新型コロナウイルス流行の今、ウイルス対策とサステナビリティ追求の両立を考える

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2019年終わりに東アジアからじわじわと広がり、今では世界各国が緊急事項として取り組んでいる新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に関連する諸問題。中でも「感染拡大の阻止」が最優先項目となり、出入国制限、自宅待機・外出禁止、休校、イベントや集会の自粛、レストランやバーの営業禁止など、様々な措置が世界中でとられている。

この新しいウイルスにはまだまだ不明確な情報が多く、混乱や不安が続いている。ここ数ヶ月に渡るコロナウイルスとの戦いにおいて、ほとんどの人の生活スタイルが変わっただろう。在宅勤務や休校の影響は大きい。必要なものが手に入りにくくなり、中止や延期になった予定も数えきれない。そして、「コロナウイルス前」の生活で気にかけていたことが、「コロナウイルス後」の生活では優先度が下がるのも避けられない。IDEAS FOR GOODの読者には、サステナビリティSDGsに関心が高い方が多いと察するが、実生活におけるサステナビリティ、エコ、エシカルといった部分が以前のように実行しにくくなり、フラストレーションを感じている場合もあるだろう。

世界が前代未聞の非常事態に直面している今、ウイルス対策に集中するべきであることは大前提であり、安全と衛生・健康が最も重要だ。しかしながら、環境破壊は着々と進行しており、待ってはくれないことも忘れてはいけない。この記事は、何が正しいといったことを議論することが目的ではなく、結論もない。ウイルス対策と環境問題対策はトレードオフになる可能性があること、そして、今後新しいウイルスが発生する危険性も踏まえて、ウイルス対策とサステナビリティ追求の両立が、私たちにとって新しい課題になっていくことを考えていきたい。

ウイルス対策と脱プラスチック

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昨今、マイタンブラー・マイボトル、エコバッグ、マイカトラリーなどを活用し、使い捨てのプラスチックを避ける日常的な取り組みが盛んになってきていた。しかしウイルス対策の中で、この流れは一旦減速しそうだ。

事例1:持ち込み容器の禁止

日本のスターバックス コーヒーでは早くから持ち込み容器が禁止された。アメリカのスターバックス(3月20日以降、カフェスペースは閉鎖しドライブスルーとデリバリーのみ)やその他のコーヒーショップ、カジュアルなフードコートでも持ち込み容器は禁止され、プラスチック袋入りの使い捨てプラスチックカトラリーが復活している。

しかし一方で、紙幣や硬貨もウイルスを運ぶことが指摘されており、使い捨てプラスチックの使用を増やすことだけが店舗における感染防止に効果的なのかという疑問も上がっている(参照)。

事例2:レジ袋廃止の動きの減速

筆者が住むニューヨーク州は3月1日付でプラスチックのレジ袋廃止を開始したが、持ち込みのエコバッグはウイルスを伝達する可能性が高いとして、この法案が罰金などの法的拘束力を持ち始める日を4月1日から5月15日に延期すると発表した。同時に、エコバッグのこまめな洗浄も強く推奨している。こうした持ち込みエコバッグの衛生に対する懸念は、他の国や地域でも広がっている。

ウイルス対策とゼロウェイスト

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ゼロウェイストの基本である4つのR(Refuse:買わない、Reduce:減らす、Reuse:再利用する、Recycle:リサイクル)はご存知の方も多いだろう。この4つのRの1つもしくは複数に反するアイテムでありながら、ウイルス対策に有効として需要が高まっているものが多く存在する。

事例1:使い捨てマスク

使い捨てマスクは、特に医療の現場での使用は避けられないとともに、日常でも利用が急増している。日本では元々花粉症の時期や風邪・インフルエンザの流行時には着用することがごく一般的であり、普段はマスクを見かけないアメリカでも今回の一件で着用者が増えた。そのため供給が追いつかず、医療現場でのマスク不足が問題になっている。

