【欧州CE特集#28】真の「修理する権利」を。欧州委員会が新たな循環型経済行動計画を公表

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欧州委員会は2020年3月11日、新たな「循環型経済行動計画(Circular Economy Action Plan)」を採択した。新行動計画では製品とデザインに重点を置き、消費者の「Right to Repair(修理する権利)」を強化することで、EU域内のサーキュラーエコノミーへの移行を加速させるのが狙いだ。

EUは先立って2019年12月11日、「2050年までに温室効果ガス実質ゼロ」という目標を含むEUの社会・環境・経済政策「欧州グリーンディール」を公表していたが、今回の新行動計画は、欧州グリーンディールの重要な柱に位置付けられる。

新たな計画のポイントは、EU内における持続可能な製品ポリシー(Sustainable Product Policy)の法制化だ。欧州委員会は、EU市場で販売される製品について、長期間の使用・再利用・修理・リサイクルが容易な製品設計や、バージン素材の代わりにできるかぎりリサイクル素材を活用することを義務化する予定で、使い捨て製品も制限されるほか、売れ残りの耐久財の廃棄なども禁止される予定だ。

循環を前提とした「サーキュラーデザイン」をEU市場の製品の標準とすることで、持続可能ではない製品の製造・販売を制限するとともに、持続可能な素材に対する新たな市場を創り出す。

また、今回の新計画では製造側ではなく消費者のエンパワーにも重点が当てられている。消費者の「Right to Repair(修理する権利)」を強化し、製品の修復性や耐久性などに関する信頼できる情報へのアクセスを確保し、できるかぎり製品を長期間使用できる環境を整える。

なお、欧州委員会はもっとも資源消費の度合いとサーキュラーエコノミーへの転換余地が大きい重点セクターとして「電子機器とICT」「バッテリーと車」「包装」「プラスチック」「テキスタイル」「建築」「食」の7分野を特定し、それぞれ具体的な行動計画を提示している。例えば、充電機器の共通化、リサイクル可能素材の利用、リサイクル材の利用義務化、廃棄物の分別回収システムの構築などが施策として挙げられている。

そして、充電機器・包装・車・電子機器の有害物質に関する法律も改正し、廃棄物削減に取り組む。なお、すでに要求事項として採択されている拡大生産者責任(生産者が廃棄も含めた全てのライフサイクルに責任を持つ考え方でEPR(Extended Producer Responsibility)と呼ばれる)については、インセンティブの導入やリサイクル情報を共有するシステムを通じて、実行を確実なものとする。さらに、リサイクル材の使用を義務付けるなど高品質な二次原材料の市場の創出に取り組む。

行動計画を受けて欧州委員会は、法律や指令の整備に取り掛かり、欧州議会とEU加盟国に提案・承認を経て実行段階に移る。また、同行動計画は各国の法律や規制を制定する上での上位文書となるため、欧州におけるサーキュラーエコノミーの転換が加速することは必至だ。IDEAS FOR GOODでも引き続き欧州の動向を注視していく。また、より詳細な記事はCircular Economy Hubの解説記事を参照いただきたい。

【参照サイト】Changing how we produce and consume: New Circular Economy Action Plan shows the way to a climate-neutral, competitive economy of empowered consumers
【関連ページ】サーキュラーエコノミー

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