新型コロナウイルス感染症(以下、新型コロナ)の感染予防・拡散防止のため、臨時休館をしている美術館は大打撃を受けている。アメリカ中の美術館でも、1日に少なくとも3300万ドル(約35億円)の損失が出ていると予測されている。ニューヨークのメトロポリタン美術館などは3月から、美術館や文化施設を救済するために40億ドル(約4300億円)を捻出するよう、米国議会に求めている。
シビアな状況だが、その中でも外出できない人たちに元気を与え、芸術の素晴らしさを伝えようとする取り組みが始まっている。ロサンゼルスのJ・ポール・ゲティ美術館は3月26日に「好きな芸術作品を、家の周りにあるモノで再現してみよう」という遊び心のあるキャンペーンをツイッター、フェイスブック、インスタグラムで行った。その結果、何千もの再現作品が投稿されているという。
ほんの一部の作品を紹介すると、たとえばルノワールによる「ブージヴァルのダンス」を再現したもの。日差しを浴びながら踊る男女の親しさが伝わってきて、とても微笑ましい。他に、日本でも有名なフェルメールの「真珠の耳飾りの少女」、クリムトの「母と子」といった作品が再現されている。
— I_Speakof_Art (@I_Speakof_Art) March 29, 2020
Man with pearl earring pic.twitter.com/cyQfyLPUkI
— Sally Bain (@sallywisebain) March 29, 2020
Here's our recreation of Klimt's Mother and Child. Thanks for the fun Sunday morning art project! #klimt #motherandchild #recreateart #SocialDistancing pic.twitter.com/zWPNaCjxwR
— Stephanie Layne (@AlwaysLayne) March 29, 2020
これらの作品、もちろん細部を見れば異なる点は多いが、大枠で捉えたときの印象が非常に似ていて驚く。そして大変なときでも尽きることのない、人々の創造力とほんの少しのユーモアに励まされる。同美術館は、素敵な作品を作るコツとして「表情やポーズにこだわること」「光の方向に注意を払うこと」「行き詰まったときは、色より形に注目すること」などを挙げている。
たとえばレオナルド・ダ・ヴィンチの「最後の晩餐」を再現した作品では、イエスと12使徒のポーズを忠実に真似ることで、非常に似た印象を与えることに成功している。また、彫像の「サモトラケのニケ」を再現したケースでは、最小限のモノで大まかな形を似せている。とても抽象的な捉え方だ。
We accept your challenge @GettyMuseum! Here are some great art re-creation examples from my current #APArtHistory students! pic.twitter.com/HdCJAIyLZ5
— Eric Rice (@riceskyview) March 29, 2020
My father (who wanted to abide by the three-item guideline) has re-created Winged Victory!@ArtDecider pic.twitter.com/EPNbT2Otbc
— Wendy Zuckerman (@wsz111) March 29, 2020
今の危機に際して、芸術が担える役割は何だろうか。それはたとえば、SNS上でとげとげしいことを言う人たち、居丈高に知識を披露して談義する人たち、不安で冷静さを失っている人たちの心を慰め、心をひとつにすることだ。
閉じこもりがちな生活で新しいことを始めるのは、健やかに過ごすコツでもある。これを機に読書、音楽、写真、絵など、何か新しいことを始めてみてはどうだろうか。
【参照サイト】Getty Artworks Recreated with Household Items by Creative Geniuses the World Over