の維持費を抑えるため、りんご、ブラックベリー、エルダーベリーなど、丈夫に育つ地元の果物を植えることを検討しているという。

デンマークの中世から続く法律では、国民が公有地で食べ物を収穫することが認められており、近年では地元食材を再評価する新北欧料理(ニュー・ノルディック・キュイジーヌ)も有名だ。新北欧料理を提供するコペンハーゲンのレストラン「noma」のシェフを務めるレネ・レゼッピ氏も「味わうことは、自然を体感する一番の方法だ」と、伝えている。

同市の決定に関して、果物が自転車道に落ちて滑る危険性があるという意見や、蜂が集まって困ると懸念する声も出ているという。しかし、市議会議員のアストリッド・アラー氏は「人通りの多い道ではなく公園に植えるなど、適切な空間づくりをすれば問題はない」とし、蜂については「それが自然なのだから、受け入れるべき」と、回答している。同氏は「生物多様性を守るためには、そのぶん快適性を犠牲にすることもあるだろう」と話す。

nomaのようなレストランには、その地域ならではの食文化を味わいたい旅行者が海外から多く訪れるというが、公共の果樹を植えるという今回の取り組みは、地元の人たちに、より楽しんでもらいたいという想いが読み取れる。旅行者にいかにお金を落としてもらうかを考える「観光」の視点ではなく、そこで暮らす人の日常を豊かにする「生活」の視点から生まれたアイデアではないだろうか。

カナダの首都オタワでは地元のフードバンクに協力するために果樹を植えたり、オーストラリアのアデレードではホームレスの人を助けるため同様の取り組みを検討していたりと、このアイデアは様々な目的で今後も広がりそうだ。

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【参照サイト】 Copenhagen Wants You to Forage on Its City Streets