人との距離を確保して安全な買い物を。オランダ発のローカルマーケットデザイン

Browse By

新型コロナウイルス感染症の感染が拡大する中、日常の食料品などの買い物をどのように行うかが世界中の課題となっている。ロックダウンによって人々の行動を制限している都市であっても、ほとんどの場合、食品流通の重要インフラであるスーパーマーケットは封鎖されていない。しかし、スーパーマーケットにおいて人との距離を制御するのは難しく、さまざまな対策が取られているものの、感染リスクを完全に排除するのは困難だ。

一方で、世界の小さなコミュニティの多くは、食料やその他の物資をローカルマーケットに依存している。経済的に脆弱な家庭の多くは、基本的な食材を露天のローカルマーケットで購入するのだ。都市シャットダウンによってローカルマーケットが閉鎖されると、彼らはより高価なスーパーマーケットに乗り換えざるを得なくなり、経済的に脆弱なグループはさらなる金銭的な負担を強いられることになってしまう。

そうしたことから、オランダのロッテルダムを拠点とするデザイン会社Shift Architecture Urbanismが提唱するのが、新しいローカルマーケットのデザインだ。リスクを最小限に抑えて生鮮食料品の流通を保証するために、局地的な規模で活動するマイクロマーケットを提案している。

Image via Shift architecture urbanism

Image via Shift architecture urbanism

このマーケットは、4×4の計16個の正方形で構成され、その外側に3つの店舗グループ(果物、野菜、乳製品、肉など)が並ぶ。各店舗グループには、注文を受けるための正方形と、客が商品を受け取るための正方形が割り当てられる。各正方形に同時に入ることができるのは1人。マーケットスペース全体に一度に入る人数を6人に限定することで、ソーシャルディスタンスを維持しつつ、客の移動を可能にする。マーケットには入り口が一つ、出口が二つ設けられ、入り口にこれらのルールが明記される。また、客が短時間で買い物できるよう、店舗には個別の製品ではなくパッケージでの販売が推奨される。

地面にテープを貼り、まわりを一般的な防護柵で囲うだけで実現できるので、世界中のどこでもこのローカルマーケットの導入が可能だ。Shiftはさらに、大規模なマーケットを都市全体に広がる小さなローカルマーケットに分散させる必要があると提案している。また、人の集中を減らすため、営業日を限定せず、少なくとも週5日以上営業すべきとしている。

経済的に困難を抱える家庭や個人に対する金銭面や食料の不足への圧力を軽減するために考案されたマイクロマーケットのデザインは、食品市場の販売者とそれに関わる全てのサプライチェーンのビジネスを維持し、自己隔離している住民に安全な方法で新鮮な食品を提供するのに役立つ。

日本でも一時期、人との接触を避けるため、一部の都市ではスーパーマーケットでの入場制限などの特別措置が検討された。現在は感染拡大状況が落ち着きつつあるが、今後のリスクも踏まえ、新しい買い物の形は一考の余地があるだろう。また、今後感染拡大が危惧されるアフリカなどの地域においては、有効な感染拡大防止策になっていく可能性がある。Shiftによるこのシンプルなローカルマーケット設計が世界をどのように救っていくか、今後に期待したい。

【参照サイト】Hyperlocal Micromarkets in shutdown realities(Shift Architecture Urbanism)

#ShareTheLightSideに関連する記事の一覧

FacebookTwitter