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生物多様性条約(CBD)とは・意味

生物多様性

生物多様性条約(CBD)とは

生物多様性条約(Convention on Biological Diversity)とは、1992年にブラジルのリオデジャネイロ開催の国連環境開発会議(地球サミット)で採択された、生物多様性に関する包括的な条約。

この条約の目的は、「地球上の多様な生物を生息環境とともに保全すること」「生物資源を持続可能であるように利用すること」「遺伝資源の利用から生ずる利益を、公正・衡平に配分すること」の3つ。先進国の資金や技術をもって途上国を支援することで、経済的・技術的にそれらの国々の取り組みに協力する仕組みとなっている。

生物多様性条約誕生の背景

世界各国の急速な工業化によって、1970年代から自然破壊や野生生物の絶滅といった生態系の変化が顕著に現れた。WWF(世界自然保護基金)が発行している「Living Planet Report」の2020年版によると、世界の生物多様性は過去50年で68%喪失、人間の消費は地球が生産できる範囲を60%超過しているとされている。

これらの問題に対して、絶滅のおそれのある野生動植物の国際取引に関する「ワシントン条約」や、特に水鳥の生息地として国際的に重要な湿地に関する「ラムサール条約」などが成立。しかし、これら2つの条約は、特定の地域や種の保存を主な目的としているため、より複雑に繋がりをもつ生物多様性の包括的な保全を促進させるための条約として「生物多様性条約」が採択された。

愛知目標とこれまでの日本の取り組み

愛知目標は、2010年に愛知県名古屋市で開催されたCOP10(生物多様性条約第10回締約国会議)で定められたもの。2050年までに「自然と共生する世界」を実現することを目指し、2020年までに生物多様性の損失を止めるための効果的かつ緊急な行動を起こすことを目的に、20 の個別目標(内包60項目)が設定され、各国が取り組みを続けてきた。

愛知目標を達成するために行われた日本の取り組みを3点挙げる。

1. 生物多様性日本基金

2011年から2020年までの間、日本は総額50億円を支出。資金は、途上国の能力養成を中心に生物多様性条約の活動支援のために使われ、加盟国の中で最大の出資国となった。50億という額は、生物多様性条約の運営費用のおよそ5年分に相当するという。

2. 日本のトキの再導入事業

日本のトキの再導入事業は、地球生物多様性概況第5版(GEO5: Global Biodiversity Outlook5)の中で、絶滅危惧種の保全における成功例として取り上げられている。

トキは、新潟県佐渡島に多く生息し、カエルやカタツムリを食べるため、生活を水田に依存する。トキの激減の理由としては、明治時代、トキに関する法律は定められておらず、乱獲されたことと、農薬の使用によって、水田の環境が変化したためだと考えられている。どちらの減少理由も人間の行いによるものだとわかる。

1981年からは、日本で最後の野生のトキ5羽を捕獲し飼育していたが、2003年に最後の日本産トキが死亡したことで、日本で絶滅した。2008年には中国で飼育されていたつがいを日本に迎え、そこから繁殖をすると同時に野生に返すための訓練を行った。

2013年に環境省は、「トキ野生復帰の取組ロードマップ2020」を定め、「2020年頃に佐渡島内に220羽のトキを定着させる。」ことを目標に掲げ、保全活動を行った。個体数は順調に増え、目標を2年前倒しして達成した。2020年12月時点で、佐渡島内に生息するトキは442羽だというデータが出ている。今後、佐渡市は住人に農薬を使わないトキにやさしい農業を行うことを推奨している。

3. 企業による取り組み

日本の企業も生物多様性の保全に様々な方法で取り組んでいる。たとえば、サラヤ株式会社は、環境や人体にやさしい植物原料を用いた「ヤシノミ洗剤」を1971年から販売している。しかし、原材料であるパーム油は食用油として世界中で需要が高まり、これまでの過剰なプランテーション開発により、熱帯雨林の環境を脅かしてきた。

同社は、2004年からパーム油の生産を多く占めるボルネオ島での「生物多様性保全活動」と「持続可能なパーム油の調達」を実施してきた。「緑の回廊プロジェクト」では、かつて熱帯雨林であった土地を購入し、オラウータンのための吊り橋を設置することで分断された森をつなぐ取り組みを行った。

また、「野生動物の救出プロジェクト」では、JICAやサバ州野生動物局らと協力して、住民が仕掛けた罠にかかって傷ついたゾウなどを保護して森に返している。持続可能なパーム油の調達では、日本に籍を置く企業として初めて RSPO(Roundtable on Sustainable Palm Oil)に加盟し、2019年には国内販売されている自社製品でRSPO認証を100%取得した。

上記では、日本での生物多様性保全の取り組みを3点挙げた。世界全体の結果は、愛知条約20の個別目標のうち達成されたものは0個で、内包する60項目をみても7個と、全体の12%であった。

今後の日本の取り組み:生物多様性国家戦略

生物多様性国家戦略とは、生物多様性条約及び生物多様性基本法に基づく、生物多様性の保全及び持続可能な利用に関する国の基本的な計画のこと。既存の取り組みに加え、下記の3点を行っていくことを掲げている。

  • 人類の生存基盤である生物多様性と生態系の健全性の確保・回復のための取り組みのさらなる強化
  • 社会的課題の解決に向けた自然を活用した解決策(NbS)の積極的活用を掲げる
  • 社会と個人それぞれの価値観と行動が自然共生社会の実現に向かうよう、ビジネスと生物多様性の好循環とライフスタイルへの反映を挙げる

    まとめ

    生物多様性条約が締結される以前から、長い間、生物多様性を守る取り組みが長い間行われてきた。しかし、残念なことに今、多くの動植物が危機的な状況に直面している。その原因には、私たち人間の行いがあることは疑う余地がないだろう。

    生物多様性を回復させるため、今これまで以上に一人ひとりの行いが重要だ。そんな今、大きなことはできなくても、小さなことから始めてみるのはどうだろう。たとえば、WWFなどの生態系保全に関する機関に募金をしてみたり、生物のことを知るために映画を観てみたり……。特に、世界中の動物の生態系や自然環境の現状を学べる『Our Planet』や、サンゴの白化について知ることができる『Chasing Coral』はおすすめだ。家族や友人と一緒に作品を視聴し、感想をシェアし合うのも楽しいかもしれない。

    一人ひとりが当事者意識を持ち、生物多様性に関する出来事に目を向け、できることから行動していくこと。トキの例のように、人間と様々な種が共生できる社会になることを願う。

    【参照サイト】外務省-地球に生きる生命の条約~生物多様性条約と日本の取組
    【参照サイト】WWF JAPAN-過去50年で生物多様性は68%減少 地球の生命の未来を決める 2020年からの行動変革
    【参照サイト】環境省-生物多様性 愛知目標(20の個別目標)
    【参照サイト】日本自然保護協会-愛知目標の最終評価文書、地球規模生物多様性概況第5版(GEO5)の発表
    【参照サイト】環境省-トキ野生復帰の取組評価
    【参照サイト】Global Biodiversity Outlook5 Reintroducing the Japanese Crested Ibis in Sado, Japan
    【参照サイト】環境省-生物多様性 民間参画事例集 
    【参照サイト】環境省-生物多様性国家戦略
    【参照サイト】環境省-次期生物多様性国家戦略研究会報告書




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