「エシカル消費」という言葉を知っていますか? エシカル消費とは、人や社会、環境に配慮した消費のことで、誰にでもできる社会貢献のアクションとして注目されています。
本特集では、5カ月にわたり、エシカル消費のおすすめ9テーマを解説していく「わかる、えらぶ、エシカル -Shopping for Good-」特集。第7回は、「地元生産加工商品」「就労支援商品」について詳しく解説します!
地域経済や働き手を応援できる「地元生産加工商品・就労支援商品」
今回は地域経済や働き手を応援できるエシカル消費について取り上げます。エールマーケットでは、「地元生産加工商品」と「就労支援商品」という2つの切り口で紹介しています。「地元生産加工」とは、同じ地域内の素材を使い、加工することです。エールマーケットでは、原則同じ都道府県内(県境をまたぐが、生活圏が同じ場合も含む)であることを「同じ地域」ととらえ、2つ以上の過程(「生産」と「加工」など)が同じ地域内で生み出された商品を「地元生産加工」と定義しています。
たとえば地域内で生産された果物を使って作られたスイーツ、地域内で獲れた魚を使って作られた干物などがあります。
「就労支援商品」とは、福祉施設に作業を委託したり、障がい者が主体となって生産に関わっている商品、社会復帰を目指す人など就労困難者が作ったり販売している商品のことです。たとえば、障がい者の方がつくった小物やクッキーなどのお菓子があります。
「地元生産加工商品」や「就労支援商品」はなぜエシカル?
では、「地元生産加工商品」や「就労支援商品」を選ぶことは、なぜエシカルなのでしょうか?
まず、「地元生産加工商品」がエシカルな理由について。
1. 地域経済を活性化できる
地域内で生産加工を行えば地元で循環するお金を増やすことができ、地域経済の活性化につながります。
イギリスでの調査によると、商品やサービスを購入する際、地域の事業者に1ポンド(約135円)使った場合は、平均で76%が再び地元に投資されましたが、同じ1ポンドを全国チェーンの大型スーパーなど地域外に拠点を置く事業者に使った場合、地元に再投資される金額はわずか36%だったそうです(*1)。
このように、地域内で生産加工を行う場合とそうでない場合とでは、地域で循環するお金の量がまったく異なります。
2. 地域の雇用を創出できる
地域で生産や加工を行えば、その地域に仕事が生まれ、雇用の創出にもつながります。地域での雇用創出は人口減少緩和や、都市一極集中を回避するために必要な課題であり、地元生産加工品を選ぶことはこうした地域の問題解決の糸口にもなります。
3. 温室効果ガスを削減できる
一定の地域内で生産や加工を行う場合、モノの移動距離が短くなるため、輸送や保冷などにかかるエネルギー量が減り、地球温暖化の要因になる温室効果ガスの発生を減らすことができます。日本全体のCO2排出量のうち、自動車などの運輸部門によるCO2排出量が約17%を占めまるため(*2)、決してあなどれる数字ではありません。
インターネットを通じて購入する際も、販売場所が遠い場合は手元に届くまでに温室効果ガスが発生してしまうこともあります。遠い地域の商品を選ぶ際は故郷や被災した地域などとともに、輸送時の温室効果ガス排出も考慮して応援したい地域のものを選ぶと、よりエシカルな選択ができそうです。
次に「就労支援商品」がエシカルな理由について。
4. 障がい者などの雇用機会を創出できる
就労支援商品を選ぶことは、病気や障がい、いじめ、不登校などによって社会生活を営むのが難しくなった人たちが、社会復帰をはかり、収入を得たり、社会に参画したりする機会の創出につながります。
障がい者の場合、2018年に事業主に対して障害者の雇用を義務づける「障害者雇用促進法」が改正され、身体障害や知的障害に加えて、発達障害などを持つ精神障害者も対象になったものの、雇用機会は少なく、パートタイムなど非正規雇用が多い上、賃金も低いのが現状です。就労支援商品の購入はこうした問題解決の大きな力になります。
地域のお店や会社同士が、コロナ危機を乗り越えるために連携するといった新たな動きもみられます。例えば熊本県では、コロナ禍で需要が減った養殖魚を、観光客の減少で仕事の減ったホテルのスタッフが加工した、通販のブリ冷凍弁当が人気を集めました。このように、地元の会社同士が助け合ってつくった商品は、まさに「地元生産加工」商品ですね。
新型コロナウイルスの感染拡大により、家や家のまわりで過ごす時間が多くなった近頃。散歩をしている時に面白いお店を発見したり、今まで気づかなかった地元の商品を見つけたりする中で、「地元生産加工」や「就労支援」の商品に出会うきっかけが増えたのではないでしょうか。ぜひ、すてきな出会いを。
地域経済や働き手を応援する世界のアイデア
地域経済や働き方を応援するために、国内外でさまざまなアイデアが生まれています。
パリでまもなくオープンする世界最大の屋上農園
フランス・パリ南西部にあるエンターテインメント施設の上に約150,000平方フィートの屋上農園が今年、まもなくオープン。施設内の水などは全て循環させ、廃棄物ゼロ、殺虫剤不使用、毎日1000kgもの野菜や果物を生産する場所になるそうです。都市での地産地消を可能にするアイデアとして注目されます。
【記事】地産地消の都へ。パリで世界最大の屋上農園が2020年にオープン
コロナが生んだ地域の絆。横浜のガーゼマスクプロジェクト
地域の人々が縫製から販売まで協力しながら作る手作りのガーゼマスク。主婦や障がい者の方などが作ったマスクを買い取り、地域のお店が販売、その収益で地元の飲食店や農家の商品を購入し、制作した方にお礼として渡す、というもの。仕事を得にくい人たちに少しでも収入を生み出し、食品ロスを削減し、マスクの供給不足を解消する「三方良し」のプロジェクトです。
【記事】コロナが生んだ、地域の絆。関わる誰もが幸せになる、横浜の「YOKOHAMAガーゼマスクships」プロジェクト
聴覚障害者が働く、ベトナムのオーガニックベジタリアンレストラン
聴覚障がい者がスタッフとして働く、ベトナムのベジタリアンレストラン。ウェブサイトでは、聴覚障害者を積極的に採用していることについては大々的に触れられておらず、純粋に料理のおいしさに惹かれてくる人が多いそう。障がい者が働く機会の増大につながりそうですね。
【記事】地元っ子おすすめ!プラスチックフリーを掲げるおしゃれなハノイのカフェ・レストラン3選
「地域や働き手を応援するさまざまなアイデアが生まれているんだ!」「気軽に応援できるなら選んでみたい!」という気持ちになってきませんか?
