2019年11月。IDEAS FOR GOOD編集部は、本格的な冬の始まりに差しかかるヨーロッパを訪れました!今回の取材ツアーのテーマは、「サーキュラーエコノミー」。
サーキュラーエコノミーは、日本語では「循環型経済」と訳されます。一言で言えば、従来の「Take(取って)」「Make(作って)」「Waste(捨てる)」というリニア(直線)型経済モデルにおいて廃棄されていたものを価値ある資源として捉え直し、再び生産のプロセスに戻すことで資源を循環させ、環境負荷を増やすことなく経済成長を実現しようという考え方(デカップリング)です。
また、そもそも廃棄自体が出ないような製品デザイン(サーキュラーデザイン)や、回収を前提とするサブスクリプションのビジネスモデルなどもサーキュラーエコノミーに含まれ、サプライチェーン全体を循環させるという意味で「Close the Loop(ループを閉じる)」が一つの合言葉となっています。
サーキュラーエコノミーは一時的なトレンドではなく、大量生産・大量消費型の経済モデルに対する限界が社会や環境のあらゆる面で露呈するなかで新たに起こりつつある、経済のありかたそのものの根本的なシフトだと言えます。
このサーキュラーエコノミーを世界で主導しているのが欧州です。EUは、SDGsやパリ合意など世界の大きな転換点となった2015年の12月に「サーキュラーエコノミーパッケージ」を採択し、EU全体の競争戦略や雇用創出、持続可能な成長に向けた具体的な政策としてサーキュラーエコノミーを軸に据えることを発表しました。
また、EUが2019年12月11日に公表した気候変動対策「欧州グリーンディール」においても、「2050年までに温室効果ガス排出を実質ゼロにする」という大胆な目標とともに、サーキュラーエコノミーは重要な柱の一つに位置付けられています。
いま、欧州で起こっていること。
このような流れの中で、いま欧州の主要都市では何が起こっているのでしょうか。今回IDEAS FOR GOODでは、欧州の中でも特にサーキュラーエコノミー関連の先進事例が多いアムステルダム、ヘルシンキ、ロンドン、パリ、ベルリン、オスロの6都市を訪れました。
アムステルダムは2050年までに100%循環型都市になるという野心的な目標を掲げており、フィンランドは2016~2025年までの世界初となるサーキュラーロードマップを設定しています。ロンドンやパリも同様のロードマップを設定しており、これらの都市では行政や企業、スタートアップなどが近い距離で連携しながら循環型の経済モデルへとシフトを進めているのです。
現地で出会った、新たなキーワードたち
今回の取材ツアーでは、サーキュラーエコノミーに関わるスタートアップや大企業、NPOやプロジェクトなど70社以上を訪れました。そこで出会ったのは、ようやく「サーキュラーエコノミー」という言葉が浸透し始めた日本の一歩、二歩先を行く議論の数々です。
経済概念ではなく、具体的な測定対象としての「サーキュラリティ(循環性)」、環境負荷だけではなく、新たな経済モデルへの移行をいかにインクルーシブに実現するかという「人」の視点、サーキュラーを超えた「リジェネレイティブ」という在り方、サーキュラーエコノミーが抱える概念的なジレンマ、「Sustainable Growth(持続可能な成長)」に対する「De Growth(脱成長)」や「Thriving(繁栄する)」という考え方など、数を挙げればきりがありません。
今回の特集では、一つ一つの事例を丁寧に取り上げながら、サーキュラーエコノミーという新たな潮流のなかで、様々な業界にどのような根本的な変化が起ころうとしているのか、その中でどのようなビジネスチャンスが生まれているのか、そしてなぜそれが起こっているのか、読者の皆様の頭の中で「点」の背後にある「線」が浮かび上がるような特集に挑戦したいと思います。
※上記は取材先企業・団体の一部です。
私たちが目指すべき、日本型の循環型経済とは?
一方で、欧州の最前線の取り組みに触れながら、それらを「鏡」として日本の歴史や文化を捉え直すことで、逆に日本ならではの強みや課題も見えてきました。特集の最後には、これから日本が目指していくべき、日本ならではのサーキュラーエコノミーについても、読者の皆様と一緒に模索していきたいと思います。
日本におけるサーキュラーエコノミーへの移行はまだ始まったばかりですが、まだその言葉や概念に出会っていないだけで、実は優れたサーキュラーエコノミーの実践だと言える事例は国内にも数多くあります。
これまで見過ごされてきたものに価値を見出すためには、常に新たな視点が必要であり、それがサーキュラーエコノミーを実現するうえでもっとも基本的なスタンスでもあります。欧州の先進事例という眼鏡を持って日本を見つめ直すことで、私たちが持つ可能性についても再発見を試みたいと思います。
今回は数か月にわたる長期の特集となりますが、ぜひ編集部と一緒に欧州を旅する気持ちで、楽しみながら読んでいただければ嬉しいです。
※IDEAS FOR GOOD編集部では、取材に伴う飛行機利用によるCO2排出について、100%カーボンオフセットをしています。
欧州サーキュラーエコノミー特集に関連する記事の一覧
【2/17】欧州サーキュラーエコノミー取材報告会イベントを開催!
2月17日、今回の欧州サーキュラーエコノミー特集の開催を記念した取材報告会イベント「欧州の最先端サーキュラーエコノミー事例をもとに考える、日本と循環型経済のこれから」を開催します!当日はIDEAS FOR GOOD編集部に加え、実際に日本でサーキュラーエコノミーに取り組んでいる専門家3名をお呼びし、欧州の事例をもとに日本のサーキュラーエコノミーについて考える内容となっています。先着80名なりますので、興味がある方はぜひお早めにお申し込みください。
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