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プラスチック・オーバーシュート・デーとは・意味

プラスチック

プラスチック・オーバーシュート・デーとは?

プラスチックの廃棄量が全世界で正しく管理できる年間の廃棄量を超え、その結果環境汚染の発生につながるとされる日。2023年に初めて設定され、世界のプラスチックオーバーシュートデーは2023年7月28日と発表された。世界全体のものとは別に国ごとの日程も設定されており、日本は2023年11月22日となっている。

設定の背景

オーバーシュート・デーといえば、2006年から毎年公表されているアース・オーバーシュート・デーがある。これは1年間に地球が再生産できる自然資源の量を人間による消費が上回る日のことを指す。同じく人類が地球に与える負荷を指標として表したものだが、年々問題が深刻化しているプラスチックにフォーカスし注意喚起を促すものとして、スイスのNGOであるEarth Action(以下、EA)が報告書をまとめ発表した。

EAによるとプラスチックの生産量は過去10年間でそれをリサイクルできる能力の20倍の速さで増加していると言われている。2023年に世界で生産される短寿命のプラスチックは1億5900万トンに達するとされるが、一方で発生するプラスチックの43%が誤った方法で廃棄され、その量は今年だけでも6,860万トン以上と推定される。このまま何も手を打たないと2040年までにプラスチックの生産量は倍増し、プラスチックを原因とした汚染が約3倍に広がることも想定されている。

また、現在世界の人口の約40%が、廃棄物の発生がそれを管理できる能力を超えた場所に住んでいる。これらの地域はプラスチックの生産、消費の多い先進国などの廃棄物を受け入れざるを得ないいわゆる「グローバルサウス」と呼ばれる国々に多い。こうした不均衡がプラスチックによる地球環境の汚染や生態系への影響をさらに加速している。

すでに猶予はなく、国だけではなく、企業、個人もこの事実を認識し、早急な対応や行動変容を起こすことが求められている。

10のアーキタイプ(典型)

国別のプラスチック・オーバーシュート・デーは、人々が排出するプラスチック廃棄物の量とそれに対する管理能力と管理状況を反映し、算出されている。

またEAは、それぞれの国に効果的な解決策を提示し、促進するため以下の5つの項目をベースに、それぞれの国を10のタイプに分類した。

  1. 国民が生産し、使用するプラスチックの量
  2. 使用済みプラスチックが廃棄物となった時に、どれだけ適切に管理しているか
  3. その国が輸出するプラスチック廃棄物の量
  4. その国が輸入するプラスチック廃棄物の量
  5. 輸入される廃棄物を受け入れた後、どれだけ適切に管理しているか

ここからは各タイプの特徴と、該当国、2023年に起こると予測されるプラスチック・オーバーシュート・デー全157日に占める割合を紹介する。

トランザクター(Transactors)

プラスチックの消費、使用量が多い国。ヨーロッパの先進国などに多く、比較的廃棄物の管理の体制は整っている。多くの廃棄物を輸出する一方で、近隣の国の廃棄物を輸入する取引を行い廃棄物管理の最適化を図っている。その結果誤って管理される廃棄物の量も少なく、環境へのプラスチックの流出リスクも低いとされる。

フランス、イギリス、デンマーク、ドイツ、スイス、フィンランド、ノルウェー、シンガポール、オーストラリアなど

トランザクター諸国が、2023年の全プラスチック・オーバーシュート・デーに占める割合:4.65/157日

セルフ・サステイナー(Self-Sustainers)

プラスチックの消費量が中程度から多い国々で、廃棄物を自国で管理し、他国への輸出に大きく依存していない。国内で廃棄物を処理するためのインフラに投資し、持続可能な廃棄物管理を実践している。アジアやカリブ諸国の島国に多く、中国もこれに該当する。

