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ウォーターポジティブとは・意味

ウォーターポジティブ

ウォーターポジティブとは

ウォーターポジティブとは、消費する水よりも多くの水を供給することを目指す取り組みを指し、持続可能な水資源管理の重要なコンセプトのことを言う。世界的に淡水資源の不足が深刻化している中で、企業や団体が水の消費を抑え、さらに水を地球に還元することにより、地域の水供給や水資源の保護に貢献しようとしている。

ウォーターポジティブを実現するための方法には主に2つのアプローチがある。1つは水の消費を削減することであり、もう1つは供給を増やすことである。消費削減に関しては、企業や産業が水の使用効率を向上させ、できるだけ少ない水で同じ生産を行うことが求められる。例えば、工場での生産過程で使用される水を浄化して再利用したり、灌漑に使用される水を効率化する技術を導入したりすることで、水の無駄遣いを減らすことができる。また、建物や都市全体での節水対策もこの一環であり、シャワーヘッドやトイレの節水機能を強化するなど、日常生活における小さな改善が大きな影響を与えることもある。

水不足の現状と世界での動き

地球の表面の3分の2は水で覆われているが、そのほとんどは海水だ。淡水は、約2.5%あるが、その多くは北極や南極の氷河として存在している。残りの0.08%の淡水の大部分は地下水であるため、人が利用しやすい河川や湖沼などから得られる淡水の量は地球全体の水の約0.01%と極めて少ない。

そんな貴重な資源である淡水だが、その枯渇が課題となっている。国際連合広報センターによると、世界人口の増加や気候変動による洪水や干ばつなどの要因から、2030年までに必要な量の40%分の淡水が足りなくなるとされている。2018年時点では、20億人以上が衛生的に安全でない水を飲み水とすることを余儀なくされているほか、水不足による影響は、健康を害されることによる就学や就業の機会の制限、全世界での社会的経済的な混乱をもたらすと言われている。

水不足に対する国際的な枠組みとしては、2015年に終了した国際行動のための10年「命のための水」に続き、2018年から2028年の間で「持続可能な開発のための水」が始まっている。持続可能な開発目標(SDGs)の「水と衛生」に関する目標6と合わせて水資源の確保と衛生面の改善が期待されている。水問題の改善は、人々の健康や教育、食料、生態系などあらゆる他のSDGsの解決にもつながっている。

ウォーターポジティブ実現に向けた企業の取り組み

世界中で様々な企業がウォーターポジティブ実現のために取り組んでおり、マイクロソフトなどの大企業も水の供給に対して企業活動を通して貢献している。ここでは大手企業の取り組みを中心に紹介する。

Meta(旧Facebook)

2030年までにウォーターポジティブな企業になることを宣言したMeta(旧Facebook)。同社は、データセンター(※1)を冷却するために大量の水を使用しており、アメリカのアルバカーキのデータセンターは、年間5億リットルの水を利用する権利を持っている。

Metaは、責任ある水資源の調達、施設や事業全体での水利用の効率を高めること、施設がある流域の水再生プロジェクトへの投資を進めており、すでに、ニューメキシコ州、カリフォルニア州などのアメリカの6州で年間8億5000万ガロン(約32億リットル)以上の水の補給プロジェクトに投資している。今後は、シンガポール、メキシコ、アイルランド、イギリスなどにも投資を拡大していく予定だ。

※1 データセンターとは、インターネット用のサーバやデータ通信、固定・携帯・IP電話などの装置を設置・運用することに特化した建物の総称を指す。オフィスでは、夜間や休日など室内に人がいない時でも、室内のサーバ冷却のため空調を行っているところがある。(日本データセンター協会より引用)

Google

Googleも2030年までにウォーターポジティブを達成することを目指している。同社の取り組みは、水に関わる幅広い事業を展開しており、ここではテクノロジーに焦点を当てて取り組みを紹介する。

