資本主義はこれまで、私たちの社会を発展させてきた。現代の生活は、資本主義のおかげで豊かになっている“かのように”感じる。しかし、今もまだ「経済成長」は本当に私たち人類を幸せへと導いているのだろうか。
経済はこれまで、成長を正義とし、社会の至るところで経済成長をベースにした仕組みが作られてきた。一方で近年、その限界を指摘する声があらゆるところで広がっている。資本主義経済をめぐる論争が、気候危機や社会的不平等、生物多様性の損失などさまざまな議論に発展しているのだ。地球環境を脅かすまでに私たちの経済活動の影響力が大きくなってしまった今、果たしてこのままの手段を続けていっていいのだろうか。
持続可能な資本主義は本当に可能なのか。果たして、経済は成長し続けることができるのか。成長しない経済はありえるのか。
世界では、ステークホルダー資本主義や、ドーナツ経済学、デ・グロース(脱成長)、ウェルビーイングエコノミーなど、さまざまな経済概念が生まれている。私たちはこれから一体、どこに向かっていくのか。本記事では、これらの概念が持つ共通点や違いを明らかにしつつ、ウェルビーイングを実現する経済とはどのような経済なのか、その姿を模索していく。
目次
新型コロナによって、資本主義を見直す動きが加速
2019年12月。世界中に広がった新型コロナウイルスの感染拡大は、私たちの生活を大きく変えた。貧困層や社会的弱者への深刻な社会的・経済的影響とともに、世界で格差と貧困がこれまで以上に深刻化しており、より公平な経済社会システムへの移行が求められている。(※1)
さらには、気候危機が私たちを襲う。近年、森林火災や豪雨、台風といった自然災害が世界中で甚大な被害をもたらし、多くの命と暮らしが奪われている。
そうした中、2021年のダボス会議のテーマに「グレート・リセット」が掲げられた。同会議で主題となったのが、「ステークホルダー資本主義」だ。経済成長のために環境を破壊し、格差と分断を生み出してきた従来の資本主義をリセットし、企業が従業員や地域社会といったあらゆるステークホルダーの利益に配慮すべきという考え方である。環境を再生しながら社会的公正を実現できる、新たな経済システムへと移行する必要があることが世界に提示された。
こうしたコロナからの経済復興において、環境に配慮した回復を目指す景気刺激策「グリーンリカバリー」が叫ばれ、気候危機に立ち向かうため、脱炭素とサーキュラーエコノミー(循環経済)への移行が今、日本を含む世界中で重要視されている。
世界の潮流となった「サーキュラーエコノミー」
これまでの資本主義による大量生産・大量消費型のグローバル経済は、石油など地下資源の枯渇や大量の廃棄物を生み出し、気候危機や海洋プラスチック問題、生物多様性の破壊といった、負の外部性をもたらしてきた。
これらの状況を踏まえ、すべての人々がプラネタリーバウンダリー(地球の環境容量)の範囲内で、社会的な公正さを担保しながら繁栄していくための方法論として注目されているのが、サーキュラーエコノミーだ。従来の資源を採掘して、作って、捨てるというリニア型経済システムの中で活用されることなく「廃棄」されていた製品や原材料などを新たな「資源」と捉え、循環させる経済の仕組みのことである。
ユトレヒト大学のMartinCalisto Friant氏らが「A typology of circular economy discourses: Navigating the diverse visions of a contested paradigm」という論文の中で解説したサーキュラーエコノミーの概念の系譜や歴史から読み取れるように、現在世界に広まっているサーキュラーエコノミーの言葉の捉え方や循環分野を取り巻く状況は、今もなお世界中で議論され、進化し続けている。これまでの歴史の中で、サーキュラーエコノミーの概念はどのように変化してきたのだろうか。
サーキュラーエコノミーの概念が形成される前、1968年にイタリアで発足された「ローマクラブ」が1972年、『成長の限界』というレポートを発表した。「人口増加や環境汚染などがこのまま続けば、100年以内に地球上の成長は限界に達する」とし、資本主義が環境問題を悪化させていくと警鐘を鳴らしたのだ。
そうして廃棄物をどう管理していくかという「サーキュラリティ1.0」が生まれ、その後、廃棄物が次の製品の原材料になるという概念「サーキュラリティ2.0」、そして近年では社会的、経済的、包括的にサーキュラリティが打ち出されている「サーキュラリティ3.0」という段階で位置付けられている。
サーキュラリティ3.0の概念は、2つに分かれる。今の資本主義の中でサーキュラーエコノミーを進めていくという「サーキュラリティ3.1」と、今の資本主義という社会の仕組み自体を見直すべきだとする「サーキュラリティ3.2」だ。