それほどまでに需要が高まっているマスクだが、ほとんどのマスクは衛生上Reuseできない。さらに、一般用マスクにも医療用マスクにも使われている、フィルターの役割を果たす1ミクロン以下の人工ナノポリマー繊維は、Recycleを困難にする。似たような人工繊維は多くの除菌シートにも含まれる。

WHOはホームページで、一般の人がマスクを使用するべきケースを、「健康であれば、コロナウイルス感染の疑いがある人の世話をしている場合」や「咳やくしゃみが出る場合」などに限定している。供給不足の現在、マスク着用が必須の人々が優先的に使用できるように、一般の健康な人までがやみくもに使い捨てマスクを使用しないようにすることは重要だ。例えば、外出を極力控えることは、マスク着用機会を減らすことにつながる。また、布製など洗って繰り返し使用可能なマスクも広がりつつある。

事例2:飲食のデリバリーによるゴミ

世界中の多くの都市でレストランやカフェ、バーなどの営業が禁止となり、飲食業界の存続が危ぶまれている。ニューヨーク市では、ただでさえ高騰し続ける家賃で経営が厳しいゆえ、特に小規模で地域型の飲食店は悲鳴を上げている。この現状から、現時点では許可されているデリバリー注文を通し、「ローカルビジネスやスモールビジネスをサポートしよう」という動きが強まっている。その際、ドライバーと注文者の接触を極力避ける取り組みも進んでいる。

しかしながら、デリバリー注文ではどうしてもゴミ(リサイクル不能なものも含む)が出てしまう。最近のオンラインオーダーでは、プラスチックカトラリーやナプキンの有無を選べたり、環境に優しい容器が使用されていたりなど、環境への配慮も進んできたが、完璧ではない。デリバリーで地域経済をサポートしようとすると、ReduseやRecycleの問題とぶつかってしまう。

ウイルス対策と消費主義からの脱却

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パニックに近い状態に陥り様々な情報が飛び交う中、長期的な外出禁止に備えて、もしくは品薄に不安を感じて、必要以上の購買が促されやすくなる。先述のマスクや、トイレットペーパーや除菌剤は、まるで市場から消えたかのように在庫が激減した。サステナブルに生活する上で、計画的で責任のある購買活動は重要なポイントであるが、昨今の状況では幾分節度を無視した消費主義があらわになりがちである。

事例1:植物性ミルクの買い占め

アメリカでは、コロナウイルスの感染が増え始めた頃から、植物性ミルクの売り上げが300%の伸びを見せているそう。牛乳より日持ちすることが大きな理由なようだ。筆者がニューヨーク市内で出向くスーパーマーケットでも、牛乳は余っているのに植物性ミルクは売り切れている状況を目にする。ヴィーガンなど牛乳を飲まない人は困惑しているとともに、乳糖不耐症やアレルギーなどの理由で牛乳を摂取できない人にとっては非常に大きな問題だ。利己的な買い占めは当然ながら改めるべきである。

また日本では、休校措置が決まった際に学校給食に提供される牛乳の余剰が出て、酪農家や酪農業界が、このままだと経営上乳牛を保持できない可能性も示唆しつつ牛乳消費を訴えかけていたのを目にした。これは、動物を消費経済に巻き込むこと自体について、今一度考えるきっかけになるのではないだろうか。

事例2:オンラインショッピング

店舗での集客の自粛が叫ばれる中、各ビジネスはオンラインプラットフォームの強化を進めている。後述する「社会距離戦略」に基づき、人との接触を避けることは有意義である一方、自宅で過ごす時間が増えストレスが溜まる最中、オンラインショッピングは必要以上の購買を生む可能性がある。

オムニチャンネル化が進んでいるのもあり、コロナウイルス後のEコマースビジネス自体の予測はまだ不透明で、業界によりムラがあるのも現状だが、自宅にいる生活者はEコマースによるサステナブルではない購買を防ぐよう気に掛ける必要がある。

