【まとめ】脱プラスチックへと突き進む世界。その深刻な理由と、驚くべき問題解決アイデアとは

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※2022年5月更新済

EUは、2030年までにすべてのプラスチック包装をリサイクルし、使い捨てプラスチックを削減すると発表した。コカ・コーラ、ユニリーバ、ウォルマートなどのグローバル企業11社も、2025年までのパッケージ・リサイクル100%を宣言するなど、世界はいまプラスチックフリーへと転換のときを迎えている。

日本でも、2022年4月より「プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律(通称:プラスチック新法)」が施行され、事業者がますますプラスチックごみの排出を抑制することが求められている。

一方で、なんとなくプラスチックが環境に悪いのはわかるが、なにがそんなに問題なのかと思うことはないか。また、プラスチック問題を解決する具体的な取り組みにはどのようなものがあるのか知らないという人はいないか。

ここでは、科学的アプローチからプラスチックの問題点を説明してから、プラスチック規制への世界の動きとそれに向けたクリエイティブな解決策をご紹介したい。

※ 本文のプラスチックの科学的見解は、東京農工大学院農学部水環境保全学研究修士課程に所属している大垣多恵さんが登壇されたCreative Shibuya Morningsのイベント中の話を元にしています。

なぜプラスチックが問題なのか?

マイクロプラスチックの弊害

石油から作られるプラスチック。プラスチックは、年間3億トンが生産され、石油産出量の8%を占めている。そのうちの半分が容器包装に使用されている。

では、なぜプラスチックがこんなにも問題になっているのだろうか?ここでは、「化学的な面」と「物理的な面」の二つから考えてみたい。

化学的被害

海水には、低濃度だが汚染物質が含まれている。汚染物質とは、かつて工業用途として使われていた農薬や潤滑油などのことである。今は禁止されていても、過去使われていたものが海の中に残っているのだ。

汚染物質は、油と親和性がある。そのため、石油からできているプラスチックは海を漂う間に汚染物質を吸収しやすく、意図せず汚染物質を運んでいる。

これらは目には見えないが、確実に環境に悪影響を与えている。

海洋プラスチックごみが散乱

物理的被害

プラスチックは軽いので遠くまで運ばれ、かつ自然分解されずに半永久的に残るという特徴がある。そのため使用済みプラスチックは、ポイ捨てや、ごみ処理施設へ輸送される過程で環境中に出てしまったあと、雨で流され最終的に海に流れ着く。

そこから、海の中の魚が、マイクロプラスチックを食べてしまう問題も出てくる。東京湾で釣った64匹のイワシのうち、80%にあたる44匹のイワシの体内からマイクロプラスチックが出てきたという調査結果もある。

油との親和性が高い汚染物質が、生物の脂肪に移り、体内に蓄積してしまうのだ。その生物の体にとってももちろん良くないが、それを私たち人間が食べていることを忘れてはいけない。

▶︎ 問題についてもっと深掘りしたい方はこちら:海洋プラ問題だけじゃない。資源採掘から廃棄に至るまでの、プラスチック問題とは?

プラスチック製品を魚が食べてしまうことも

リサイクルは、本当に持続可能なのか?

ごみのキーワードとしてよく聞く、3R。3Rとは、そもそもの量を減らすリデュース(Reduce)、繰り返し使うリユース(Reuse)、そして資源として再利用するリサイクル(Recycle)のことを言う。

この3つのRにも優先順位がある。まず、ごみを出さないリデュース(削減)、リユース(再使用)、そしてリサイクルの順で考えたほうが環境への負荷は低くなる。

まず、多くのプラスチックが、複数の素材が混ざっているなどの理由により、回収後にリサイクルされず廃棄されていることを理解しておく必要がある。2016~2019年にかけて、EUでは毎年2,100万トンのプラスチックごみが回収されたが、そのうち再生プラスチックとして新製品に使われたのは、年間あたり520万トンだった。

また、リサイクルの優先順位が低い理由として、プラスチックを再利用するための焼却炉の建設には100億円、稼働には年間2億円以上かかり、施設の寿命は30年程度だということも挙げられる。

30年経過したら、100億円かけてまた新しいものを作らなければならない。そして、古い焼却炉には高濃度のダイオキシンや貴金属が含まれるので、解体にはさらに膨大な費用がかかる。

リサイクルが決して悪いわけではないが、一度立ち止まって、リサイクルにかかるエネルギーとコストについて考えてみることも大切である。

世界のプラスチック問題への解決策

2025年にはプラスチックが2015年と比較して10倍になると予測されている。そんななか、国や企業はさまざまな取り組みをはじめている。

プラスチックの使い捨てやプラスチックバッグを規制しているか規制を決めた国には、EUをはじめ、チリ、バングラデシュ、ケニア、エチオピア、台湾などがある。オーストラリア、アメリカ、デンマーク、インドなどでは、一部の州や島でプラスチックの使用が規制されている。

IDEAS FOR GOODでも、これまでプラスチックに関するニュース記事を配信してきた。「大手企業10社のプラスチック削減に向けた取り組みまとめ」とは別に、ここでは、国別でまとめてみたい。

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ブロックチェーンでWin-Winのプラスチックリサイクルを実現。ノルウェーの“Empower”

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まとめ

毎日の生活の中で必ず一回は目にするプラスチック。ペットボトルからお菓子の包装、レジ袋、ビニール傘、服にいたるまで、あらゆるものがプラスチックでできている。しかし、ストローであれば数秒、パンの袋であれば数分使われるだけの寿命のために、多くの資源やエネルギーが犠牲になっているのだ。

これだけプラスチックに囲まれた生活をする中で、プラスチックのない世界なんて考えられないかもしれないが、そうではないと思う。上記の世界の事例にあるとおり、クリエイティブに考えれば、プラスチックを使わない、または減らす方法はたくさんある。

なによりプラスチックを減らすことは自然環境のためだけではなく、巡り巡って私たちの健康のためでもあるのだ。国レベルで動くことももちろん、それと同じくらい、またはもっと大切なことは、私たち消費者のマインドシフトである。風呂敷を使ったり、マイボトルを持ち歩くなど、小さな行動なしには問題は変えられないことを忘れてはならない。

【関連記事】洋プラ問題だけじゃない。資源採掘から廃棄に至るまでの、プラスチック問題とは?
【関連記事】プラスチック削減に向けた、大手企業10社のCSR事例
【参照サイト】Plastic Waste: a European strategy to protect the planet, defend our citizens and empower our industries
【参照サイト】【国際】コカ・コーラ、ユニリーバ、ウォルマート等11社、2025年までのパッケージ・リサイクル100%を宣言
【参照サイト】From birth to ban: A history of the plastic shopping bag
【参照サイト】All Forms Of Disposable Plastic Banned In Delhi-NCR!
【参照サイト】ENERGY USE IN SWEDEN

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