サーキュラーエコノミーの向かう先
MartinCalisto Friant氏は同論文の中で、72に及ぶサーキュラーエコノミーに関わる概念を洗い出し、横軸は「経済に焦点を当てた断片的なアプローチか、社会全体に焦点を当てた全体的なアプローチか」、縦軸は「技術革新に対して楽観的か、懐疑的か」という2軸をもとに、現在のサーキュラーエコノミーの流れを大きく4つのカテゴリに類型化している。後半では、それぞれのカテゴリに当てはまる新しい概念を詳しく見ていきたい。
【①楽観的・全体論的】Reformist Circular Society(進歩型循環社会)
資本主義の修正により経済とサステナビリティを両立させ、技術革新により経済と環境のデカップリング(分離)は可能だとする考え方。環境・社会・経済の3つの側面がバランスよくとられている。経済的繁栄と人間のウェルビーイングを地球の生物物理的境界の範囲内に収めることを目標とする。
【②懐疑的・全体論的】Transformational Circular Society(移行型循環社会)
資本主義とサステナビリティの両立や技術革新によるデカップリングは不可能であり、現在の社会政治的システムを根本的に見直し、生産主義または人間中心主義からの脱却が必要だとする考え方。共生主義や質素かつ豊かな世界を目指すと同時に、生物物理的資源を公平に分配する。
【③楽観的・断片的】Technocentric Circular Economy(技術中心型循環経済)
資本主義の修正により経済とサステナビリティを両立させ、技術革新により経済と環境のデカップリング(分離)は可能だとする考え方。環境面において、外部不経済を引き起こさない形で、持続可能な人間の進歩と繁栄を目標とする。
【④懐疑的・断片的】Fortress Circular Economy(要塞型循環経済)
サステナビリティの両立や技術革新によるデカップリングは不可能であり、資本主義に変わるシステムは存在しないとする考え方。資源枯渇と人口過剰によって全人口の分配は不可能であるため、資源枯渇状態を保つ。
循環をビジョンに掲げる「循環型経済(Circular Economy)」や「循環型社会(Circular Society)」には、さまざまな論点があり、これからの世界の方向性はまだ定まっていない。4象限のそれぞれを見ていくと、経済成長をさせながらも環境負荷を抑える「Green Growth(グリーン成長)」達成の鍵は、いかに経済と環境のデカップリングができるかどうかが鍵となるといえる。
デカップリングとは?“地球規模で”デカップリングをする必要性
サーキュラーエコノミーの文脈におけるデカップリングとは、すなわち「経済成長と環境負荷を切り離すこと」だ。地球の資源には限りがあり、人間が地球に与えることができる環境負荷にもまた限りがあるという前提のもと、経済が成長して私たちの生活がさらに便利になっても、なお資源を枯渇させず、環境負荷も大きくしない施策が今、世界中で求められている。
デカップリングには「相対的デカップリング(relative decoupling)」と「絶対的デカップリング(absolute decoupling)」の2つがある。環境負荷の変化率がプラスであっても、それがGDPの上昇率よりも小さい状態を相対的デカップリングといい、GDPが上昇しながらも環境負荷の変化率がゼロまたはマイナスである状態を絶対的デカップリングという。
経済学者ケイト・ラワース氏は、「高所得国でGDPの成長が続いた場合、経済活動を地球環境の許容限界内に戻すためには、相対的や絶対的なデカップリングでは足りず、地球環境の許容限界内に戻すための“十分な規模の絶対的デカップリング”が必要である」と、著書『ドーナツ経済学』の中で述べている。高所得国のCO2排出量は10年以上かけてではなく、最低でも毎年8~10%減らさないと、世界経済を環境の許容範囲に戻すことはできないためだ。(※2)
グローバル研究センターBreakthrough Instituteが行った調査「Absolute Decoupling of Economic Growth and Emissions in 32 Countries」では、CO2排出と経済成長の絶対的デカップリングについては、人口100万人以上の国で、すでに日本含め32か国の先進国が達成していると述べている。1990年〜2005年の間では先進国が途上国に製造拠点を移したことで一時的に開発途上国のC02排出が上昇しているが、2005年以降には減少し、結果的に過去15年間で減少していると補足している。(※3)
