【2022年最新版】Vegan(ヴィーガン)に対応するレストラン・食品・事例まとめ
欧米を中心に世界で急激に増えているVegan(ヴィーガン・ビーガン)。肉食が与える環境負荷や食糧危機の問題、動物愛護の観点から、ヴィーガン生活に切り替える人が近年増えている。例えば、イギリスでは2018年時点でヴィーガン人口が60万人を越え、ヴィーガン料理の注文数は2016年の388%まで増加した(The Vegan Societyより)。
そうした傾向に対応し、世界ではさまざまなヴィーガン対応の商品やサービスが生まれている。いま、世界でもっとも注目されている食・生活のスタイルの一つだ。
ヴィーガン(ビーガン)とは?
ヴィーガン(ビーガン)は、肉・魚介類、卵・乳製品などの動物性食品、蜂蜜などの動物由来の食品を食べない人のこと。肉・魚介類を避けるベジタリアンの中でも特に厳格なスタイルだが、最近では新しいスタイルとして、無理のない範囲でヴィーガンの生活様式を取り入れるパートタイム・ヴィーガンも出てきている。近年増えているエシカル・ヴィーガンは、革製品なども含めたすべての動物由来の製品を排除するとともに、動物実験が行われた製品も避ける。
ヴィーガン(ビーガン)の健康
ヴィーガン食は健康的かそうでないかという論争がよく行われている。
ヴィーガン食は、血圧とコレステロールの低下、心臓病、2型糖尿病、一部の癌の発生率の低下につながると言われている。一方で、タンパク質やカルシウム等が不足しがちで、かえって不健康ではないかという指摘もされる。ただし、多くの栄養素はヴィーガン食でもまかなうことができるので、栄養について学び、考慮した食事を摂ることで、健康的なヴィーガン生活を送ることが可能だ。しかしビタミンB12とビタミンDについては植物性食品での摂取は難しいとされ、サプリメントで補充するヴィーガンもいる。
ヴィーガンの選択肢を増やすため、様々な業界でヴィーガン向けの商品やサービスが生まれている。ここでは食品メーカーや外食産業を中心に、ヴィーガンをサポートする各業界のアイデアや、最近の新たな動きを見ていこう。
世界のヴィーガン(ビーガン)対応事例
食品×ヴィーガン
食品メーカーや食材販売店からは、ヴィーガン対応の肉・魚・卵の代替品が生まれている。
01. 肉屋が販売する代替肉
肉の消費を減らした方が環境にとってよいと言われても、肉を食べるのが好きな人にとって、肉食を日常的に避けることは難しいかもしれない。
そのことを一番知っている肉屋が販売するのが、この植物由来の代替肉だ。肉の美味しさを知りぬく肉屋が選んだ、味や触感を本物に似せた代替肉。本来肉を売るはずの肉屋が肉の消費量を減らすのを目指す、先進的な取り組みだ。
- 国名:イギリス
- 団体(企業)名:Thurston Butchers、THIS
02. 栄養豊富な植物由来のツナ
魚需要の増加に伴い、水産資源の枯渇が問題になっている。世界自然保護基金(WWF)の調査によると、マグロやカツオなどのサバ科が1970年と比べて約74%も減少したというのだ。
アメリカのスタートアップ企業が、魚を使わないツナを販売し始めた。様々な種類の豆や、海藻から抽出したDHAを混ぜることで、栄養価が高く、味も見た目も色も本物と大差ないツナに仕上がっている。
- 国名:アメリカ
- 団体(企業)名:GOOD CATCH
03. 遺伝子組み換えフリーの緑豆で作る代替卵
米サンフランシスコのスタートアップ企業が開発したのは、遺伝子組み換えでない緑豆を原料としたヴィーガン卵だ。通常の鶏卵と同じだけのタンパク質を含んでいるが、コレステロール含有がゼロであるという。液体状になっていて、スクランブルエッグ、パンケーキやオムレツに使える。ヴィーガンだけでなく、卵アレルギーを持っている人にとっても嬉しい商品だ。
- 国名:アメリカ
- 団体(企業)名:JUST
04. サッカークラブが作った、学校給食用のヴィーガン食品会社
