一度は泊まりたい。エコポリシーで選ぶヨーロッパのホテル【欧州通信#16】

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今までヨーロッパは行政およびビジネスの分野で「サステナビリティ」「サーキュラーエコノミー」の実践を目指し、さまざまなユニークな取り組みを生み出してきた。「ハーチ欧州」はそんな欧州の最先端の情報を居住者の視点から発信し、日本で暮らす皆さんとともにこれからのサステナビリティの可能性について模索することを目的として活動する。

ハーチ欧州メンバーによる「欧州通信」では、メンバーが欧州の食やファッション、まちづくりなどのさまざまなテーマについてサステナビリティの視点からお届け。現地で話題になっているトピックや、住んでいるからこそわかる現地のリアルを発信していく。

前回は、「サステナブルな家具」をテーマに、ヨーロッパ各国の家具を長く使うための方法を紹介した。今回のテーマは「サステナブルなホテル」。いま現地で話題になっている環境負荷の小さなホテルとは?各国在住のメンバーが紹介していく。

【オランダ】アムステルダム中心地にある緑のオアシス「ホテル・ジャカルタ」

アムステルダムのホテル・ジャカルタは、サーキュラーエコノミーとホスピタリティが融合する、オランダで最もサステナブルなホテルの一つ。水辺に佇むホテルに一歩足を踏み入れれば、そこには美しい庭園が広がり、木の温もりが息づくオアシスのような空間が広がる。実際、ホテル建築に使われた建材の約9割は木材だという。

雨水を活用して送るため館内の木々は青々としげり、外を流れる川の水を利用した蓄熱・蓄冷システムで館内は快適に保たれ、ホテルのファサードの太陽パネルで生み出されるエネルギーを活用している。建物全体がエナジーニュートラルだ。

Image via Hotel Jakarta Amsterdam

この建物がある場所は、オランダ大航海時代にインドネシア拠点の「東インド会社」に向けて船が出港した、ゼーブルグ地区。オランダとインドネシアという二つの世界をつなぐ場所だったため、その歴史から由来して「ホテル・ジャカルタ」と名付けられている。地元住民を頻繁に招いたり、興味がある人に向け館内サステナビリティ・ツアーを実施したりするなど、地域コミュニティにもまっすぐ向き合うホテル・ジャカルタをぜひ訪れてみてほしい。

【ドイツ】接着剤も鉄くぎも使わない。木造の「ビオホテル・マトリヒュス」

美しい山々に囲まれたドイツ南部アルゴイ地方にある「Biohotel Mattlihüs(ビオホテル・マトリヒュス)」は、ドイツで初めて「Holz100」の認証を取ったホテルだ。Holz100は木材建設のThoma(トーマ)が開発した木造住宅建設システムで、地元で伐採された持続可能な木を100%使用。

建設の際には、接着剤・金属・有毒物質を使用せず木ダボ(※木材同士を継ぎ合わせる際に使用する小さな木の棒)のみで接合するため、解体時には使用した木をリユース・リサイクルできる。建設資材に関しては「Cradle to Cradle認証」のゴールドも取得している。

 

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ビオホテル・マトリヒュスは、その名の通りビオホテルでもある。ビオホテルは、食・コスメ・エネルギーの3分野においてオーガニック基準を満たすことをビオホテル協会(本拠オーストリア)が認証したホテルで、現在ヨーロッパで70件のホテルが登録されている。

宿泊客の健康を促進するべく、いくつかのビオホテルは療養・スパ・アーユルヴェーダ・アレルギー対策・エレクトロスモッグ(※パソコン・スマホ・家電などが発する電磁波の霧)対策などに力を入れている。ビオホテル・マトリヒュスはエレクトロスモッグへの対策をしているホテルであり、公共スペースのみのWi-Fiサービス提供をするほか、部屋での主電源遮断器を使って電磁波を抑制している。木のぬくもりを感じながら、ここで心身ともにリラックスした休暇を過ごしてみてはいかがだろうか。

【オーストリア】部屋でSDGsが学べる?ウィーンの「ブティックホテル・シュタットハーレ」

スタイリッシュなブティックホテル・シュタットハーレは、サステナビリティに関してオーストリアのホテル業界を牽引する存在だ。経営戦略に再生可能エネルギーの使用や水の再利用、オーガニック製品の使用など、環境負荷を下げるための幅広い取り組みを実践している。