同レポートでは、無限の経済成長は望ましいとも可能だとも断言はしていないが、先進国の消費ベースのCO2排出でもデカップリングが起こっていることを示したうえで、絶対的デカップリングは可能だとしている。しかし、CO2排出がベースであっても、エネルギー集約型製造業に焦点を当てた低所得国や中所得国が絶対的デカップリングを達成している例は比較的少ないと述べており、つまり「地球規模」でのデカップリングは起きていない。
さらに、デカップリングは「CO2排出」とのデカップリングだけでなく「資源消費(マテリアルフットプリント)」とのデカップリングがあり、「絶対的デカップリングが達成可能か」という議論では、それがCO2排出のデカップリングと資源消費のデカップリングのどちらをベースに見ているのかによって、見解が異なる。
ここで紹介したいのが、ユトレヒト大学のThomasBauwens氏が発表した論文「Are the circular economy and economic growth compatible? A case for post-growth circularity」の論考である。
この論考では、資源消費(マテリアルフットプリント)はGDPに比例して増えており、グリーン成長の必要条件である、GDP成長と資源消費のグローバルな絶対的デカップリングはまだ現実には程遠いと述べたうえで、サーキュラーエコノミーの行く末の選択肢の一つとして、後述する「脱成長(Degrowth)と卒成長(Post Growth)」のアプローチをあげている。
つまり、デカップリングには相対的デカップリングと絶対的デカップリングがある中で、絶対的デカップリングが起こっているのは、現状「CO2排出」ベースで「先進国」に偏っている。かつ「CO2排出」のデカップリングと「資源消費」のデカップリングの議論は分けて考える必要があり、今のところ「資源消費」ベースかつ「地球規模」での絶対的デカップリングはまだ実現していない。
仮にデカップリングが可能だとしても、それが現在の気候危機や資源枯渇を考えたとき、果たして「間に合う」スピードで起こっているのかも、考える必要がある。
グリーン成長の危うさ。デカップリングを考える際の注意点
技術革新により経済と環境のデカップリング(分離)が可能だとする考え方を進めるにあたっては、「科学技術とは何か?」を、理解する必要がある。
科学(science)は狭義では自然現象の法則を研究することであり、技術(technology)は自然物を改変、加工し、人間が使える形にすることだ。そう考えると、科学技術に発展の余地が残されているということは、人間は自然をまだ完全に理解しきれていないということでもある。科学技術とは自然の叡智を解明する終わりなき営みであり、人間の叡智が自然の叡智を上回ることは難しい、ということだ。
たとえば、脱炭素で注目されている、大気中のCO2を直接回収する技術「DAC(Direct Air Capture)」を例にとっても、今後大気中のCO2を削減するうえで鍵を握る技術であることは間違いないが、エネルギーもコストもかかり、拡大は簡単なことではない。
一方で、自然界を見てみると、すでにその役割を樹木が担っている。炭素を固定し、固定した炭素を微生物が栄養として食べて植物に育っていく。樹木は、大気圏・生物圏・地圏をめぐる炭素の循環を見事に作り出しているのだ。つまり言い換えれば、そうして自然界で樹木が当たり前にやっていることですら、人間が生み出した最先端の技術を使っても、効率的には成しえないのが今の現状なのである。
グリーン成長を考える際、技術的にデカップリングを達成できたとしても、その結果として次の新しい問題が生まれる可能性もある。その課題を今後、どう解決していくかという議論も必要だと言える。
自然の中にある大きなアルゴリズムの一部でしかない人間は、自然界を越えることはできない。そう考えると、サーキュラーエコノミーも自然に学ぶことが前提としてあり、自然のシステムの中で生きていく以外に、選択肢はないのではないだろうか。
新しい経済学
記事後半では、先ほどの4象限中の【進歩型循環社会】にあたる「ドーナツ経済学」「ウェルビーイングエコノミー」「リジェネラティブエコノミー」、そして【移行型循環社会】にあたる「脱成長(Degrowth)」と「卒成長(Post Growth)」について見ていきたい。
社会的側面も取り入れた「ドーナツ経済学」
サーキュラーエコノミーの概念が当初包含しきれていなかった社会的な側面にも目を向けており、2050年までに100%サーキュラーエコノミー実現を目指すオランダの首都アムステルダムが都市戦略として採用したことでも知られるのが、ケイトラワース氏が提唱する「ドーナツ経済学」である。「地球の限られた資源の範囲内ですべての人々の社会的公正を実現」しようとする考え方だ。
