Cycle logistics（サイクルロジスティクス）とは？

Cycle logistics（以下サイクルロジスティクス）とは、大きな荷物を運搬できるように設計・開発されたカーゴバイクと呼ばれる自転車で荷物を輸送することをいう。現在は運送用トラックや自動車などを使った輸送が主流となっているが、気候変動への対策という観点からこのサイクルロジスティクスを普及させる活動が世界各地で行われている。

2030年までに再生可能エネルギーの使用割合を全体の40％に到達させることを目標としているヨーロッパでは、都市部を中心にサイクルロジスティクスが導入され始めている。ヨーロッパ自動車連盟（ECF）は2021年のレポートの中で、「コロナ禍でサイクルロジスティクスは急拡大しており、多くの国々で都市部のみならず地方の自治体が自転車輸送の活用を後押ししている」と述べている。

Cycle logistics（サイクルロジスティクス）によるメリット

ガソリンや電気といったエネルギーを必要とする自動車輸送から自転車輸送に切り替えることで、環境保護だけではなく、以下のとおりさまざまなメリットが期待できる。

• サステナブルな都市物流の実現
• 交通渋滞や交通事故の削減
• 市民の健康増進による生活の質向上
• 騒音の防止

欧州委員会のレポートによると、依然として歩行者や自転車を巻き込んだ交通事故は絶えないものの、2021年のEU全体の交通事故死の数は前年を約4,000人下回った。自転車での移動や輸送が増えたためだと安易に関連付けることはできないが、車の交通量が減少することで防げる事故は多いはずだ。

また、街全体で自転車を使った移動や輸送が活発化すると、運動が習慣化して健康維持や増進に繋がることも期待できる。日々の生活に適度な運動を取り入れることでストレスが軽減され、生活の質向上にも貢献するだろう。

このように、サイクルロジスティクスには従来の輸送方法にはないメリットが存在しているのだ。

Cycle logistics（サイクルロジスティクス）の普及について（欧州）

ヨーロッパでは年間およそ1,700万台の軽量自動車（普通自動車を含む）が登録される中で、カーゴバイクの登録数はおよそ30万台だ。しかし実際には、30万台のうち約半数以上は個人利用のために購入される自転車である。すなわち、都市物流という観点でいえば輸送のためのカーゴバイクが広く浸透しているとは言い難く、物流におけるカーボンニュートラル達成にはほど遠い。気候変動への対策を進めるにあたって目標をクリアするためには、サイクルロジスティクスをさらに拡大させていく必要があると言えるだろう。

現在ヨーロッパでは「City Changer Cargo Bike（CCCB）」という、企業や市民に対してカーゴバイクの使用を促進するプロジェクトが進められている。公的機関や調査機関、NGOなど計22の団体や組織とパートナーシップを結び、ワークショップを開くなど教育の場の設置や、カーゴバイクの低価格での購入やシェアリングサービスといったカーゴバイクビジネスにおける資金調達スキームの確立など様々な活動を行っている。

Cycle logistics（サイクルロジスティクス）の普及について（日本）

現在日本における交通手段として自転車が占める割合は全体の13％と、自転車先進国のヨーロッパと比べても高い水準にある。しかし個人利用によるところが大きく、ビジネスシーンでの輸送手段としてはあまり浸透していないのが現状だ。国全体としてもエコな移動手段として普及を促進している一方、ヨーロッパのように各自治体や企業にまで積極的に入り込んでビジネスでの活用を促す動きはまだ見られないようである。

ただし、コロナ禍でいっそうeコマースやフードデリバリーサービスの需要が高まっており、店舗や営業所から自宅までの「ラストワンマイル」を自転車による配送で賄う例が増加している。今後サイクルロジスティクスが2050年カーボンニュートラル実現のための有効な手段であるという認知が日本でも広がり、ビジネスにおいて重要な選択肢の一つとして確立されることを期待したい。

【参考サイト】ECF – Annual Report 2021
【参照サイト】Urban Mobility Weekly – Five Key Ingredients for Successful Cycle Logistics Uptake
【参照サイト】City Changer Cargo Bike HP
【参照サイト】経済産業省 – 自転車の活用に関する現状について

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