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ゴーストフィッシングとは・意味

ゴーストフィッシング

ゴーストフィッシングとは?

紛失や放棄された漁具がそのまま海中に残留し、海洋生物を捕獲し続けること。日本では幽霊漁業ということもある。

現在使用されている漁網や仕掛け、釣り糸などの多くは自然分解されないプラスチックや化学繊維で作られており、放置された後も海の中を漂流し続け海の生き物たちの命を奪っている。このことから、こうした漁具はゴースト=幽霊に例えゴーストギアと呼ばれる。

プラスチック製の漁具は耐久性があり、軽く、安価なため世界中で利用されているが、一方で、簡単に廃棄され、海流によって広範囲に移動し、いつまでもその機能を持ち続けてしまう性質がある。こうしたゴーストギアは海洋生物を死に追いやり、その生態系や生息地にダメージを与えるだけでなく、船の航行を妨げることや、漁獲量の減少、観光など地域経済にも影響を及ぼすなど、海洋環境全体に壊滅的なインパクトを与える可能性があるとされている。

ゴーストフィッシングが起きている背景

WWFの報告によると、毎年約1,100万トンのプラスチックが海洋に流出していると推定されている。一方、年間50~100万トンの漁具が海洋に逸失、投棄、もしくは放棄されているとの試算があり、海洋ゴミ全体の約10%が漁業由来のものと言われる(※)。ゴーストギアは元々魚を獲るために設計されているため、流出後も同様に魚や海洋生物を捕獲し、苦しめており、海洋ゴミの中でも最も致死的な原因となっている。

こうしたゴーストギアが発生してしまう理由は悪天候などによるやむを得ないものもあるが、多くは過密漁業、過剰漁獲(乱獲)、IUU(違法・無報告・無規制)漁業に起因している。

ゴーストギアが海洋に流出する形としては、下記の3タイプが考えられる。

逸失:海洋での事故的な紛失。気象災害や海底の状況など自然環境に由来する場合や、漁具の配置の問題や漁具同士の干渉など適切に海洋空間管理されていない場所などで起こりうる。

投棄:海洋での意図的な廃棄。過剰漁具の使用によるものや、破損した漁具が交換や修理にもコストがかかるといった理由から廃棄されるものなど操業や経済的な背景に起因する。

放棄:海洋での意図的な非回収。IUUなど違法な漁業者による悪天候や夜間など悪条件の中での操業や、当局の摘発を受けるため漁具を切り離して逃走することなどを原因として発生する。

ゴーストギアの種類

刺し網

海中に大きな網を壁のように設置し、引っ掛かった魚を獲る待ち受け型の漁具。様々な漁具の中で、損失の可能性も海洋環境に与える影響も大きく、最もゴーストフィッシングを起こしやすいものの一つと言われる。その形状から流出後も魚を捕獲し続けることや、規制が整っておらず、深海に設置された刺し網が海底を傷つけるなど、絶滅危惧種なども多い深海の生態系にも致命的なダメージを与えている。

かごや壺などの仕掛け漁具

カニや海老などの漁に使われる中に餌を仕込んだトラップ型の漁具。プラスチック、竹、金属など様々な素材で作られ、刺し網同様流出しやすく、安価なものは探したり回収されたりしないまま海中に放置される。餌をつけた漁具は対象種以外の海洋生物を引き寄せ、さらにはそのトラップに捕まった生物を餌にする捕食者が集まり、捕獲をし続ける。また、嵐などの際に海底を動き回り海草藻場やサンゴを傷つけることや、船舶へ絡みつくリスクなどもある。

FADs

Fish Aggregating Devicesの略称で主にマグロやカツオなどの回遊魚を対象とした人工の集魚装置。筏状のものに使われなくなった漁網やロープ、プラスチック製のリボンなどを巻きつけた形状で、海中を移動し魚を捕獲する。ほとんどのFADsにはGPSが搭載され衛星で追跡が可能だが、実際は漁場外に出てしまったものは追跡や回収をやめて放置していることが多い。魚や海洋生物を捕獲し続けるだけでなく、漂流することで外来種の移動を引き起こしたり、海岸に流れつき沿岸の生息域にも有害な影響を与えたりすることも問題視されている。

