ステレオタイプとは・意味
ステレオタイプとは
ステレオタイプとは、多くの人に浸透している固定観念や思い込みのこと。例えば国籍・宗教・性別など、特定の属性を持つ人に対して付与される単純化されたイメージがそれに該当する。アメリカの著作家・政治評論家であるウォルター・リップマンによって提唱された概念。
「ステレオ」と聞くと、サウンドをイメージする人は多いかもしれないが、ステレオタイプの語源は印刷用語であり、新聞や辞書などの活字印刷のために使われていたステロ版(鉛版)印刷からきている。ステロ版で印刷すると、型を抜いて作ったかのように似たものができることから、今の「ステレオタイプ」になったといわれている。
人権啓発用語辞典によるとステレオタイプには以下の特徴があるとされている。
- 過度に単純化されていること
- 不確かな情報や知識に基づいて誇張され、しばしばゆがめられた一般化・カテゴリー化であること
- 好悪、善悪、正邪、優劣などといった強力な感情を伴っていること
- 新たな証拠や経験に出会っても、容易に変容しにくいこと
否定的な感情を伴い、上記を満たすものであれば、偏見や差別にもつながりうるだろう。たとえそんなつもりがなくても、無意識の偏見からマイクロアグレッションとなる可能性もある。
ステレオタイプの具体例
ステレオタイプはある特別な状況のもと発生するものではなく、私たちの日常に存在している。具体的には下記のようなものがある。
ジェンダー
- 「女性ははっきりと意見を言わず、おしとやかである」
- 「男性は重いものを運ぶ力がある」
- 「女々しい」など、女性はか弱いものだという先入観を持たせる日本語。
人種・国籍
- 「アメリカ人は自己主張が強い」
- 「日本人は毎日着物を着てお寿司を食べている」
- 「イタリア人だからパスタやピザが好き」
地域性・県民性
- 「都会の人はおしゃれだ」
- 「東京の人はいつもせかせかしている」
- 「大阪の人は面白い」
血液型
- 「B型の人は自己中心的である」
- 「A型だから真面目」
これらのことは、発言者の抱くネガテイブなイメージや具体的な経験に基づいて形成されたものだが、属性の人すべてに当てはまるわけではない。また、仮に反例に出会ったとしても簡単に覆されるものではないのだ。ステレオタイプを付与することは「自分とは違う」レッテルを他者に貼り付けることで、理解した気になろうとする行為とも捉えられる。
偏見・差別とステレオタイプとの違い
ステレオタイプと似た意味の言葉に、「偏見」がある。偏見という言葉はネガティブな意味で使用され、その考え方自体が偏っていたりマイナスイメージのみを指すことが一般的だ。それに対し、ステレオタイプは必ずしもマイナスな考え方やイメージを表すわけではない。また、ステレオタイプは社会に定着しているもののことを言うが、偏見は主観を伴う個人的な先入観も含む。
しかし、意味には違いはあるものの、ステレオタイプが偏見や差別につながったり、助長したりすることもあるので、注意が必要だ。
なぜステレオタイプは起こるのか?
人間がなぜステレオタイプに固執するのか。リップマンは、その理由はステレオタイプの認知的経済性にあると説明する。現代の人々は、メディアや広告を通して事物を知る。そして、多くの人々はひとつの物事に対し、多様な情報を見て調べたり考えたりするといった、正しく事物を知る余裕を持っていない。
ステレオタイプに頼らず、日常生活のすべての物事を新たに認識しようとすれば、多大な労力と時間が必要だ。そのため、メディアや広告が人々に与えるイメージが固定化し、人は思考を省略してすでにあるイメージに基づいて判断を行う。
ステレオタイプのメリット
前に述べたように、ステレオタイプの認知は、人々を取り巻く膨大な情報を一定の型にはめて把握することで、情報を効率的に処理することに役立つ。
例えば、車の運転中に高齢者が視界に入った場合、ほとんどの人は、「高齢者は、判断に時間がかかるかもしれないので、思いがけない行動をすることがある」というステレオタイプの認知をすることで、高齢者のそばを注意して運転するといった判断が瞬時にできる。
これがもし、ステレオタイプの認知が機能せず「男性、元気そう、スニーカーを履いている、日焼けをしているので元気に動く体力があるかもしれない……」などと脳内で情報を網羅的に処理していたら、適切な判断に時間がかかってしまう。
ステレオタイプを乗り越えて
ステレオタイプが引き起こす一番の問題は思考停止であると言えるだろう。「あの人は日本人だから」「男性だから」といって理由付けしてしまえば、目の前の事態についてそれ以上思考する必要がなくなる。しかし、思考することをやめると、単純化された「日本人」「男性」のイメージはより肥大化し、いずれ偏見や差別を肉付けしていくこともある。
ステレオタイプに反する新たなものに出会ったときに、肩書きやイメージに捉われないコミュニケーションを積極的に開いていくことが、ステレオタイプを打破する一歩になるはずだ。
【関連ページ】マイクロアグレッションとは・意味
【参照サイト】ステレオタイプとは何?
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