新型コロナウイルス感染症(以下、新型コロナ)の蔓延により、食品卸業や外食業界は甚大な影響を受けている。英国でもこの問題はより深刻であり、外食に卸す予定だった食材や調理予定だった在庫が行き場を失っている。学校休校のあおりを受けた給食業界も同様だ。一方、ロックダウン(都市封鎖)の影響で、スーパーなど小売業界の棚が空っぽで食品が手に入りにくい状態が続いている。
そんな中、英国のITスタートアップ「FruPro」は、この危機に対応しようと、食品ロスの無償オンラインプラットフォームを立ち上げた。余った生鮮食品を在庫に持つ食品卸や外食・給食などの売り手と、それらを必要としている小売などの買い手をつなぐサービスを提供している。
FruProはもともと取引発生ベースで手数料を徴収するビジネスモデルを計画していたが、新型コロナの蔓延により、ダメージを受ける業界を支援する目的で無償版を発表。正式版は、グローバルな取引もできるバージョンとして数か月後にリリースする予定としている。
FruProは現在、食品の買い手として、大手スーパーよりも脆弱な小規模小売店や慈善団体へのサービスに力を入れているという。フードバンクに食品在庫を提供する仕組みも開発中だ。サービスを開始してから、既に約180トンもの取引が行われており、業界から多くの反響があるという。例えば、イギリスの外食向け大手食品卸のRaynoldsは、このプラットフォームに当初から参加し、恩恵を受けている。
FruProの創設者ウィリアム・ヒル氏はこのように語る。「私たちは、国全体に食料が行き渡るようにすることだけを考えてスタートしました。また、大きな損失を被る産業や社会的距離政策によるサプライチェーンの分断を緩和したいと考えています。」食品ロスについては、「いかなる食品も廃棄されるべきではありません。」と断言する。
食品ロスに関わるプラットフォームやサービスの提供が世界中で加速しているが、FruProは、「食品卸業やフードサービスと小売業界への支援」「無償」「食品ロス対策」という3つの大きな目的が特徴である。食品業界でも今回の新型コロナの危機を通じて、IDEAS FOR GOODでも紹介した先払いできる債券「ダイニング・ボンド・イニシアティブ」や休校で余った給食をお取り寄せできる「うまいもんドットコム」などのような、「支援」を軸とした動きが起こっている。
今は「新型コロナ蔓延への対策」という緊急的な側面もあるが、こうしたサービスに実は本質的なニーズがあることが明らかになり、新しいビジネスチャンスとなるかもしれない。ポストコロナの世界を中長期的に形作っていく可能性を秘めている。
【参照サイト】FRUPRO公式ホームページ
【参照サイト】FRUPRO無償版
【参照サイト】Coronavirus case studies: How FruPro is fighting food waste