アンコンシャスバイアスとは・意味
アンコンシャスバイアスとは
アンコンシャスバイアスとは「無意識の偏ったモノの見方」のこと。英語のUnconscious(無意識の)とBias(バイアス・偏見・先入観)という言葉を組み合わせてできた造語。自分でも気づかないうちに持っていた無意識の思い込みや偏見のことを指す。英語ではimplicit biasとも言う。
誰かと接する時、これまでの経験や見聞きしたことを思い出し「この人はこうだろう」「こういう人は〇〇だと聞いたので、こうだろう」と自分なりに解釈し、判断する。こういった思考パターン、行動はアンコンシャスバイアスと言える。
この概念は、1995年に社会心理学者のMahzarin Banaji氏とTony Greenwald氏が発表した論文「暗黙の社会的認知理論(theory of implicit social cognition)」内で使われたのが始まりだ。その後、2013年ごろから#BLM運動の高まりと共にこの言葉が欧米で広まった。日本ではダイバーシティ&インクルージョンの機運の高まりと共に、使用回数が増え、一般的な言葉になりつつある。
アンコンシャスバイアスの例
アンコンシャスバイアスを理解するために、いくつか具体的な例を見てみよう。
- 医師というと男性を、看護師と聞くと女性を思い浮かべる
- こどもが病気になったときは母親が休んだほうがいいと思う
- 「親が単身赴任」と聞くと、家を出ているのは父親だとイメージする
- 育児中の社員・職員に負荷の高い業務は無理だと思ってしまう
- 介護しながら働くのは難しいと思う
- 非正規雇用で働く人は皆、自分で望んで、その働き方を選択していると思う
- 外国人労働者をみると、出稼ぎなど、一時的な滞在者だと思う
- 外国人労働者は日本の企業文化にあうのか、つい心配になる
- 障がいのある人は、簡単な仕事しかできない、あるいは働くのが難しいだろうと思う
これらの例のように、私たちは、過去の経験や見聞きしたことに基づいて「きっとこうだろう」「普通~のはずだ」と決めつけたり偏った見方をしたりしてしまうことがある。日常に潜む、こうした無意識のうちの思い込みや決めつけこそが、アンコンシャスバイアスなのだ。
アンコンシャスバイアスの種類
アンコンシャスバイアスには、様々な種類がある。以下に代表的なものをいくつか紹介する。
ステレオタイプ:人の属性をもとに先入観や固定観念で決めつけてしまう
アンカリングバイアス:後に提示されたものよりも、最初に提示されたものが良いと思ってしまう
正常性バイアス:問題があっても、「私は大丈夫」と思い込んでしまう
同調性バイアス:集団にいる時、まわりと同じ行動をとろうとする
確証バイアス:自分の考えや経験則を正当化する情報ばかりを探してしまう
権威バイアス:権威のある人の言うことは、間違いないと思い込む
ハロー効果:ある人を好きになると、その人に関するすべてのものを好意的に捉える
慈悲的差別:少数派(マイノリティ)に対し、好意的だが勝手な思い込みを持つ
アンコンシャスバイアスの問題点
まず認識しておきたいのは、アンコンシャスバイアスは日常にあふれていて、誰もが持ち合わせているものだということだ。アンコンシャスバイアスがあること、それ自体に良し悪しはない。問題は、それが自身や他者を縛る見えない足かせとなったり、無意識の思い込みが「言動」となって表出し誰かを傷つけたりしてしまうことだ。
【例】
- 単身赴任中の女性が「あなたのお子さんは、お母さんが近くにいなくて、かわいそうね」と言われる
→家族ごとに事情は違うのに、子どもが不幸だと決めつけられて傷つく/仕事を頑張る自分が悪いことをしているかのような気分になってしまう
- 家族のなかで母親だけがにこやかに家事を行う様子を描いたCMが繰り返し流れる
→「家事は女性がやるもの」というイメージが強化される/ワンオペ育児で苦しんでいる女性たちが「もっと頑張れ」と言われているように感じ、より苦しくなる
- 男性が「男は結婚して家庭を持って一人前だ」と言われる
→今家庭を持っていない自分が「不完全な人間だ」と言われているようで傷ついてしまう/セクシュアリティの問題を無視した決めつけに息苦しさを覚えてしまう
- 過去の経験から「私なんてどうせ無理」だと決めつける
→自分で自分をの可能性を狭め、成長機会を失ってしまう
また、近年、様々な企業で従業員に対し、無意識の偏見に気づき行動変容を行うための「アンコンシャスバイアストレーニング」が導入されている。しかし、アンコンシャスバイアスを解消するためのトレーニングが反対にアンコンシャスバイアスを助長してしまうケースもある。
例えば、米国では履歴書に書かれた名前の響きから黒人系、白人系と判断し、差別をするケースが見られる。米国で育った経験がない人は、もともとは名前だけで黒人か白人かを区別できるようなコンテクストを持っていない。しかし、アンコンシャスバイアストレーニングを通してそうしたケースについて学ぶことによって、かえって差別的なコンテクストをインプットしてしまうことがあるのだ。
このように、アンコンシャスバイアスを取り払おうとすることでかえってバイアスを強化してしまう恐れもある。アンコンシャスバイアスのトレーニングをする際は、こうした点にも気を配る必要があるだろう。
アンコンシャスバイアスをなくすには
アンコンシャスバイアスは無意識に抱くものなので完全になくすことはできないが、意識することでその存在に気づき、対処することはできる。具合的には下記を心がけ、実践してみよう。
2.自分の中にある「アンコンシャスバイアス」に気づく
3.コントロールしようとする
先述のように、アンコンシャスバイアスの問題点はその存在そのものではなく、自分でも気づかないうちに「決めつけ」や価値観の「押しつけ」をしてしまうことにある。よってまずは、アンコンシャスバイアスというものについて知り、自分の中にあるバイアスに「気づく」ことが重要だ。一人一人がアンコンシャスバイアスの存在を意識して行動することができれば、インクルーシブな社会へと一歩近づくはずである。
今、学校・企業教育の場で盛んに「アンコンシャスバイアス研修」が、おこなわれている。アンコンシャスバイアスへの認知が広まることで、学校や職場、ひいては社会が、多様な人々がより過ごしやすい場になっていくことを期待したい。
【参照サイト】アンコンシャスバイアスとは(一般社団法人アンコンシャスバイアス研究所)
【参照サイト】気づこう、アンコンシャス・バイアス~真の多様性ある職場を~(日本労働組合総連合会)
【参照サイト】Unconscious Bias (University of California, San Francisco Office of Diversity and Outreach)
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