Browse By

エイブリズム(Ableism)とは・意味

Group of people hold hands. Friends together with disabled. One continuous line drawing vector illustration.

エイブリズムとは?

エイブリズム(Ableism)とは、能力のある人が優れているという考えに基づいた、障害者に対する差別と社会的偏見を意味する。辞書には「障害(=他の人がすることが難しくなるような病気、怪我、状態)を持っていることを理由に不当な扱いを受けること(出典元:Cambridge Dictionary)」と記載されている。日本語では「非障害者優先主義」「健常者優先主義」、「能力主義」とも訳される。

エイブリズムの根底には、障害者は「治す」必要があるという前提があり、障害によって人を定義する考え方がある。エイブリズムは、人種差別や性差別と同様に、ある集団全体を「劣ったもの」として分類し、障害を持つ人々に対するステレオタイプや誤解、一般化などを含む。

エイブリズムの具体例

社会のなかでのエイブリズムは、具体的に何を指すのだろうか。社会のデザインから、日常的で無自覚なものまで、いくつか挙げてみる。

  • 建物の設計にアクセシビリティ(※1)の観点を取り入れない
  • 障害を持つ人がアクセスしにくいウェブサイトを構築する
  • 障害を持つ人は「治す」ことを望んでいる、「治す」ことが必要であると思いこむ
  • 障害をジョークのオチにしたり、障害を持つ人を馬鹿にしたりする
  • 障害を持つ生徒を別の学校に隔離する
  • 障害を持つ生徒を管理する手段として、拘束や隔離を行う
  • 障害を持つ大人と子供を施設に隔離する
  • ニュースや映画などのメディアで、障害を悲劇的あるいは感動的なものとして取り上げる
  • 映画や演劇、テレビ番組などで、障害のある人物を演じるために障害のない俳優を起用する
  • 音声ガイドやクローズドキャプション(音声・台詞などを字幕化したもの)がない映画をデフォルトだと考える
  • 目に見える障害がなければ、実際に障害があることにはならないと思い込む
  • 障害のある人に対して、幸せで友好的で素朴、予測不可能で危険、冷淡で無粋などのステレオタイプに当てはまると思い込む
  • 障害のある人に対して、子供に話すように話しかける
  • 障害のある人に直接話しかけない(障害のある人が目の前にいるにもかかわらず、その隣にいる障害のない人と、障害のある人「について」話す。または障害のある人「のために」話す)
  • 誰かが「実際に」障害者であるかどうか、あるいは「どの程度」障害者であるかを質問する
  • 障害のある人の病歴や個人的な生活について、関係性が構築されていない状態で立ち入った質問をする

※アクセシビリティとは、情報やサービスなどがどれくらい利用しやすいか、障害を持つ人や高齢者などが不自由なく利用できるかどうかの度合いを示す。

エイブリズムとパラリンピック

エイブリズムは、2020年東京パラリンピックの課題としても取り上げられた。順天堂大学スポーツ健康科学部の渡正准教授は、パラリンピックをきっかけに「障害を持つ人々の間でも、能力主義的な格差が助長されるのではないか」という不安を語る。

勝ち負けがつきもののスポーツにおいて、できなかったことを克服し、勝利を目指す障害を持つ人が素晴らしいとされてしまうと、高度な運動能力を持つパラリンピック選手と、スポーツをしない・できない障害を持つ人の間で隔たりが生じる。

車いすマラソンで、パラリンピックに2大会出場した花岡伸和氏は、2018年7月に開催された東京大学先端科学技術研究センター主催のシンポジウム『日常への帰還』にて、「身体機能を最大限に生かしている人」や「強者」というパラリンピアンのイメージが「障害者のイメージとして定着すると危険です」と話している。

世の中にはスポーツが嫌いな人もいれば、さまざまな理由でできない人もいる。障害の種類や程度も人それぞれ異なる。

だが、スポーツが持つ能力主義的な側面や「勝利を目指す障害を持つ人は素晴らしい」「特別な能力がある障害を持つ人」といったイメージは、スポーツをしない・できない障害を持つ人に「劣っている」と考える人を増やしたり、難しい状況を乗り越えない障害を持つ人に「怠けている」と考える人を増やしたりする可能性があると考えられている。

エイブリズムに直面した時に、私たちができること

エイブリズムは、その時代の社会による価値規範の影響を受けやすい。そんなエイブリズムを認識したとき、それを回避するためにできることを最後に紹介する。

  • 障害を明らかにした人を信じる
  • 同様に、その人に対して障害を「偽っている」と非難しない
  • 障害を持つ人が助けを必要とした時には、その人の話を聞く
  • その際、その人が何を必要としているかを知っていると思い込まない
  • 障害を持つ人の同意なしに、その人自身やその人が利用する用具に触れない
  • 興味本位の質問は、自分の中だけにとどめておく
  • 障害を持つ人から明確に依頼されない限り、その人の代わりに話をしない
  • 子供や若者と障害について話す
  • イベントの開催や事業にアクセシビリティの視点を組み込む

そしてエイブリズムに対抗するために最も重要なことは、意思決定が行われる場に障害を持つ人がいることである。

【参照サイト】Ableism 101 – What is Ableism? What Does it Look Like?
【参照サイト】Words Matter, And It’s Time To Explore The Meaning Of “Ableism.”
【参照サイト】Disabled People Have an Ally Problem: They Need to Stop Talking For Us – Crutches and Spice
【参照サイト】東京パラリンピックを前に “能力主義”とどう付き合うか – 記事 | NHK ハートネット
【参照サイト】田中恵美子『2019年度学界回顧と展望 障害児・者福祉部門』社会福祉学 第61巻第3号、2020年




用語の一覧

あ行
か行
さ行
た行
な行
は行

ま行
や行
ら行
わ行
A
B
C
D
E
F
G
H
I
J
L
M
N
O
P
Q
R
S
T
V
W
X
数字

FacebookTwitter