新型コロナウイルス感染症の影響により、世界的に失業率が高まっている。特にアメリカでの影響は大きく、労働省の5月8日付の報告によると、4月の失業率は14.7%、2,050万人が職を失った。歴史的な記録となってしまった失業率は、1932年8月の世界恐慌時の25.5%に次ぐ2番目に相当する。この緊急事態に、救済措置として政府からの現金給付がなされているものの、職が無く、貯金も減り、それでも変わらず家賃の支払い日が来ることに将来への不安を抱える人も多いだろう。
新しい職を求め、オンラインのビデオ面接を受けようとしている人も少なくないはずだ。そこで必要となるのが、「その人の人となりを表し、求めている職に相応しい面接用の洋服」である。しかし、面接用のきちんとした服を一式取り揃えようとすればかなりの出費になってしまう。かといって、その場に適さない格好で面接に挑めば受からないかもしれない。──こうして悩んでしまう人も少なくないのではないだろうか。
そこで、個人間の洋服レンタルアプリ「Wardrobe(ワードローブ)」は、オンライン面接用の洋服を無料で貸し出すプロジェクト、「Suited for Success」を開始した。通常有料の洋服レンタルサービスを行っているが、今回は「着るものが強み、美しさ、そして自信を与えてくれる」という強い信念、そして「同じ地域に住む人たちを支えたい」という思いのもと、新型コロナの影響で仕事を失ってしまったNY市に住む人たちの転職活動や、新卒者の就職の支援に乗り切ったのだ。
レンタルした洋服は自宅へ宅配、あるいはワードローブハブと呼ばれる、NY市内で提携している40箇所のクリーニング店からピックアップが可能だ。
「Suited for Success」のページには、求人リストへの導線が引かれている。この求人リストを公開しているのは、給与交渉を行なっている会社、Candorだ。共同創始者のデイヴィッドは、この非常事態に求人リストと求人を一時休止している企業のリストを公開した。このリストは100%ユーザーからの情報によって作られており、デイヴィッドは「勤めている会社の求人状況が分かれば情報を追加してほしい」と促している。また、この求人リストとは別に、一時的に解雇された人たちが自分の履歴書を載せ、面接の機会を待つ「オファー待ちリスト」も用意されている。
Wardrobeアプリの「Suited for Success」は、単に面接用の洋服を貸し出し金銭的な負担を減らすだけでなく、利用者が素敵な洋服を身に纏うことでまた自分に自信を持ち、新しい生活を始める一歩を踏み出す大きなきっかけとなっている。
新型コロナの影響で生活環境がガラリと変わる中、仕事を失ってしまった人や、新卒でこれから就職をする人たちにとっては、特に不安の募る日々が続いている。そんな困難な状況下では、悩みや不安を少しでも取り除いてくれるこうしたサービスが心の支えとなるはずだ。
見えないウイルスと終わりが見えない戦いが行われている今こそ、業界を越えた協力、国民への支援や心の支えが求められている。人それぞれ状況は異なれど、可能な範囲で私たち一人ひとりにできることを、今一度考えてみたい。
【参照サイト】Wardrobeアプリ公式ウェブサイト
【参照サイト】Suited for Success
【参照サイト】Who’s freezing hiring from coronavirus|Candor
【参照サイト】U.S. unemployment rate soars to 14.7 percent, the worst since the Depression era