今や世界中で蔓延し、人命だけでなく経済にも大きな打撃を与えている、新型コロナウイルス感染症(以下、新型コロナ)。感染の拡大を食い止めるために、まず人間同士の接触を減らそうと、各国で外出の禁止や自粛の要請が行われている。
人が出歩かないことから、強い向かい風を受けているのが飲食業界だ。店によっては国の指示により営業ができなくなったり、店を開けても自粛モードにより客足がつかなかったり、と経営が苦しい店舗が多い。
小規模な店舗の場合、1か月間の収入がないだけで経営が破綻することもある。読者の中にも、飲食店を応援するために食べに行きたいが、「今最優先すべきは自分が外に出ないことである」と、もどかしさを感じている人も多いのではないだろうか?そんな中、新型コロナで苦境に立つ飲食店を救うプログラムがニューヨークでスタートした。
「ダイニング・ボンド・イニシアチブ(DINING BONDS INITIATIVE)」は、顧客が飲食料を事前に支払うことができる飲食店向けの債券プログラムで、日本を含む世界中で使用可能だ。
このプログラムの狙いは、食事をする権利を先に販売することで、飲食店が新型コロナで集客の難しい期間もキャッシュフローをしのぐことである。また、顧客側のメリットとして食事料のディスカウトを行っている店舗も多く、あるレストランでは100ドル分の食事券を75ドルの債券として購入できる。
現在閉鎖を余儀なくされている店舗でも導入が可能で、使用条件は店舗によって設定することが可能だ。直近30日間の収入を安定させ、経営破綻を防ぐためにこのプログラムを導入している店が多く、債券の使用は購入後30〜60日が目安であることが多い。
プログラムの仕組みはシンプルで、サイトのマップ上で飲食店を探し、直接店舗へ連絡するだけ。サイトへの登録料は全くかからず、ボンドの発行にも手数料はないので、サイト利用へのハードルはとても低い。
このプログラムは、飲食店と顧客の間で助け合いの手を差し伸べ合うきっかけを作ったという点で、その存在の意義は非常に大きい。経営の苦しい飲食店はサイトに登録することでその存在をアピールすることができ、飲食店をサポートしたいと考える顧客とのマッチングができる。また、応援したい飲食店がある人はこのサイトの存在を店に伝えることで、資金提供の道を開くことができる。
人類が新型コロナという困難で引き裂かれそうになった今、まさに「ボンド」(絆)で助け合いの輪を広げる「ダイニング・ボンド・イニシアチブ」。現在はまだ日本語での対応は始まっていないが、日本でもサイトの使用は可能だ。ぜひ活用してほしい。
【参照サイト】DINING BONDS INITIATIVE