【欧州CE特集#18】小さな工夫で、モノをもっと大事に。「片方ない!」をなくす靴下ブランドQnoop

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洗うときはちゃんとあったはずなのに!急いでいるときに限ってペアが見つからない!──片方だけ靴下が失くなるというミステリーを、あなたも経験したことがあるのではないだろうか?

アムステルダムのおしゃれなお店が入る文化複合施設、De Hallen(デ・ハレン)の奥まった場所に位置する小さな店の前には、人の目を引くこんな看板がある。

Qnoop店外の看板

「知っていましたか?人は、ひと月に平均1.3足の靴下を失くしています!片方だけ靴下をなくしてしまうミステリーをどうしたら解決できるのか、店内に入って確かめてみて」

ひと月に1.3足というと、年間で実に16足もの靴下を失くしている計算になる。片方残った靴下はほとんどの場合捨ててしまうはずだ。自分ひとりの失くしものなら「おっちょこちょいなミス」「せっかく買ったのに少しもったいなかった」で済むだろうが、世界中の多くの人がこの「靴下紛失ミステリー」を体験しているであろうことを想像すると「たかが失くしもの」と馬鹿にはできない問題だと分かる。

「ここオランダにも私たちと同じように何足も靴下を無駄にしてきた人物がいるのだな」と思いながら、筆者は店内に足を踏み入れた。

店内のようす

店内のようす

壁にはカラフルな靴下がきっちりと並べられている。無地のもの、柄入りのもの、ラメが織り込まれたもの。モノトーンで落ち着いたデザインもあれば、ビビッドな赤や青が印象的なデザインもある。

店に入ると、バックヤードから気さくそうな男性が出てきてくれた。彼の名前はDirk Visさん。Dirkさんは、靴下ブランドQnoopの創業者だ。彼自身、靴下を片方失くすことが多く、「探す時間をほかのことに当てられたら有意義なのに」「資源を無駄にしたくないのに」と悩んでいたという。

「どうしたら靴下をなくさずに済むのか?──僕が出した答えはこれだよ」そう言って、彼は壁にかかっていた靴下を手に取り、筆者に見せてくれた。

靴下につけられているボタン

靴下にはボタンが。

靴下には、ボタンと小さな輪っかが取り付けられている。洗濯する「前に」ペアをそろえてとめておくことで、靴下の紛失を防ぐことができるというわけだ。ちなみに、ブランド名にもなっているQnoopはオランダ語でボタンという意味なのだそう。

店内の掲示

“No more missing socs!”

Qnoop店内のようす

Qnoopは、製品そのものだけでなく、製品を消費者の元に届けるまでのプロセスもサステナブルである必要があると考えており、トラック輸送による環境負荷を考慮して植樹によるカーボンオフセットを行ったり、商品の発送にできるだけ自転車便を利用したりしているのだそうだ。

Qnoopの靴下はオーガニックテキスタイルの認証であるGOTS認証(Global Organic Textile Standard)を取得した100%オーガニックコットン製で、ボタンには紙や段ボールのごみをアップサイクルして作られたリサイクルコットン製のものを使用。商品のタグやパッケージ素材にはリサイクル段ボールを採用している。また、Qnoopは季節ごとに新デザインの靴下を発表しているが、流行に左右されてすぐに履けなくなってしまうようなものではなく、長く履いてもらえる廃れないデザインにこだわっているという。

サーキュラーシステムにフィットしたサステナブルなモノづくりをしよう、と言うと、私たちはつい「代替素材の発見」や「環境負荷の低い素材の開発」「業界の体質や消費者の意識の改革」など、難しいことばかりに気を取られてしまいがちだ。だが、ちょっとした発想の転換や少しの工夫といった「ほんの小さなこと」がループを閉じる可能性があることも心に留めておかなければいけないのではないだろうか。

Qnoopの創業者Dirkさん

Qnoopの創業者Dirkさん

【参照サイト】Qnoop
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