中国、香港、台湾、グアム、バハマ、プエルトリコ、モナコ、グリーンランドなど

セルフ・サステイナー諸国が、2023年の全プラスチック・オーバーシュート・デーに占める割合:17.72/157日

ストラグラー(Strugglers)

プラスチックの消費量は中程度から大量とされるが、他国への廃棄物の輸出は少ない。ただ、国内では、不十分なインフラ、資源不足、適切な廃棄物管理規制や政策が整っていない、など廃棄物管理に大きな課題を抱えている。アフリカ、中東、島国などに多い。

アルバニア、ブータン、カボベルデ、中央アフリカ共和国、キューバ、ハイチ、イラク、キリバス、コソボ、リビア、ニューカレドニア、オマーン、パラオ、パナマ、カタール、トンガ、ツバルなど

ストラグラー諸国が、2023年の全プラスチック・オーバーシュート・デーに占める割合:12.11/157日

オーバーローダー(Overloaders)

プラスチックの大量消費国であり、かなりの量の廃棄物を輸出している。廃棄物処理は適切に管理はされているが、トランザクターとは異なり、他国の廃棄物の輸入は行っていない。
そのため、この不均衡が輸出先の国の廃棄物管理システムに過度な負荷をかけ、その国々において廃棄物の不適切な管理の問題を引き起こしている可能性が高い。

米国、スペイン、韓国、アイスランド、イスラエル、マルタ、バルバドス

オーバーローダー諸国が、2023年の全プラスチック・オーバーシュート・デーに占める割合:4.68/157日

トキシック・エクスポーター(Toxic Exporters)

プラスチックの大量消費国であり、その廃棄物はほとんどの場合、廃棄物管理のインフラが整っておらず適切に管理されていない国々に輸出されることが多い。多くの国々におけるプラスチック汚染は、このトキシック・エクスポーターから出された廃棄物が不適切に管理されることに影響を受けている。

ベラルーシ、ブルネイ、 カザフスタン、 クウェート、 マレーシア、 モルドバ、 モンゴル、 モンテネグロ、 サウジアラビア、タイ、アラブ首長国連邦、ウルグアイ

トキシック・エクスポーター諸国が、2023年の全プラスチック・オーバーシュート・デーに占める割合:19.06/157日

ウェイスト・セイバー(Waste Saviors)

プラスチックの消費レベルが中程度で、廃棄物の管理も比較的行き届いている。ウェイスト・セイバーの国々は、自国だけでなく他国からの廃棄物管理の支援も行っており、世界の廃棄物危機に対して全体的に良い影響を与えている。

コスタリカ、クロアチア、エストニア、ハンガリー、ラトビア、リトアニア、ニュージーランド、スロバキア共和国、スウェーデン

ウェイスト・セイバー諸国が、2023年の全プラスチック・オーバーシュート・デーに占める割合:0.31/157日

ウェイスト・スポンジ(Waste Sponges)

プラスチックの消費量は少なく、他国からの廃棄物を受け入れ、世界的な廃棄物危機に対処しようと努力している。しかし他国の廃棄物だけでなく、自国の廃棄物の管理にも苦慮しており、プラスチック汚染のレベルは高い。多くはアジア、東欧、中東、アフリカの国々である。

アフガニスタン, バングラデシュ, ブルガリア, チリ, コートジボワール、エクアドル、エジプト、ガーナ、ギリシャ、インド、インドネシア、ラオス、レバノン、メキシコ、モロッコ、ミャンマー、ナイジェリア、パキスタン、ペルー、フィリピン、ルーマニア、ロシア連邦、南アフリカ、トルコ、ウクライナ、ウズベキスタン、ベトナムなど

ウェイスト・スポンジ諸国が、2023年の全プラスチック・オーバーシュート・デーに占める割合:66.86/157日

セレクティブ・エクスポーター(Selective Exporters)

