【ベトナム特集#11】竹の水筒でゼロウェイストのインフラを創り出す。デンマーク人の挑戦「not just bamboo」

Browse By

お気に入りの飲み物を入れて、仕事の合間に一息。最近ではそんなときに使える便利でおしゃれな水筒が増えてきた。ベトナムには一風変わった竹でできた水筒が売られている。

様々なラインナップが揃う

このスタイリッシュな水筒を生産・販売しているのは、ベトナムで活動する社会的企業”not just bomboo“だ。not just bombooは、デンマーク出身のMartin Elsøe Jensen氏とその長年の友人であるFrantz Byrch Pedersen氏が始めたブランドで、竹でできた水筒やストローの生産・販売や、ベトナム国内で雨水の浄水プロジェクトをおこなっている。

今回、創立者の一人であるPedersen氏に話を聞いてきた。

創業者の一人Pedersen氏

「not just bomboo」 を語る上で欠かせない3つのキーワード

not just bombooには大切にしている価値観が三つある。

一つ目は「クラフトマンシップ」。プロダクトデザイン自体はデンマークの有名なデザイン・建築会社であるHolscher Designが担当しているが、製品はベトナムの職人たちによるハンドメイドだ。ひとつの水筒を作るのにかかる期間は大体1か月程度。シンプルだが機能性のあるデンマークのデザインとベトナムのクラフトマンシップを掛け合わせ、唯一無二な製品を作り出している。

本体と蓋は取り外し可能

二つ目が「サステナビリティ」。適切な素材を選ぶことやそれをどのように生産するのかがサステナビリティに大きく関わってくる。その点、竹は最も早く育つ植物で、切っても三年以内に再生されるほか、使用する竹も、FSC(Forest Stewardship Council:森林管理協議会)という国際的な森林保全機関の認証を受けている。また加工する際に接着剤や化学薬品を使用しないように、竹の一節をそのまま生かして水筒を作ることにもこだわっている。

Image via Shutterstock

三つ目は「ゼロウェイスト」。not just bambooが使っている竹はベトナム国内で栽培され、余った竹は料理用の火起こしとして使い、無駄にしない。また水筒は本体と蓋が分解でき簡単に取り替えることが可能で、サーキュラーエコノミー(循環型経済)を体現したデザインとなっている。

人も竹も、個性はいろいろ

スタッフの4割を占める男性が竹を掘る作業をし、残り6割の女性が竹を磨く加工作業などを担う。今日、ベトナムの地方でnot just bambooの製品を作っている25世帯は、工場ではなく自宅で働き、家族との時間を大切にすることができている。Pedersen氏は数週間ごとに村に足を運び、一緒に働いているベトナム人家族の子供の名前まで知っているほど、彼らとのコミュニケーションを大事にしているそうだ。

Image via Shutterstock

もちろん、異国の地で育った環境の異なる人と一緒になにかを成し遂げるには困難が伴うものだ。Pedersen氏も、アーティストや職人に無理にスピードを上げて働かせることはできないので、いかに強制せずにもっと効率良く働いてもらうか、正確なサイズに切ることをどうやって理解してもらうかという点で苦労したという。

創業者の一人Pedersen氏

しかし、職人気質で働き者のベトナム人たちと長期的な関係を築くことで、Pedersen氏は3年ほどかけてこの事業をスタートさせるに至り、いつも笑顔なベトナム人たちと働くことを楽しんでいる様子だった。

そんな個性豊かなベトナム人一家が作った水筒もまた、一つひとつ味がある。もちろんサイズは統一されているが、表面の竹の模様など少しづつ色合いや風味が異なり、その違いがまた愛おしい。

水筒を使ってもらえる環境・文化を築き上げる

ベトナム国内で展開する浄水プロジェクト

not just bombooは、竹の水筒がひとつ売れるごとに1米ドルを寄付するイニシアテチブをとおして、ベトナム国内で12の雨水浄化プロジェクトを実施している。すべての人が安全な水へアクセスできる環境を整えるためだ。重力を利用した電気不要の自給式浄水システムをベトナム地方にある学校などに設置し、2000人ほどの小・中学生や先生にきれいで安全な飲料水を無料で届けている。

Photo by Larm Rmah on Unsplash

この取り組みは二つの観点から重要な意味を持つ。一つ目は水道から給水できる環境を整えるという点だ。そもそもベトナムの人々がペットボトルの水を買うという習慣がなかなか変わらないのは、安全できれいな水に簡単にアクセスできないから。水道水からきれいな水が出てこなければ、水筒で水を補充する気も起こらないのは当然だ。そのためまずは安心して水道水が飲める環境を整えるためにこのプロジェクトをスタートさせた。

二つ目に、水筒に給水するという文化や習慣を作るという点も大切である。子供のときの教育はのちの行動習慣に大きな影響を与える。そのため学校でプロジェクトを進行することで、子供たちにペットボトルの水を購入するのではなく水筒に給水することが当たり前のこと、かっこいいことと自然にわかってもらうことができる。

竹の水筒をとおして実現したい未来とは?

not just bambooの製品はベトナム国外にも輸出されている。販売先は、蛇口から水を給水する習慣のある国が上位を占めている。安全な水が簡単に手に入るデンマークやスウェーデン、フィンランド、イギリス、ドイツなどのヨーロッパが約7割を占め、2割がアジア、1割がアメリカである。

一方で、ベトナム国内で作った製品を海外に輸出するのは、輸送のためにCO2が排出されゼロウェイストに反していないか疑問に思う人もいるかもしれない。Pedersen氏は次のように説明してくれた。

「ヨーロッパで売っている歯ブラシやストローはすでにほぼすべてアジアから輸入されたものです。使い捨てのプラスチックストローとは違い、竹のストローは1,2年間使えます。またストローは重くないので、輸送するのに多くのCO2は排出されていません。それとデンマーク国内でお客さんの元に配達するときは竹の自転車を使ったり工夫しています」

ベトナム国内では、ホテル、会社、ヨガスタジオ、カフェ、レストランなどが購入している。また、デザインにロゴを入れることもできるので、会社のギフトやイベントギフトとして使ってもらうこともあるという。

会社のロゴを入れることもできる

not just bambooの長期目標は水道水が飲めるようにインフラを整え、水筒に補充するシステムを作り、消費者の習慣や行動を変える手伝いをすることだという。ただ竹の水筒を生産し販売するだけではなく、その先には多くの夢が詰まっている。

編集後記

デンマーク大使館や国連、ベトナム国内企業と協力し、ビジネスをおこなっているnot just bomboo。not just bombooはその名のとおり、ただ竹の水筒を生産し販売するだけではなく、その水筒を使える環境を整えたり、ペットボトルの水を買うのが当たり前だと思っていた人の行動を変えるきっかけを与えたり、多くの価値を提供している。

彼らの活動は、持続可能な開発目標(SDGs)のなかでも「ジェンダー平等を実現」「安全な水とトイレを世界中に」「つくる責任、使う責任」など横断的に関わっている。それでも、ベトナムという地に足をつけて顔の見える範囲で地道に活動してきた誠実さがあるからこそ、少ない人数でここまで価値のあるビジネスを異国で育て上げることができているのだろう。

【参照サイト】not just bamboo

Posts Related to ベトナム特集

ミレニアルズアンケート