その一環として、国連によるSDGsの17目標をテーマとしてホテル内の17部屋を改装した。遊び心いっぱいの家具や装飾でそれぞれのテーマを視覚的に訴えかける。例えばSDGsの目標14は「海の豊かさを守ろう」だが、この目標をテーマとした部屋では、海洋から収集されたごみをアップサイクルしたインテリアが置かれ、海洋汚染についてオブジェを通じて表現している。

Photo by Yukari

ホテルのロケーションはウィーン西駅近くと利便性が高い一方で、ホテル内はとても静か。これから夏にかけては、緑溢れる中庭のテラスで朝食が楽しめる。ルーフトップにはラベンダーガーデンがあり、季節に咲き乱れる花々は旅の疲れを癒してくれる。ルーフでは自家製の蜂蜜を作っており、朝食で味わうこともできる。SDGsのテーマの部屋は17室のみなので、泊まりたい目標番号があればリクエストも可能だ。

【エストニア】国立公園内の歴史的ホテル「ヴィヒュラ マナーカントリークラブ&スパ」

グリーン・キー・ラベル」は1994年にデンマークで設立され、現在世界60カ国が参加している国際的な認証制度だ。エストニアにおいても、20か所以上の宿泊施設がこの認証を取得しているが、その一つがVihula Manor Country Club & Spa(ヴィヒュラ マナーカントリークラブ&スパ)。この施設は、16世紀に建てられたヴィヒュラ邸を中心に展開しており、”Historic Hotel of Europe 2020”(ヨーロッパの歴史的ホテル2020)にも選ばれている。

このホテルは、なんと首都タリンから車で約1時間の距離にあるラヘマー国立公園内に位置している。施設内には、100%天然素材を使用したエコスパやエコファーム、水車、風車、ウォッカ博物館などが併設。

レストランでは、エコファームや周辺の農場から調達した食材を多く使用した料理を提供する。4種類のプライベートサウナが併設されているのも、エストニアならでは。ペットの宿泊も可能で、エストニアの自然を体験するには最適なサステナブルなホテルだ。

編集後記

いまヨーロッパの多くの国では、人々がホテルを選ぶ際に「サステナビリティ」という項目が占める重要性が大きくなっているように感じる。宿泊予約のサイトでは、そのホテルが使い捨てアメニティやエネルギーの使用を控えているかなどが一目でわかる、サステナビリティの認証がつけられることも増えてきた。

旅の楽しい思い出が、環境に負荷をかけないために。夏の旅行を検討されている方は、ぜひあなたにぴったりなサステナブル・ホテルを見つけてみてほしい。

※エストニアVihula Manor Country Club & Spaで使用していた写真のクレジットに誤りがありました。配慮が足りなかったことをお詫びするとともに、訂正させていただきます。(2023年6月6日)

【参照サイト】Hotel Jakarta Amsterdam
【参照サイト】Biohotel Mattlihüs
【参照サイト】Boutiquehotel Stadthalle
【参照サイト】Vihula Manor Country Club & Spa
【関連記事】遊びゴコロたっぷりにSDGsを伝えるウィーンのホテル。経営に込められた想いに迫る
【関連記事】【2022年最新版】日本全国のエシカル・サステナブルなホテルまとめ

Written by Kozue Nishizaki, Ryoko Krueger, Yukari, Misa Torii
Presented by ハーチ欧州

ハーチ欧州とは?

ハーチ欧州は、2021年に設立された欧州在住メンバーによる事業組織。イギリス・ロンドン、フランス・パリ、オランダ・アムステルダム、ドイツ・ハイデルベルク、オーストリア・ウィーンを主な拠点としています。ハーチ欧州では、欧州の最先端の情報を居住者の視点から発信し、これからのサステナビリティの可能性について模索することを目的としています。また同時に日本の知見を欧州へ発信し、サステナビリティの文脈で、欧州と日本をつなぐ役割を果たしていきます。

事業内容・詳細はこちら:https://harch.jp/company/harch-europe
お問い合わせはこちら:https://harch.jp/contact

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