有名ブランドのロゴが大きくついた服を着ているとき、「自分はわざわざお金を払ってこの企業を宣伝しているのでは?」と思ったことはないだろうか。それでも、おしゃれなロゴをファッションに取り入れたい気持ちはわかる。このファッションと同じような発想で、新型コロナウイルス感染拡大の影響で経済的打撃を受ける事業者に、ブランドTシャツを販売しないかと呼びかける取り組みが始まっている。
ミズーリ州のプリントショップである「Tiny Little Monster」は、オンラインストアで地元のスモールビジネスのオリジナルTシャツを販売する「Here For Good」という取り組みを始めた。Tシャツを販売してほしい事業者は、同店に事業者のロゴデザインを送ると、Tシャツのプリントと発送を代行してもらえる。Tシャツは20ドル(約2000円)で販売され、その半分である10ドル(約1000円)が販売を依頼した事業者に支払われる。
Here For Goodに参加する事業者にしてみれば、先払いの手数料がかからず、Tシャツが売れるたびに収入が入り、購入した人がTシャツを着ることでブランド認知度が上がるのでメリットが大きい。消費者はオンラインでTシャツを購入することで、自分が好きなお店に直接赴くことなく支援ができる。コロナ禍のなか、打撃を受ける地域コミュニティを守る力になれるのだ。
Tiny Little Monsterも、コロナの影響で経済的打撃を受けた事業者のひとつだ。あらゆるイベントが延期され、オリジナルTシャツの出番が減り、売り上げがほぼゼロの状態になったという。そのなかで顧客と話しているときに皆が同じような状況だと気づき、「何かしなければ」と新たな収入源を生む方法を考えた。
この取り組みの成果はどうだったのだろうか。ソーシャルメディアでHere For Goodを発信し始めてから5日で、40以上の事業者がTシャツのデザインを提出したという。4月28日時点で合計69810ドル(約749万円)が参加した事業者に届けられた。この取り組みはユタ州、ペンシルベニア州など他の地域でも関心を集め、オンラインストアのつくり方について問い合わせが来ているという。
Tiny Little Monsterは、Here For Goodのコンセプトを他のTシャツメーカーと共有することに前向きで、「連絡をくれればキャンペーンを展開するための情報を提供する」と伝えている。
非常事態の今だからこそ特に、コロナにからめた企画やPRをする際は「本当に人の役に立つのか」「本当に問題の解決につながるのか」を真剣に考える必要がある。困っている人に直接的な支援ができるHere For Goodのような、いいクリエイティブが世の中にあふれてほしい。
【参照サイト】Tiny Little Monster