ウイルス対策と環境活動

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次は、環境問題のアクティビズムや啓蒙・教育、ネットワーキングに関してだ。集会を避けるため中止や延期になったイベントには、環境問題や気候危機に関するものも多く含まれる。例えばニューヨーク市で3月中旬に行われる予定だった循環型ビジネスにフォーカスしたCircular Week NYCの企画は、軒並み中止もしくはオンラインストリーミングでの開催になった。

グレタ・トゥーンベリ氏が率いる気候危機ストライキも、3月からは#climatestrikeonlineとしてオンラインでの参加が呼び掛けられている。

ネットでの情報収集や参加型プラットフォームでも十分な効果は発揮できるだろうが、人と人が会って交流することで生まれるケミストリーは狭まれてしまう。ウイルスに関するニュースが溢れ、環境問題への関心がただでさえ薄れてしまいがちな状況の中、多くの人が環境活動に継続的に参加できる体制が求められる。

アメリカで一貫して推奨されている「社会距離戦略」

最後に、サステナビリティ追求の話題ではないが、アメリカでは一貫して推奨されている「社会距離戦略」について触れたい。

日本では、諸外国と比較すると緩やかな規制がとられているようである。一方、筆者が住むアメリカでは、長引く社会的・経済的な損害を防ぐには「社会距離戦略」、つまりは自宅で待機し人との接触を避けることが必須とされ、一貫して絶対的に推奨されている。それを意味するハッシュタグ、「#stayhome(家から出ないで)」、「#socialdistancing(人との距離を置く)」をソーシャルメディアで目にする機会も多い。

普段は購読者への公開が中心であるワシントンポストも、「社会距離戦略」の重要性を、自由に出歩く場合・隔離と比較したシミュレーションと合わせて一般公開している(ワシントンポスト公式インスタ)。日本語でも公開されているのは異例で、日本へのメッセージが込められていると思われる。

「社会距離戦略」は自分のためだけではなく、むしろ他者への感染を防ぐため、ひいては今後の全体的被害を最小限に抑えるための取り組みだと、多くの国で考えられている(真の評価は、各国の状況が異なるのもあり、数ヶ月後でないと明確にはならない)。日本ではさまざまな自粛が解除される動きもあるようだが、今後の広範囲での感染拡大や爆発的な感染者増大の可能性も視野に入れ、各国がとっている「社会距離戦略」が日本では適用可能か検討するべきではないだろうか。

まとめ

冒頭で述べた通り、新型コロナウイルス感染拡大が続く現在、私たち生活者は国家政府・地方政府やしかるべき機関の指示に従い、安全と衛生・健康を最優先した行動をとるべきである。それにより環境問題における妥協が生じてしまう場合は、与える悪影響を最小限に抑える努力も必要だ。

一方で、NASAが発表した中国の衛星写真は、コロナウイルスで経済活動が停滞したことにより現地の空気汚染が改善された様子を見せた。

 

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観光客が激減したイタリアのベニスでは、運河の水の透明度が上がったことも報じられた。

 

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これらは、新型コロナウイルスによって人間が活動を抑えたことによって生じた現象だ。ウイルス対策によって環境破壊に拍車がかかる要素もあれば、逆に地球が一息つく現象もあるとは、皮肉なものだ。

長期的な対策が必要になることが見込まれる新型コロナウイルス流行への対応、また遠くない未来に発生するかもしれない新しいウイルスへの対策、そして迅速な対応が求められる環境問題への対策も同時に進めていくことは、地球に住む私たち全員が取り組んでいくべき新しい課題になっていくだろう。

【参照サイト】COVID-19 Has Caused A Shortage Of Face Masks. But They’re Surprisingly Hard To Make(npr)
【参照サイト】Coronavirus and e-commerce: It’s complicated(Marketing Land)
【参照サイト】Plastics Had Been Falling Out of Favor. Then Came the Virus(Bloomberg)
【参照サイト】‘This is a yes-we-can moment’: What the coronavirus response means for climate action(CNBC)

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