イギリスのサッカークラブが立ち上げたDevil’s Kitchenは、イギリス全土の学校給食や大学の学生食堂にヴィーガン食品を提供する会社だ。野菜ボールやハンバーガーを含め、すべての食事が100%植物性の素材でできている。宗教上の理由で肉を食べない生徒やアレルギーを持つ生徒も、一緒に食事を楽しむことができ、多様性の面でも素晴らしい取り組みだ。
- 国名:イギリス
- 団体(企業)名:Forest Green Rovers、Devil’s Kitchen
外食×ヴィーガン
提供されるすべての食事がヴィーガンである店、ヴィーガン対応のハンバーガーを提供する店を集めた。
05. ヴィーガンの食事だけを提供する、期間限定エシカルパブ
3ヶ月の期間限定でロンドンにオープンしたのは、世界一エシカルなパブ。提供される食事はすべてヴィーガンだ。気張らなくても、楽しくビールを飲んだりおつまみを食べたりするだけで、ヴィーガンの食生活ができ、社会貢献もできるというアイデアだ。
- 国名:イギリス
- 団体(企業):グリーン・ビック
06. アメリカの学生食堂が提供する、すべてヴィーガンの食事
アメリカ・カリフォルニア州にある、3歳~高校3年生の生徒が通う私立学校「MUSE School」の学生食堂が提供するのは、すべてヴィーガンの食事だ。生徒や親の理解を得るため、18か月の期間をかけて、ヴィーガンの食事のメリットを伝えながらメニューを切り替えていったのだという。
- 国名:アメリカ
- 団体(企業)名:MUSE Schoolの学生食堂
07. 肉愛好家をターゲットにした、米バーガーキングの100%植物性のハンバーガー
米バーガーキングがシリコンバレーの新興企業と共同開発したのは、植物原料のハンバーガー。この商品はヴィーガンのためというよりも、環境意識の高い肉好きを満足させるために作られたのだという。風味、感触、シズル感が植物で再現されている。
- 国名:アメリカ
- 団体(企業)名:バーガーキング、Impossible Foods
靴×ヴィーガン
ヴィーガンは食生活だけではない。動物の皮を使って作られることの多い靴において、ヴィーガン対応の商品がヨーロッパから誕生している。
08. コーヒーから作られた100%ヴィーガンな靴
ドイツの老舗靴ブランドが作った100%ヴィーガンのスニーカー。表面の50%はリサイクルした豆かす、コーヒー豆、コーヒーの木から製造されており、コーヒーのほのかな香りが漂う。その他の部分も徹底的に天然素材、アニマルフリーにこだわっている。
- 国名:ドイツ
- 団体(企業)名:nat-2™️(ナットツー)
09. キノコ菌からできたヴィーガンなレザースニーカー
上と同じnat-2™️が作ったのは、なんとキノコ菌からできたヴィーガンスニーカー。キノコ菌が作り出すマッシュルームレザーでできている。その他の部分ももちろんアニマルフリーで、防腐性かつ抗菌性があるため長持ちが期待できる。
- 国名:ドイツ
- 団体(企業)名:nat-2™️(ナットツー)
10. 使用済みエアバッグやパイナップルで作るヴィーガンな靴
ポルトガルの靴ブランドnaeが作るのは、動物性の素材や環境に害を与えるような素材を使わないヴィーガンの靴。リサイクルしたエアバッグ、タイヤ、ペットボトル、すでに消費されたパイナップルからとれる葉を素材とし、デザインも良く品質の高い靴を生み出している。
- 国名:ポルトガル
- 団体(企業)名:nae
その他の産業×ヴィーガン
ホテルや電力会社から出てきた、画期的なヴィーガンのサービスを紹介しよう。
11. 世界初のヴィーガンなスイートルーム
世界的大手ヒルトングループがイギリスで誕生させたのが、ヴィーガンのスイートルームだ。部屋のカードキーやリネン、床、カーペット、アメニティ、文房具、掃除用具にいたるまで、すべて植物ベースの素材でできたものが提供される。
- 国名:イギリス
- 団体(企業)名:Hilton London Bankside、Bompas&Parr
12. 電力供給もヴィーガンで
