Browse By

バイオクチュールとは・意味

バイオクチュール

バイオクチュールとは?

バイオクチュール(biocouture)とは、カビやバクテリアなどの微生物を使って衣服をはじめとした製品を作ることを意味する。この言葉は、2012年ごろにブルックリンを拠点とするデザイナーのスーザン・リーが立ち上げたプロジェクトの中で生まれた造語である。

すでに存在する植物由来の代替素材として菌糸を使ったレザーなどがあるが、バイオクチュールで用いる微生物には「活動中」と「冬眠中」の2つの状態があるという点で、それらとは大きく異なっている。バイオクチュールを扱うデザイナーはどちらの状態の微生物を使用するか選ぶことができ、その状態によって見た目や触り心地、ケアの方法なども変わる。

バイオクチュールの活用

バイオクチュールはまだ進化の途中段階だが、ファッション業界における技術革新を担う次世代の素材として近年注目を浴びている。以下のように、すでに実験的にバイオクチュールを用いたデザインを取り入れている企業やデザイナーもいる。

  • 2014年:MITメディアラボ(※)が「セカンドスキン」と呼ばれる、人間の体温や汗に反応する微生物を用いた繊維を作るプロジェクトを実施
  • 2020年:元スポーツウェアデザイナーのロージー・ブロードヘッドが、バクテリアを使った治療用の衣類を作るリサーチスタジオ「スキンシリーズ」を設立

※ 米国マサチューセッツ工科大学 建築・計画スクール内に設置された研究所

さらに2022年には、デザイナーのオリビア・ルーベンス率いるファッションブランド「Rubens(ルーベンス)」が、ロンドンのコンセプトストア「Machine-A」とバイオテクノロジーのスタートップ企業「Post Carbon Lab」と共同でコレクションを実施した。

当コレクションでは、水・日光・二酸化炭素を吸収して酸素を作り出す植物のような活動をするバクテリアを、特殊なコーティングを施すことによって生地に結合させた作品が紹介された。作品には認証を受けたオーガニックコットンやアップサイクルされた素材も使用されており、サステナブルなファッションとして話題になっている。

限定生産された作品はすでに完売し、オリビア・ルーベンスは現在ファッション業界におけるバイオクチュール活動の最前線で活躍している。

バイオクチュールの今後

バイオクチュールは、ファッション業界において素材のイノベーションを起こす可能性を持つ存在として注目を浴びている。そして「微生物を着る」というユニークな体験や、そのコンセプト・ストーリーはこれからも消費者を大いに魅了するだろう。

一方、通常の素材よりも湿らせたり乾燥させたりといった特別なケアが必要となることや、人体への影響がないかどうか不安視する声があることも事実だ。生産コストや輸送コストが高いという課題もある。

バイオクチュールを発展させ世の中に浸透させていくためには、現在博士課程の学生やデザイナー、研究者たちが作っている作品を企業やプラットフォームと組んで製品化するなど、今後もさらなる投資を行っていく必要がある。

こうした今までにない新しい商品を世に打ち出す際、投資やコスト面の課題は付き物だ。しかし、バイオクチュールのコンセプトやサステナビリティを真摯に示し続けることで、近い将来消費者にとっての選択肢の一つとなり得るのではないだろうか。

【参照サイト】VOGUE BUSINESS – Living, breathing, wearable plants? Inside the rise of biocouture
【関連記事】バイオミミクリーとは・意味




用語の一覧

あ行
か行
さ行
た行
な行
は行

ま行
や行
ら行
わ行
A
B
C
D
E
F
G
H
I
J
L
M
N
O
P
Q
R
S
T
V
W
X
数字

FacebookTwitter