地元生産加工商品、就労支援商品を選ぶポイント
では、地域経済や働き手を応援する商品を選ぶために、どういったことに気をつければよいのでしょうか? ポイントを2つご紹介します。
1. 売り場コーナーや商品の説明書きを見る
実店舗でもインターネット販売でも、「地場産コーナー」といった売り場がもうけられている場合があるので、まずはそこをのぞいてみましょう。エールマーケットでは、「ピックアップ」というところから「地元生産加工」「就労支援」「地域産品」「地域雇用」といったタグを選択すると、簡単に選ぶことができます。
2. 認証ラベルやマークを参照する
地元産品に関しては、自治体レベルで地産地消のロゴマークを作っている場合があります。お住まいの地域や応援したい地域に、こうしたマークがないか、調べてみるのも面白そうです。
就労支援に関しては、障がい者が制作過程にかかわった農林水産物につけられる「ノウフクJAS」という認証が2019年3月に誕生しました。また、厚生労働省の「もにす認定制度」など、障がい者雇用を積極的に行っている事業者に与えられる認定制度がいくつかあり、認定を受けている事業者の商品を選ぶという方法もあります。
ぜひ、地元生産や就労支援を大切にした商品との出会いを楽しんでみてくださいね。
エールマーケットのオススメ地元生産加工商品・就労支援商品
最後に、エールマーケットで販売されているおすすめの地元生産加工品・就労支援商品のご紹介をします。気になるものがあったら、ぜひ試してみてはいかがでしょうか?
年に1度の「秋芽」だけを使用した千葉県産手入れ海苔(ていれのり)
「手入れ」とは「一番摘み」という意味で、毎年最初に収穫される新芽「秋芽海苔」だけを使用して作る焼海苔のこと。干潟の干満差を利用して育ち、海中の養分をとり、海面での光合成を繰りかえすことで、豊かなうま味(アミノ酸)が蓄えます。新芽らしい香りとやわらかさが特長の特別な海苔です。
(商品ページはこちら<外部サイト>)
熊本県産「桜島小みかん」の香りあふれる馬油リップクリーム
熊本県産の馬油と熊本県南部、水俣市にある福田農場で採れる桜島小みかんの天然アロマを使ってつくられたリップクリーム。みかんの爽やかな香りに癒やされながら、唇のうるおいをしっかり保ちます。夏の紫外線対策にもおすすめです。
(商品ページはこちら<外部サイト>)
売り上げの一部が障がい者の支援に「さをり織り」小物入れ
一つとして同じものはない、手づくりならではの絶妙な色合いがかわいらしい小物入れ。宮城県石巻市にNPO法人「輝くなかまチャレンジド」が運営する共生型福祉施設 織音の障がい者がつくっており、売り上げの約30%が障害を持つ織り手さんの賃金として、約6%がこの活動を維持するNPO法人「輝くなかまチャレンジド」に寄付金として支払われます。
(商品ページはこちら<外部サイト>)
次回は「森林を守る商品」について解説します。お楽しみに!
※「わかる、えらぶ、エシカル -Shopping for Good-」特集は、Yahoo! JAPANが運営する人・社会、地域、環境にやさしいエシカル商品を応援するお買い物メディア「エールマーケット」とIDEAS FOR GOODが行う連載企画です。
*1 Sacks, J. Public spending for public benefit, New Economics Foundation, London, July 2005
*2 日本の部門別二酸化炭素排出量(2018年度), 温室効果ガスインベントリオフィス
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ヤフージャパンが東日本大震災後、東北の商品を揃えてネットで販売を始めた「復興デパートメント」。今は「エールマーケット」と名前を変え、全国の商品を取り扱っています。自然環境や人、地域に優しい社会を応援(エール)する、本当にこだわった商品を販売するモールです。