「エシカル消費」という言葉を知っていますか? エシカル消費とは、人や社会、環境に配慮した消費のことで、誰にでもできる社会貢献のアクションとして、注目されています。
本特集では前回(全9回)の続編として、約6カ月にわたりエシカル消費のおすすめ11テーマを解説していきます。第17回は、「一生モノ」について詳しく解説します!
人の一生に寄り添う「一生モノ」の商品とは
みなさんは「一生モノ」を持っていますか?
一生モノは人の一生、つまり数十年間使い続けることができるものを意味します。
デザインや質の良さが際立つ一生モノは、持っているだけで気分が高まる人も多いのではないでしょうか。長く使ううちに思い出が増え、手入れをする度に愛着が増し、自分だけの色や形になる経年変化も楽しみの一つです。
一生モノといえば、ジュエリーやバッグなどが思い浮かぶかもしれませんが、文具や家具、調理器具などにも一生モノの商品があります。また、かつては多くのものが数十年間使える一生モノでした。例えば、今では使い捨ての代名詞になってしまった傘は、江戸時代では壊れた部分だけを取り換え、修理を繰り返して長く大切にされていました。
長く使い続けられるデザインや使い勝手の良さ、丈夫で壊れてもメンテナンスできるなどといった一生モノが持つ特徴は、ものを使い捨てにせず、資源を無駄に使わない点でエシカルです。
さまざまなものが大量につくられ、いつでもどこでも買えるからこそ1つ1つの寿命が短くなってしまいがちな今。もう一度、一生モノの良さを見直してみませんか。
「一生モノ」の商品はなぜエシカル?
では、「一生モノ」を使うことはなぜエシカルなのか考えてみましょう。
(1)資源の節約になる
ものを捨てることは原材料の採掘から生産、製造、そして流通、販売などすべての過程で使用した資源エネルギーを無駄にしてしまうことを意味します。使い捨てられるものの多くは、素材となる資源が何十年もかけて作られているのに対し、あっけないほど一瞬しか使われません。長く使えば使うほど、資源の無駄を減らすことができます。たとえば衣服の場合、通常より1年長く着るだけでCO2排出量を24%削減できると試算されています(*1)。捨てる衣服を減らし、ずっと着続けることで資源を大幅に削減することができるのです。
(2)廃棄物削減につながる
毎年さまざまなトレンドが生まれますが、特に衣服は変化が激しく、「ワンシーズン」しか着られないようなものも多くあります。その結果、2000年から14年間で世界の衣類の生産量が2倍以上の1000億着に増えました。一方、人々が衣服を所有している期間は半分に減り、多くは埋め立てや焼却処分されています。また、フライパンや鍋、包丁といった調理器具も使い捨てがすすんでいます。昔は手入れや修理をしながら使われていたものが、まだ使えそうな状態でごみに出されているのを見ることも少なくありません。安価で手に入るようになったことで、手放しやすくなっている現状があります。一生モノの商品を使えば、こうした廃棄を減らすことができます。
(3)家計にも優しい
一見、一生モノの商品は価格が高く、使い捨てできるものの方が価格は安いので、お得で魅力的に感じるかもしれません。しかし、数十年にわたって安価なものを捨てては新しく買い続けるような生活を繰り返し続けるよりも、長持ちする一生モノをずっと使い続けた方が実は家計に優しいことがあります。
「一生モノ」の商品を選ぶポイント
新たになにかを購入する際に、まずは「長く使えるか」という視点を持つと、ものとの付き合い方が変わるかもしれません。
「一生モノ」の商品を選ぶ際に意識したい、5つのポイントがあります。
(1)耐久性
デザインや機能性がよくても、壊れたり、劣化してしまったりしては使うことができなくなります。素材や質は、長い期間使い続けられるものか確認しましょう。
(2)飽きのこないデザイン
特にファッション商品の場合、気に入ったものであっても、流行が変わると時代遅れに感じてしまうことも。長い間、愛着を持つことができるデザインかを購入する前に見極めましょう。
(3)経年変化を楽しめる素材
例えば、木製のものは使えば使うほどアメ色になり、新品とは違った味わいが楽しめます。時間が経つと汚れや劣化が目立つものもありますが、逆に味わいが生まれ、愛着が湧く変化が生まれるものあれば一生使い続けたくなります。
(4)修理やメンテナンス
長く使っていれば、どうしても壊れることがあります。しかし、壊れても修理ができれば長く愛用できます。最近では、修理サービスを提供している製造元や販売元があります。購入の際には、メンテナンスや修理ができるかどうか、修正サービスがあるかどうかもチェックポイントの一つです。