  • データとしての水
  • Googleは、水に関するデータやテクノロジーを、地域と世界レベルで誰でも利用できるようなツールを開発している。「BlueConduit」は、機械学習を利用した方法で、専門技術を持っていなくても排水管の交換費用の見積もりができるなど、効率的な水資源の回復性が向上するとされている。

  • 水ストレスの予測と防止
  • Googleが、UNEPや欧州委員会の共同研究センター(JRC)と共同開発した「Fleshwater Ecosystem Explorer」は、地表水の変化を可視化、定量化できる地理空間プラットフォームで、意思決定者が淡水系のデータにアクセスできるようになる。

    水ストレスとは・意味

    Nestlé

    スイスを拠点とする世界最大級の食品・飲料会社であるNestléの「ゼロウォーター」工場は、外部からの新しい水を使用せず、製造過程で使用した水を浄化し再利用することで、完全に水の使用をゼロに抑えている。これにより、特に水不足が深刻な地域での工場運営が持続可能になっている。さらに、Nestléは農業分野でも積極的に取り組み、ドリップ灌漑や土壌水分センサーを導入して水の使用効率を高めている。これにより、環境への影響を最小限に抑えつつ、地元コミュニティの水資源保護に貢献しているのが特徴だ。

    Nestléはまた、持続可能な水管理に関する研究や技術開発にも投資し、水資源の回復と保護を進めている。これには、パートナーシップを通じた水プロジェクトの推進も含まれており、特に水ストレスが高い地域での水源保全に注力している。

    PepsiCo

    アメリカを拠点とする多国籍食品・飲料会社であるPepsiCoは、水ストレスの高い地域で持続可能な水管理を強化している。同社はスマート灌漑システムを導入することで農業用水の効率化を図り、作物生産時の水使用を削減している。さらに、水の再生プロジェクトにも取り組んでおり、地域の水供給を改善し、コミュニティに持続可能な水資源を提供している。具体的には、河川の回復や地下水の補給など、地域の水資源保護に向けた取り組みを拡大し、年間数千万ガロンの水を再生している。

    また、PepsiCoはパートナーシップを通じて、現地コミュニティと連携し、持続可能な水供給のインフラを強化することで、長期的に地域の水ストレスを軽減。これにより、環境への影響を抑えつつ、持続可能な農業と水管理の実現を目指している。

    サントリー

    国内では、サントリーが「ウォーターポジティブ」な取り組みを推進しており、使用する水量以上の水を自然に還元することを目指している。この目標のために、水源涵養活動や、森林保全、水の再利用技術を活用し、持続可能な水資源管理を実施している。特に水源地の森林を保全し、雨水の地下水への還元を促進する取り組みが強調されており、地域社会や環境の保護にも貢献している。

    まとめ

    水不足は人間の健康はもちろん、長期的に地球全体に影響を及ぼすことがわかっている。日常生活での節水などは、すでに意識して行動している人も多いだろう。

    地域や国など、より大規模で水を確保するために個人として何をすべきだろうか。ウォーターポジティブに真剣に向き合っている企業のサービスや商品を購入するなど、サポートすることで間接的に関わることもできる。

    IDEAS FOR GOODでは、水不足をユニークな方法で解決する取り組みを紹介している。たとえば、空気中の水分を飲料水に変える技術や、下水をアップサイクルしたビールなどがある。世界のアイディアに触れながら情報収集をし、話しやすい誰かにシェアしてみてはどうだろうか。

    【参照サイト】国土交通省 世界の水資源
    【参照サイト】国際連合広報センター 水の国際行動の10年-2018-2028 世界的な水危機を回避するために
    【参照サイト】The Guardian Facebook pledges to become ‘water positive’ by 2030
    【参照サイト】Google Googleのオフィスとデータセンターで行われている水使用量の削減、補給、水質改善への取り組み
    【参照サイト】日本データ協会センター データセンターとは
    【参照サイト】ウォーターポジティブ(サントリー)




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