スリランカが始めた「週1農業」食料不足を解消か

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「週4日勤務」にどのようなイメージを持っているだろうか。

IDEAS FOR GOODではこれまで、週4日32時間勤務を導入することを検討しているスペインや、労働時間を週35~36時間に短縮する社会実験を行ったアイスランドなどの事例を紹介してきた。

こういった事例の共通点は、働く人のウェルビーイングを維持するために行われていることだ。働きすぎを懸念する声がきっかけとなり、短時間勤務が注目されるようになった。

そんななか、スリランカ政府は2022年6月、公務員の人に向けて「農業に取り組んでもらうために、週の休日を1日増やす」と発表した。

スペインなどとは全く異なる理由による、週4日勤務制の導入。なぜ休日を増やしてまで、農業をすることを促すのだろうか。

それは、同国が将来的な食料不足を懸念しているからだ。すでに広く報じられているように、スリランカは深刻な外貨不足に陥っており、食料、燃料、医薬品などの必需品の輸入に苦慮している。燃料不足により通勤も困難になっているため、「週5日通勤するより、自宅の庭などで食料を育てることに時間を使うほうが良い」と判断したのだ。

これに伴い、スリランカは2022年6月から3か月間、水や電気などの必要不可欠なサービスを提供する組織を除くすべての政府機関において、毎週金曜日を休みにする。やむを得ない事情により、自分の食料を確保するスキルを身に付ける人が増えるのではないだろうか。

国際社会も、スリランカの支援に向けて動き始めている。日本政府は2022年5月、食料や医薬品供与のための人道支援として、300万ドル(約4億円)の緊急無償資金協力を実施すると発表。また、国連は2022年6月、スリランカに対する4,700万ドル(約64億円)の支援要請を発表した。こういった取り組みにより、必需品不足という課題が解決に向かうことを願いたい。

スリランカの事例を見ると、柔軟な働き方を視野に入れておくことの大切さが分かる。普段は仕事第一で頑張っている人でも、緊急事態が発生すれば、仕事の優先度が変わることもあるだろう。

何が起こるか分からない世の中、自分の生き方を決めつけないことが大切ではないだろうか。

【参照サイト】Encouraging public officials to engage in agriculture and cultivation
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