(5)評判や使い勝手
購入する際にはすでに使っている人に評判を聞いたり調べたりしてみましょう。使い心地や自分が求めているものとのギャップがないかなど、気になる点を事前に確認することをおすすめします。店頭で確認できる場合は実際に見て、長く使えそうかどうかを確かめてから購入する慎重さも大切です。
欧米では、自動車や電子機器など購入した製品をメーカーに通さず、消費者自身で修理できるようにする「修理の権利(Right to repair)」を求める声が高まっています。多くの商品は修理ができない、あるいは修理費用が高いことが多く、その結果、多くの人が新品に買い替えてしまうためです。
フランスでは2021年1月から洗濯機、電動芝刈機、テレビ、パソコン、タブレット、スマートフォンに、製品がどれだけ安価で簡単に修理できるかを示す「修理可能性指数(Indice de réparabilité)」を表示することが必須となりました。これにより消費者は修理のしやすさが、ひと目でわかるようになっています。
「一生モノ」の商品、取り組み
ここでは、一生モノを選ぶポイントの一つである「修理サービス」を提供しながら、商品との一生のお付き合いを提供しているブランドをご紹介します。
直しながら使う そんな「伝統」も次世代に伝える「和える(aeru)」
日本の伝統を次世代につなぐため、赤ちゃんから大人になっても使える食器や衣類を販売している株式会社和える(aeru)は、陶器の金継ぎや漆のお直しサービスを提供しています。小さな頃からこのようなサービスを経験できれば「ものは修理をして大切に使うもの」という習慣が身につきそうですね。
【記事】日本の伝統を次世代につなぐ秘訣は、先人の智慧と現代の感覚を「和える」こと
「モノとの向き合い方を学ぶ」ポップアップショップ“GOOD STUFF”
ものとの向き合い方を提案するポップアップショップ『GOOD STUFF(直訳すると“良い物”)』が2019年5月から6月までマンハッタンにて期間限定でオープンしました。修理の仕方を学べるワークショップの開催と新品・中古品・修理品の販売を行いました。こうした取り組みから、ものと長く付き合うヒントを楽しく見つけられるといいですね。
【記事】一度手にしたなら、長く愛そう。「モノとの向き合い方を学ぶ」ニューヨークのポップアップショップ“GOOD STUFF”
回収したバッグを新製品にリメイク。マザーハウスの循環型ブランド「RINNE」
「途上国から世界に通用するブランドをつくる」を理念にバッグやジュエリーを販売している株式会社マザーハウス。バッグをきれいに使い続けるために必要な「ケア」、経年劣化で発生するほつれや破れの「修理」、そして使われなくなったマザーハウスのレザーバッグの「回収」するサービスを2020年にスタートしました。さらに、回収したバッグから新しい商品に生まれ変わらせたブランドも始まりました。
【記事】回収したバッグを新製品にリメイク。マザーハウスの循環型ブランド「RINNE」
パタゴニア、オンラインで自社製品の修理方法を軽快な語り口で公開
サステナビリティの推進に積極的に取り組むアウトドアメーカーとして知られるパタゴニアでは自分で服などの修理ができる方法をウェブサイトで紹介しています。ジーンズに空いた穴の修復方法、ファスナーの交換方法、さらにはセーターの洗い方まで、ユニークな語り口で実際に試してみたくなります。修理はものを長持ちさせる第一歩。楽しみながらメンテナンスしたいですね。
【記事】パタゴニア、オンラインで自社製品の修理方法を軽快な語り口で公開
エールマーケットの一生モノの商品
最後にエールマーケットから一生大切にできそうな、とっておきの商品をご紹介します。
小さな花が咲いたような可愛らしい編み目。国産の山ぶどうの蔓(つる)を卓越した技術を持つかご作家が丁寧に編み込んでいます。上品で軽やかな印象ながら丈夫さが自慢で、修理サービス(有償)もあるので破損した場合も安心。使えば使うほど手になじむので、自分だけのバッグになりそうですね。
*1「TIME OUT FOR FAST FASHION」, GREENPEACE
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ヤフージャパンが東日本大震災後、東北の商品を揃えてネットで販売を始めた「復興デパートメント」。今は「エールマーケット」と名前を変え、全国の商品を取り扱っています。自然環境や人、地域に優しい社会を応援(エール)する、本当にこだわった商品を販売するモールです。