社会的距離を保ち、地域経済も支える。NZの「バーチャル」なショッピングモール

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新型コロナウイルスの感染の拡大が落ち着いてきた中、世界中で慎重な緩和政策が取られ始め、徐々に経済活動を元へ戻す方法が模索されている。感染者数を早い段階から着実に食い止め、5月半ばからは早くも国内で感染者が出ない日を記録しているニュージーランドでは、人々のソーシャル・ディスタンスを保ちながらも、地方経済を再び活性化するアイデアが注目を集めている。

ファカタネ・バーチャルモールは、ニュージーランド国内で初めての試みとなる「バーチャルショッピングモール」だ。同国のファカタネ市の経済活性化を進めてきた非営利団体EPIC Whakataneが主宰し、2020年5月4日からサービスを開始した。オンラインで欲しい商品と行きたいお店の両方から品物を簡単に探すことができ、一つのカートで複数のお店から同時に買い物ができる。飲食店のデリバリー注文から、洋服や家具のショッピングまでを一つのプラットフォームで行えるのだ。

ファカタネ・バーチャルモール

出ているのは小売店だけにとどまらず、エステやフィットネス、自転車の修理店、法律事務所など多ジャンルのサービスが顔を揃える。サービスの提供はリアルの場で行われるが、本バーチャルモールが取引の窓口となることで、利用者にとっては外出の回数を減らし、感染リスクを下げられる利点がある。

また、個別のページにリンクして閲覧できる店も多く、大手ECサイトに比べると、店ごとの雰囲気の違いを味わえる点が、実際にショッピングモールで買い物する体験に近い。モール全体の一斉セールやギフト券など、ショッピングモールらしい仕掛けもあり、買い物自体を楽しめる工夫がなされている。

また、単独で集客することが困難となった事業者にとっては、本バーチャルモールの仕組みは救いとなっている。事業者は、初めの登録料(99ドル+消費税)をEPICに支払えば、実店舗ようなテナント料はそれ以降支払う必要がなく、売上をすべて確保することができるのだ。登録は、モールの「お店を開く」ボタンを押して情報を入力するだけ、とハードルが低い。

EPICはあくまで媒体を提供するに留まり、配送など一連の取引は各事業者が顧客と個別に行う仕組みだが、それでもファカタネ・バーチャルモールに出店することで地域の利用者に見つけてもらいやすく集客効果は大きい。特に、独自のオンライン販売サイトを持っていなかったローカルビジネスは、新型コロナ感染拡大の当初、売上減で窮地に追い込まれたというが、EPICの支援により最悪の事態を免れた。

実店舗の位置はバラバラのローカルビジネスをオンラインプラットフォーム上でまとめ上げ、地域の消費者にも事業者にも使いやすい「バーチャルショッピングモール」。サービス開始からわずか1時間で300人以上の“来店”があり、初めのセールは2時間で終了したという。開店から約1ヶ月経った今も大きな役割を果たしており、見事に地域経済を支えている。

新型コロナ感染の第ニ波を警戒しつつも経済を立て直していく段階で、ビジネスや地域経済支援にはコロナ以前と違ったあり方が求められている。世界中でたくさんの試行錯誤が行われている中、ファカタネ市のバーチャルモールの形式は、一つの解決策を示しているといえるだろう。

【公式サイト】Whakatane virtual mall

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