スウェーデンで今夏、一風変わったレストランがオープンする。ストックホルムから車で40分ほど行ったハーリンゲ自然保護区の中に作られたレストラン「Nowhere」は、新型コロナウイルスの感染対策で重要視されるソーシャル・ディスタンス(社会的距離)を次なる次元に引き上げる、という独自のコンセプトに基づき、現地のワイナリーOddbirdがプロデュースしたものだ。
森林や草原、水の上。美しい自然に囲まれた屋外の6つのテーブルは、それぞれが十分に離れているだけではなく、ゲスト自身も周囲の人々を気にせずに、ありのままでいられる空間づくりがされている。
すべてのテーブルは、デンマークのインテリアデザイン・デュオのThe Normansが、リサイクルされた素材と家具を使用して製作したもの。椅子の背もたれは、まるで孔雀の翼のように広がっており、スペースが限られた都心のレストランでは、あまり見ることのない形をしている。
食事には、Oddbirdで醸造されたノンアルコール・ワインも華を添える。オープンは2020年8月20日予定で、現在オンラインで予約も受け付けているそうだ。Oddbirdは当レストランについて、次のように説明している。
Nowhereは、完璧な場所です。権威も名声もないし、あなたが誰かも構いません。差別もなく、だからといってインクルーシブでもありません。特定の誰かを忌み嫌ったりすることもありません。Nowhereは、目的地ではないのです。あなたにとっては、通勤中に車で通りすぎてしまうような森でしょう。ここは、あらゆるヒトとモノに“最上の無関心”を貫きます。意見も議論もありません。Nowhereこそ、私たちが今渇望しているものです。それが、本レストランをつくった理由です。
この詩のような紹介文は、レストランの名前「Nowhere」とその英語の意味「どこでもない場所」を引っ掛けたコピーなのだが、まるで禅の教えについて説いているようだ。Oddbirdはこのレストランが、シンプルなものに魔法を見出す機会になるとしている。
美しい夏のスウェーデンの森の中での食事は、この上ない体験だ。ヒトの過密が新型コロナの感染を広げ、現在も世界中で対処法が模索されている中、このレストランは新たな世界を生き抜くためのヒントになるだろう。
【参照サイト】Oddbird
(※画像提供:Oddbird)