これらの3種は与えるインパクトが大きく、ゴーストフィッシングを引き起こすものとして最も懸念されているが、上記以外の釣り針や釣り糸、まき網や引き網などの漁具も少なからず海洋環境を悪化させる原因となっている。

解決、改善に向けた取り組み

世界の各地でこうしたゴーストギアの問題が起こっているが、漁業は複雑で横の連携が難しく、海洋環境へのダメージを軽減するための取り組みがあっても、それは各地域にとどまっていることが多い。根本的な解決を目指すために2015年に分野横断的な活動を行う組織としてGGGI(Global Ghost Gear Initiative)が設立された。民間セクター、学界、政府、国際機関、および非政府組織などのメンバーから成っており、連携した解決の枠組みや重要なガイダンスの開発などが行われている。

ゴーストギアによる影響を軽減するにはまず漁具の流出を防ぐことが必要である。ここでは現在取り組みが行われている3つのアクションを紹介する。

1.予防的なアクション

漁具の流出を防ぐための手段として、特定の漁具の使用禁止、密集した操業や混在した漁具を使用する操業の規制が効果的である。また漁具のマーキングは視認性の向上と所有者の識別を兼ね、流出の軽減だけでなく、回収を容易にし、合法と違法の漁業の識別にも役立つ。さらに使用済みの漁具を適切に回収・廃棄・リサイクルするための政策や規制の導入が進められている。

2.軽減のためのアクション

漁具が流出してしまった際に、ゴーストフィッシングを防いだり、またその影響を軽減する方法が重要となる。現在、漁具の設計段階で生分解性の素材を取り入れる取り組みが行われているが、これは漁具としての機能を無効化させることにつながる。しかし生分解性の漁網はまだ検証段階のものも多く、他の漁具への応用なども考えるとさらなる研究が必要だ。

3.回復のためのアクション

予防や軽減のためのアクションを取っていても、どうしても流出が防ぎきれない漁具もあるのが現状だ。そうした場合、流出した漁具を適切に取り除くことで、ゴーストフィッシングによる被害を緩和や根絶できる。これまでにも蓄積したゴーストギアを回収する大規模なプロジェクトから、定期的に漁場で体系的な清掃を行うものまで、各地で実施されているが、最近では流出した際の簡易報告とそれを体系的に回収できる双方のシステムを備えたものが登場している。

まとめ

2023年6月19日、国連で国連公海条約案が採択された。海洋保護に関しては1982年に「国連海洋法条約」が締結されたのを最後に国際的なレベルでの規制や目標はなく、包括的な国際協定の必要性が問われていた中で、これは歴史的な一歩である。この条約では、これまで包括的な枠組みがなく、海洋ガバナンスの中の大きな穴とされていた公海の保全と持続可能性にまで踏み込んで言及されている。

また、持続可能な開発目標(SDGs)14では、「2025年までに、海洋ごみや富栄養化を含む、特に陸上活動による汚染など、あらゆる種類の海洋汚染を防止し、大幅に削減する」ことを目指しており、今後より積極的な取り組みが期待される。私たち一人ひとりが改めてこの問題を認識し、知見を共有し、行動を起こすことで美しい海を取り戻したい。

WWF | 報告書『ゴーストギアの根絶に向けて~最も危険な海洋プラスチックごみ~』(日本語版)

【参照サイト】WWF | 報告書『ゴーストギアの根絶に向けて~最も危険な海洋プラスチックごみ~』(日本語版)
【参照サイト】Greenpeace | GHOST GEAR: THE ABANDONED FISHING NETSHAUNTING OUR OCEANS
【参照サイト】Global Ghost Gear Initiative | About Us
【参照サイト】国連広報センター | 国境を越えて:なぜ新たな「公海」条約が世界にとって不可欠なのか(UN News 記事・日本語訳)
【関連記事】海の問題に国境はない。国連が初めて「公海」を保護する条件案を採択
【関連記事】IUU漁業とは?数字と事実・原因・解決策




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