ドーナツの内縁は「社会的な土台」、外縁がプラネタリーバウンダリーを表す「環境的な上限」を表しており、下図の緑色部分(=ドーナツの食べられる部分)の範囲内で生活していこうということである。この緑色の枠は、人類にとって安全で公正な範囲、そして環境再生的(リジェネラティブ)で分配的な経済を表している。一方ドーナツの外側は、急激な工業発展による大気汚染や、気候変動などで地球環境に過負荷がかかっている状態を示す。こちらも、従来の大量生産・大量消費のモデルから、循環型の経済モデルに変えることで、ドーナツの緑の部分に引き戻すようにする。
ドーナツの真ん中のように社会的な不足をすることなく、かといって資源全体の利用量が、環境限界である外側の円を突き抜けることもない位置が、ドーナツ経済学の目指すところである。
それぞれの国家や都市が成長曲線のどこのポジションにいるかによって、ベクトルの方向性が変わってくるドーナツ経済学は、インクルーシブな概念であるともいえる。社会的公正を実現し、環境負荷もオーバーシュートしているような、すでに成長しきった先進諸国に成長は必要ないかもしれないし、環境負荷は地球の資源の範囲内だが、社会的公正がまだ実現できていない国家や都市は、引き続き経済成長を目指すことが正解かもしれない。そうした意味で、ドーナツ経済学は「グリーン成長」と「脱成長」の二項対立を超えたパラダイムと見ることもできる。
地球資源を守りつつ、富の公平な分配を目指す「ウェルビーイング・エコノミー」
これまで説明してきたドーナツ経済学では、現在の経済をより「再生的」で「分配的な」システムに移行する必要があると主張しており、GDPの成長ではなく人々のウェルビーイングを重視すべきだとしている。
そんなドーナツ経済学の概念を広めるケイト・ラワース氏も、アンバサダーを務めているのが、Wellbeing EconomyAlliance(WEAll)だ。WEAllが進めるのは、ウェルビーイング・エコノミーという概念である。
ウェルビーイング・エコノミーとは、「経済活動が、社会や自然界の他の物に組み込まれていると理解している経済」を意味する。つまりWEAllの政策は、単なる経済成長ではなく、人間と生態系の幸福の観点から作られる。WEAllには約200の組織や同盟、運動、個人が加盟しており、人類が地球の資源を守りながら、富、健康、ウェルビーイングを公平に分配する必要があるとし、具体的に5つの目標を掲げている。
- 尊厳:すべての人が快適、安全、幸福に暮らす
- 自然:すべての生命にとっての、安全な自然界
- つながり:帰属意識と共通の利益をもたらす制度
- 公平さ:経済システムの中心にあらゆる次元の正義があり、最富裕層と最貧困層の格差が大幅に縮小される
- 参加:市民が地域社会や地域に根ざした経済活動に積極的に参加する
Wellbeing Economy Govermentsには現在、スコットランドやニュージーランド、アイスランド、ウェールズ、フィンランドが加盟しており、たとえばニュージーランドでは、メンタルヘルスや子どもの幸せ、先住民保護といった人間の幸せを中心に考えた政策づくりが進められている。
経済活動で環境・社会の再生を目指す「リジェネラティブ・エコノミー」
再生を意味するリジェネレーションの概念を、経済の文脈に落とし込んだ「リジェネラティブ・エコノミー(再生経済)」も、ウェルビーイング・エコノミーに向かう一つの方法だろう。
すべての人にとって健康で安全であり、循環していく経済システムのことで、2010年にリジェネラティブな(再生型の)金融経済の推進を行うアメリカのシンクタンク、CAPITAL INSTITUTEが提唱した。CAPITAL INSTITUTEのJohn Fullerton氏はRegenerative Capitalism(リジェネラティブ資本主義)の8原則を発表している。
1. 適切な関係性(In Right Relationship)
2. 包括的な豊かさの見方(Views Wealth Holistically)
3. 革新的で適応性があり、変化に対応できる(Innovative, Adaptive, Responsive)
4. 権利のある参加(Empowered Participation)
5. コミュニティと地域の尊重(Honors Community and Place)
6. エッジ効果を使う(Edge Effect Abundance)
7. 丈夫な循環を作る(Robust Circulatory Flow)
8. バランスの追求(Seeks Balance)
