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バイオオーグメンテーションとは・意味

バイオオーグメンテ―ション

バイオオーグメンテーションとは?

バイオオーグメンテーションは、「生物」を意味する「bio」と「添加」を意味する「augmentation」をかけ合わせた言葉。土壌・地下水資源や掘削廃液中の汚染物質に、培養した微生物を添加し、分解する手法を指す。

これは、微生物などの働きを利用して汚染物質を分解等し、土壌などの汚染の浄化を行う「バイオレメディエーション(※1)」の手法の一つだ。バイオレメディエーションには、全部で3つの手法が挙げられる。

  1. バイオオーグメンテーション
  2. バイオスティミュレーション
  3. ファイトレメディレーション

バイオスティミュレーションはスティミュレーション(stimulation=刺激)と表されるように、汚染地域に元々存在している微生物を、栄養物質等または酸素を加えて“刺激”し、活性化させることで浄化を行う手法。

ファイトレメディレーションはギリシャ語の「Phyto(植物)」とラテン語の「remedium(修復)」を組み合わせた造語で、植物を用いて、土壌や水などから汚染物質を除去する手法である。

バイオオーグメンテーションのメリット

バイオオーグメンテーションのメリットは、なんといっても人工的に菌を添加できることだ。

先に紹介したバイオスティミュレーションでは、汚染地域に汚染物質を分解する微生物が存在することが前提となる。そのため、分解菌の数が極端に少なかったり、まったく存在しなかったりする場合には行うことができない。そのような場合に、人為的に分解菌を“添加”するバイオオーグメンテーションが役立つ。

2000年、公益財団法人地球環境産業技術研究機構(RITE)が日本初のバイオオーグメンテーション実証実験を行った。実験では、対象汚染物質であるトリクロロエチレン(TCE)を分解する菌を外部で増殖・活性化したあと、千葉県君津市のTCE汚染サイトに注入した。その結果、分解菌の注入によってTCE濃度が環境基準値以下を達成し、有効性が確認されている。

バイオオーグメンテーションは、バイオスティミュレーションよりも浄化速度が速くなることが期待されている。田中孝国による論文『バイオオーギュメンテーションを用いた廃水処理技術の検討』によると、「難分解性物質分解菌」を添加することで、迅速な分解が期待できるという。

上記論文では、化学物質の一つトルエンを分解する菌を廃水処理技術の一つである「活性汚泥法」の活性汚泥(※1)に添加し、難分解性汚染物質としてトルエン類似物質(トルイル酸)の分解実験が行われた。活性汚泥のみの場合、難分解性汚染物質が流入すると馴養(※2)期間が必要となる。一方バイオオーグメンテーションでは、活性汚泥のみの場合と比べ、汚染物質はすみやかに分解された。

バイオオーグメンテーションは、油田の掘削くずの中に含まれる多環芳香族炭化水素(Polycyclic Aromatic Hydrocarbons: PAHs、ベンゼン環を2個以上持つ化合物の総称)など、自然環境中で分解が遅く、これらを分解する菌の数も少ないと思われる難分解性汚染物質の浄化も期待されている。

バイオオーグメンテーションの実例

2005年3月、環境省と経済産業省が共同で「微生物によるバイオレメディエーション利用指針」を策定した。これは生態系等への影響に配慮した適正な安全性評価及び管理手法のための基本的な考え方を指針として示したものである。バイオオーグメンテーションを実施しようとする事業者が所有する微生物群の適合確認は適宜行われている。

栗田工業株式会社が所有する、Dehalococcides属を含む嫌気性微生物群は、浄化事業で実績を挙げている。

塩素化エチレンを原位置で分解・無害化する「バイオオーグメンテーション」法を開発。国内初の指針適合(経済産業省・環境省)

株式会社奥村組は、鉱物油を分解する3種類の微生物を利用した浄化で実績を収めている。

大成建設株式会社はベンゼンを分解する微生物や塩素化エチレンを分解する微生物を利用した浄化で実績を収めている。

バイオオーグメンテーションの課題

汚染物質の浄化や分解速度に期待が高まるバイオオーグメンテーションだが、一方で課題も多い。

例えば、“添加”を行うため、分解菌を大量に増殖させる必要があること。そのため、バイオスティミュレーションよりも手間とコストがかかる。

そしてバイオオーグメンテーションは、実験室内の実験では微生物群が効果を示しても、フィールド試験では効果を示さなくなることが度々課題として挙げられる。

たとえば海岸の石油汚染へのバイオオーグメンテーションの効果を確認する試験が行われているが、バイオオーグメンテーションの効果を示す結果は得られていない。

アメリカ合衆国環境保護庁がデラウェア湾で行ったバイオオーグメンテーションの有効性を検証する試験においても、バイオオーグメンテーションの区画より、バイオスティミュレーション区画の方が速い原油分解速度を示す結果となった。使用された微生物は現場から単離されたものではあるが、実験室で培養を続ける中で、実験室内の環境に適応してしまったことが考えられる。

さらに、環境中へ“添加”された微生物が生態系にどのような影響を及ぼすのかといった科学的知見の不足から、バイオオーグメンテーションへの人々の理解が得られにくいという課題もある。

まとめ

課題があるとはいえ、汚染された現場に投入する分解菌によっては効果を発揮する可能性は十分ある。またバイオオーグメンテーションは汚染された地域で行われることから、特定の処分場へ廃棄物を輸送するなどのコスト削減にも役立つ。

バイオスティミュレーションなどでは容易に分解できない難分解性汚染物質を、短期間で、低コストで分解することができれば、バイオオーグメンテーションがより活用されることが期待される。

2021年には三井住友株式会社がバイオオーグメンテーションに関する論文『寒冷地における複合微生物製剤を利用した油汚染の浄化』を発表するなど、ますます世界的に研究が進められている。

今後も研究の発展が期待される環境汚染浄化技術といえる。

※1 環境省_微生物によるバイオレメディエーション
※2 下水や廃水に含まれる有機物を酸化分解する微生物を繁殖させて生じる泥状の沈殿物。汚水処理に利用。(出典元:小学館 デジタル大辞泉)
※3 馴養(じゅんよう)とは、阻害物質に強い耐性を持つ活性汚泥を育てるための工程のことである。主に下水処理、工場排水処理の過程で必要な工程である。馴養は、活性汚泥に少しずつ阻害物質(酸やアルカリなど)を加え続けることで行う。(引用元:馴養(じゅんよう)とは | 建設・設備求人データベース)
【参照サイト】What is Bioaugmentation? – Definition from Trenchlesspedia
【参照サイト】バイオレメディエーションとは – 環境省
【参照サイト】バイオスティミュレーションとバイオオーグメンテーション|バイオテクノロジー|製品評価技術基盤機構
【参照サイト】プロジェクトの概要
【参照サイト】環境省_微生物によるバイオレメディエーション|利用指針とは
【参照サイト】有効性の評価|バイオテクノロジー|製品評価技術基盤機構
【参考文献】石川洋二『バイオオーグメンテーション事業化に向けて』(環境技術Vol.34 No.4、2005年
【参考文献】田中孝国『バイオオーギュメンテーションを用いた廃水処理技術の検討』(小山工業高等専門学校研究紀要/40 巻、2008年)
【参考文献】高畑陽『バイオオーグメンテーションの実用化への可能性と課題』(日本生物工学会大会講演要旨集. 64、2012年)
【参考文献】奥津徳也『Dehalococcoide 属細菌を含む複合微生物系を利用したバイオオーグメンテーション技術の開発と現場適用』(環境バイオテクノロジー学会誌13巻1号、2013年)




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