北海道とほぼ同じ530万人強の人口を持つフィンランドは、人口から見ると大きな国というわけではないが、官民ともに先進的な取り組みがさかんで、OECD(経済協力開発機構)レビューにおいて、ワークライフバランス、社会的結びつき、環境の質、主観的幸福等の評価が高く「国民が人生に満足している国の一つ」と報告されている。
そんなフィンランドの第三の都市トゥルクで、7月6日から8日に開催されたロックミュージックの祭典「Ruisrock Festival」の期間中、歌を歌うことによって運賃を支払うことができるという、前代未聞の電気自動車タクシー「Singalong Shuttle」が運行した。
クレジットカードも現金も受け取らない。車内に用意したタブレットで乗客が選曲し、歌うだけだ。タブレット画面に歌詞も流れることから、間違うことなく最後まで歌い終えることができる。何を歌っていいかわからず行き詰って途中で下車してしまうという心配もないことから、十八番のない人でも戸惑うことなく乗車する仕組みだ。音レベルメーターが設置されており、乗客が歌うことでどれだけ楽しんでいるかも計測してくれる。
これを企画したのは、フィンランドのエコラベル電力市場の最大手Fortum。タクシーとして使用する電気自動車にはBMW i3が採用され、大気に負担をかける廃棄物を排出しないエミッションフリーな走行を楽しむことができる。
Fortumの目的は、電気自動車というクリーンな選択をすることの手軽さと利便性を伝えること。電気自動車の充電スタンドも各所に設置されていて、非常に便利である。乗客は車内で歌って楽しみ、運賃も実質無料になることから、自然に電気自動車のタクシーを選ぶ、というなんとも上手いプロモーションだ。
タクシーと言えば、自動車配車アプリUberやその他の相乗りできるシェアリングエコノミーのサービスが注目されているが、このSingalong Shuttleは、視点を変え非常に楽しく先進的なタクシーの形といえる。今回は一時的な企画だったが、何らかの形で採算がとれるようであれば、普及していく道も開けるかもしれない。
【参照サイト】Singalong Shuttle