自分と他者、そして他の生物たちの間に明確な線引きはない。私たちは互いにつながって生きているのだという認識を持ち、社会・文化・生活・経験など一部だけでなく、全体の繁栄が必要である。──大きな生態系や社会のために、私たちの経済活動でどう貢献していくかを考えれば、「与えること」や「再生すること」が基盤となるビジネスができていくのではないだろうか。
脱成長(Degrowth)と卒成長(Post Growth)
資本主義とサステナビリティの両立や技術革新によるデカップリングは不可能であり、システムそのものの移行が必要という議論もある中で、最後にご紹介したいのが、4象限の中の「移行型循環社会」にあたる「脱成長(Degrowth)」と「卒成長(Post Growth)」だ。経済的成長を目指すグローバルな資本主義が人的搾取や環境破壊を生むとして、それを批判する考え方である。
具体的には、これまでの大量生産・大量消費の様式から、人間を含むあらゆる生態系のウェルビーイングを優先し、企業はダウンスケールしてローカライズし、コミュニティによって所有されて余剰の富の再分配を行う、格差なき世界だ。
「脱成長」と、言葉の冒頭に「脱」をつけてしまうと、「成長=悪いこと」というイメージを持つかもしれないが、実はそうではない。ここではあくまでも「無限に成長することの難しさ」がポイントとなる。ここで、植物の成長をイメージしてみてほしい。どんな植物にも無限の成長はなく、次第にどこかのポイントで成長はおさまっていく。
自然界では無限の成長はありえないのに、なぜGDPといった経済指標だけはずっと成長し続ける前提があり、そもそも成長し続ける必要があるのか。立ち止まって考えなければいけないのは、「その国が今、成長曲線のどの地点にいるのか」ということである。
グリーン成長を考える際にも、短期的にはサーキュラーエコノミーを競争戦略として見ることができるとしても、「成長し続けること」が難しい以上、「成長」とサーキュラーエコノミーをセットで語ることには慎重さが求められるだろう。
なんのための「経済」なのか?
気候危機や不平等、世界のあらゆる課題を見ていきながら、今新たに出てきている新しい経済の姿を見てきたが、さまざまな学者があらゆる見解を示しているように、「正解」はまだ確実にはわからない。しかし、一つだけいえることは、「今のままではいけない」ということだろう。
「経済」とは何かということに立ち戻って考えてみると、経済という言葉は、「経世済民(けいせいさいみん)」を略した略語であり、「世の中を治め、人民を救うこと」を意味する。つまり本来、民を救うためにさまざまな公的対策を行うことこそが「経済」なのである。現代の私たちは、この本質的な意味をどれほど理解しながら、経済活動をしているだろうか。
私たちが求める「豊かさ」とは一体なんなのか。「新しい経済」の先には、何があるのか。
「#新しい経済」の特集では、世界中で私たちのウェルビーイングを支える経済活動を目指す団体や企業、人々を取材し、現在の資本主義に変わる経済システムとはどのようなものか、考えていく。
「問い」から始まるウェルビーイング特集
環境・社会・経済の3つの分野において、ウェルビーイング(良い状態であること)を追求する企業・団体への取材特集。あらゆるステークホルダーの幸せにかかわる「問い」を起点に、企業の画期的な活動や、ジレンマ等を紹介する。世間で当たり前とされていることに対して、あなたはどう思い、どう行動する?IDEAS FOR GOODのお問い合わせページ、TwitterやInstagramなどでご意見をお聞かせください!
(※1) Global Wealth Report 2021
(※2) Beyond ‘dangerous’ climate change: emission scenarios for a new world
(※3) Growth in emission transfers via international trade from 1990 to 2008
【参考文献】 A typology of circular economy discourses: Navigating the diverse visions of a contested paradigm
【参照サイト】 CAPITAL INSTITUTE
【参照サイト】 Transformative economies
【参照サイト】 Wellbeing Economy Alliance
【参照サイト】 Can we prosper without growth?(DOHA DEBATES)
【参照サイト】 【アーカイブ動画購入可能】 Circular X 第1回「サーキュラーエコノミーの本質を問う」Circular Economy Hub オンライン学習プログラム
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