二酸化炭素や窒素酸化物などをほとんど排出しない「グリーンエネルギー」だが、実際には動物由来のものがグリーンエネルギーとして提供されることも多く、問題となっていた。
そこで、イギリスの電力会社Ecotricityが始めたのが世界初のヴィーガンでの電力供給。身のまわりのすべてをできるだけヴィーガンにしたい人にとって、素晴らしい選択肢となっている。
- 国名:イギリス
- 団体(企業)名:Ecotricity
ヴィーガンを支援するWebサイト・アプリ
新しくヴィーガンになろうとする人や、ヴィーガンの日々の暮らしを楽にするWebサイトやアプリを集めた。
13. ヴィーガンをサポートするコミュニティサイト
2014年にイギリスで生まれた、ヴィーガンをサポートするコミュニティサイト「Veganuary」。2018年には、ヴィーガン人口の増加に伴い、サイトの登録者が急速に増えた。ヴィーガンのレシピ、食品ラベルの見方や専門家のアドバイスなどのお役立ち情報が多数、掲載されている。
- 国名:イギリス
- 団体(企業)名:Veganuary
14. ブラウザ拡張機能で動物由来の製品をフィルタリング
The Vegan Filterは、オンラインショッピングサイトで動物性の素材を含む商品をフィルタリングする、無料のブラウザ拡張機能だ。この拡張機能をChromeブラウザに追加して機能をオンにすれば、指定のサイトでヴィーガン向けの商品のみが自動的に表示される。
- 国名:イギリス
- 団体(企業)名:Xarista
15. ヴィーガンの食生活もサポートしてくれるアプリ
ヴィーガン生活をしていて気になるのが、タンパク質などの栄養がきちんと取れているかどうかだ。
そんな心配に対応してくれるのは、利用者のデータと選択した食事パターンをもとに、食生活をサポートしてくれるアプリ「Pinto」。ヴィーガン専用ではないが、食事パターンとしてヴィーガンを選択できるので、偏った栄養バランスにならずに、健康的なヴィーガンライフを続けることができそうだ。
- 国名:アメリカ
- 団体(企業)名:Pinto
ヴィーガンを取り巻く新たな動き
最後に、ヴィーガンを取り巻く世界の新たな動きを2つ紹介する。
16. 肉の税率引き上げをドイツ議員らが提案
気候変動対策のためにより一層の肉消費量を減らすことが求められる中、ドイツの議員らが提案しているのが、肉の軽減税率廃止だ。こうした動きは、ヴィーガンを推進していこうとする活動の後押しになるだろう。
- 国名:ドイツ
- 団体(企業)名:社会民主党(SPD)と緑の党の議員ら
17. 世界初の「ヴィーガン」ETFが誕生
ESG投資(環境・社会・ガバナンスを考慮した投資)が増える中、世界初のヴィーガンに特化した投資商品が誕生した。ヴィーガンや気候変動に配慮した企業のみで構成される上場投資信託である。
- 国名:アメリカ
- 団体(企業)名:Beyond Advisors
まとめ:日本の動向は?
日本では「ベジタリアン」という言葉は広く普及しているが、それに比べるとヴィーガンの認知度はまだ不足しており、ベジタリアンとヴィーガンの違いを知らない人も多い。動物由来のものをすべて避けるヴィーガンのスタイルが正しく理解されておらず、そのため、ヴィーガンが日本で食事の選択をするのが難しい状況だ。野菜が多い和食も、多くの場合、鰹節や煮干しなどの出汁が使われている。
国際的なスポーツイベントで海外からの訪日客が増える中、訪日するヴィーガンも増えている。彼らの中には、ヴィーガンのレストランが見つけられず、コンビニの梅干しおにぎりやナッツ類でしのいでいる人もいるのだという。
日本においては、まず多くの人がヴィーガンのスタイルを正しく理解し、ヴィーガンにとっての選択肢をきちんと提供することが求められる。また、環境負荷を減らすためにも、ヴィーガンのスタイルを取り入れる人が少しでも増えていくといいだろう。
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