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デカップリング(分離)とは・意味

デカップリング

デカップリング(分離)とは?

デカップリングは、英語ではdecouplingと表し、連動性の強い二つのものを切り離すこと、または連動しなくすることを指す。農業分野や経済分野、物理学やITなど、さまざまな場面で使われているこの言葉だが、本記事では環境分野とサーキュラーエコノミーの文脈におけるデカップリングを説明する。

サーキュラーエコノミーの文脈におけるデカップリングとは、すなわち「経済成長と環境負荷を切り離すこと」だ。産業革命以降の急激な経済成長は、天然資源の大量採取・大量消費によって支えられており、環境に甚大な負荷を与えてきた。サステナビリティ(持続可能性)の重要性が広く認識されるようになった今、地球の資源には限りがあり、人間が地球に与えることができる環境負荷にもまた限りがあるということが、経済、社会活動の前提となっている。

経済が成長して私たちの生活がさらに便利になっても、なお資源を枯渇させず、環境負荷も大きくしない施策が今、世界中で求められている。

デカップリングの議論が大々的にされ始めたのは、EUが2005年に「廃棄物の排出抑制・リサイクルに関する戦略」と「持続可能な天然資源利用に関する戦略」という二つの戦略を打ち出したころからだと言われている。当時は、限りある資源をどうすれば持続可能に使えるのか、に焦点が絞られていた。

時が経ち、英オックスフォード大学の経済学者ケイト・ラワース氏は、今の私たちが気候危機を阻止できる最後の世代だとし、二つのデカップリングについて説明した。

  • 相対的デカップリング:水やエネルギーなど、資源の利用効率を高め、GDPが資源利用の増加率を上回ること
  • 絶対的デカップリング:GDPの上昇と共に資源利用が絶対量で減ること

つまり、環境負荷の変化率がプラスであっても、それがGDPの上昇率よりも小さい状態を相対的デカップリングといい、GDPが上昇しながらも環境負荷の変化率がゼロまたはマイナスである状態を絶対的デカップリングという。

ケイト・ラワース氏は、著書『ドーナツ経済学が世界を救う 人類と地球のためのパラダイムシフト』の中でこう述べている。

「高所得国でGDPの成長が続いた場合、経済活動を地球環境の許容限界内に戻すためには、相対的や絶対的なデカップリングでは足りず、十分な絶対的カップリングによって、成長に関わる資源利用を減らさなくてはならない。

十分な絶対的デカップリング:地球環境の許容限界内に戻すために十分な規模のデカップリング

デカップリング実現に向けた状況

十分な規模でデカップリングを進めていく必要があるなか、どのような状況になっているのだろうか。デカップリングを進めていくには、技術革新や社会変革によって、資源の循環利用やエネルギー多消費の産業構造の改革を実現していくことが必要となる。

環境負荷で代表的なのが、CO2排出である。CO2排出の削減については、パリ協定の目標を達成するために世界規模で「ネットゼロ(Net Zero)」に向けた取り組みが強化されており、CO2排出と経済成長の絶対的なデカップリングを実現している例も見られる。

グローバル研究センターBreakthrough Instituteが行った調査「Absolute Decoupling of Economic Growth and Emissions in 32 Countries」では、CO2排出と経済成長の絶対的デカップリングについては、人口100万人以上の国で、すでに日本を含め32か国の先進国が達成していると述べている。同調査は、域内排出量と消費排出量(国内で消費される商品に含まれる排出量)の両方を含んでいる。1990年〜2005年の間では先進国が途上国に製造拠点を移したことで一時的に開発途上国のC02排出が上昇しているが、2005年以降には減少しており、先進国から途上国への「輸出」排出量は、過去15年間で減少していると補足している。

同調査によると、2005年から2019年にかけて最もCO2排出量を削減したのは、デンマーク(GDP成長17%に対してCO2排出量削減は45%)、イギリス(GDP成長21%に対してCO2排出量削減は37%)、フィンランド(GDP成長8%に対してCO2排出量削減は36%)である。なお、日本を含む11か国は、CO2排出量削減が10%以下であった。上述のケイト・ラワース氏によると、CO2は「毎年」8~10%減らさないと、世界経済を環境の許容範囲に戻すことはできないという研究が出ているといい、既にデカップリングを実現している国も含め、更に高い水準でCO2削減に取り組む必要があることを示唆している。

デカップリングを実現すべき分野は、CO2以外にもある。例えば天然資源の消費である。天然資源の消費量を示す「マテリアルフットプリント」に焦点をあてると、全世界的に増加傾向にあることがわかる。世界のマテリアルフットプリントは、1990年の430億トンから2000年には540億トン、2017年には920億トンへと増加しており、デカップリングの実現には程遠い状況である。

また、一人当たりのマテリアルフットプリントでは、先進国の水準は開発途上国と比べてかなり高い。下図は、上から低所得国、下位中所得国、上位中所得国、高所得国、全世界の一人当たりマテリアルフットプリント(2000年、2017年)を示しているが、高所得国の一人当たりのマテリアルフットプリントは低所得国の13倍の水準である。これは、高所得国の消費がサプライチェーンを通じて他国からの資源に依存していることを示している。

United Nations Statistics Division, SDG Indicatorsより引用

デカップリングを実現するためのアクション

地球全体を見渡すと、飢餓や貧困で苦しむ人や、医療サービスに頼ることのできない人もたくさんいる。その人たちも含めたすべての人間が尊厳ある生活をするために、ある程度の豊かさは必要だ。

では、環境負荷を絶対的で減らす絶対的デカップリングを実現するにはどうしたらいいのか。先述の書籍の中では、以下の三つの方法が提案されていた。

  1. エネルギーの供給源を、化石燃料から再生可能な燃料に速やかに切り替えること。現在は、とりわけ太陽光発電のコストが安くなっている。
  2. 資源の利用効率の高い循環型の経済を築くこと。これまで、資源を「Take(取って)」「Make(作って)」「Waste(捨てる)」という一直線の経済モデルにおいて廃棄されていたものを価値ある資源として捉え直し、地球の供給源と吸収源の範囲内でぐるぐると循環させる。
  3. デジタルの商品・サービスによって「無重力経済」を拡大する。無重力経済においては、モノではなく精神や知恵、アイデアなどがGDPの成長をけん引する。

デカップリングの実現には、国や自治体、企業の役割が重要となるが、私たち一人ひとりの行動もデカップリングに貢献することができる。例えば、できるだけ再生可能エネルギーを選んだり、リユース商品やアップサイクル商品を購入したり、環境を再生する企業にお金を使ったりすることなどが挙げられる。

経済をある程度成長させて貧困や飢餓のない社会的公正を実現しながら、環境負荷はむしろ減らしていく。そんなデカップリングは、これからの社会においてますます重要なキーワードとなるだろう。

【関連記事】誰のための「経済」?資本主義の向かう先【ウェルビーイング特集 #33 新しい経済】
【参照サイト】United Nations Statistics Division, SDG Indicators, Goal12




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