プラスチックの消費量は少量から中程度で、廃棄物の一部を海外に輸出し、残りを国内で処理している。比較的適切な体制で廃棄物管理が行われている。

日本、バーレーン、ドミニカ、モーリシャス

セレクティブ・エクスポーター諸国が、2023年の全プラスチック・オーバーシュート・デーに占める割合:0.98/157日

エクスポーティング・ポルーター(Exporting Polluters)

プラスチックの消費レベルが低いか中程度。廃棄物のうちの多くは輸出され、残りを国内で処理している。しかし、効果的な廃棄物管理が行われておらず、その結果、国内と輸出の受け入れ先の国々との両方で環境に悪影響を及ぼしている。南米、アフリカ、中東などの国に多い。

アルゼンチン、ボリビア、ブラジル、カンボジア、コロンビア、エチオピア、フィジー、グルジア、ジャマイカ、ヨルダン、ケニア、マダガスカル、モルディブ、ネパール、ルワンダ、セネガル、スリランカ、チュニジア、ウガンダなど

エクスポーティング・ポルーター諸国が、2023年の全プラスチック・オーバーシュート・デーに占める割合:22.95/157日

スモールスケール・インワード・ポルーター(Small-Scale Inward Polluters)

プラスチックの消費量が少ないにもかかわらず、廃棄物管理が不十分なため、プラスチック汚染の原因となっている。これらの国々は廃棄物を輸出していないため、不適切な管理の結果生じる汚染は自国の環境で発生する。アフリカや南西諸島の島国などの国が多い。

カメルーン、チャド、コンゴ、カメルーン、コンゴ民主共和国、ジブチ、ガンビア、イラン、リベリア、ニジェール、パプアニューギニア、ソマリア、スーダン、トルクメニスタン、バヌアツ、イエメンなど

スモールスケール・インワード・ポルーター諸国が、2023年の全プラスチック・オーバーシュート・デーに占める割合:8.28/157日

プラスチックによる環境汚染の無い未来へ

このプラスチック・オーバーシュート・デーの設定と並行して、現在国際社会の中で国際プラスチック条約を2025年に締結すべく、対話が重ねられている。この条約を批准・施行し、プラスチック・オーバーシュート・デーが存在しない未来を実現するためには、単に廃棄物の管理能力を高めるだけでなく、次のような取り組みが必要とされている。

1)世界のプラスチック生産量に上限を設け、生産量そのものを徐々に削減しなければならない

2)循環型用途に設計されていないプラスチックは段階的に廃止しなければならない
サーキュラーエコノミーのソリューションが大規模に適用されれば、2040年までに年間のプラスチック汚染量を通常通りに比べて少なくとも80%削減することができる。

3)すべての国の参加を実現するには、国内法および行動計画の策定と実施を可能にする専用の資金調達や能力開発の仕組みを作る必要がある

4)政府と企業は、情報開示と報告の義務化を通じて説明責任を果たさなければならない


例えば、これまで「当社のプラスチックは100%リサイクル可能です」という廃棄物の情報の開示のみだったものを、「当社のプラスチックの27%は不適切に管理され、環境中に廃棄されています」という具体的な排出量とその処理方法の開示に移行する必要がある。

5)グローバルサウスの国々に廃棄物を輸出するグローバルノースの国は、少なくとも年間輸出量に応じて輸入国のインフラ整備を支援する責任を負わなければならない

EAの提言のように、私たちが共に手を取り、現在のリニア(直線)型の消費や社会構造を根本的に見直すことで、環境に負荷をかけないサーキュラー(循環)型のプラスチックの生産や消費があたりまえとなる未来を願いたい。

【参照サイト】July 28th 2023: Plastic Waste now exceeds waste systems capacity
【参照サイト】Earth Action | Plastic Overshoot Day: Report 2023
【参照サイト】Oceanographic | Earth reaches plastic overshoot day for the first time ever
【参照サイト】Euronews | International Plastic Overshoot Day: Which countries are best at recycling the polluting material?




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