Browse By

グルーミングとは・意味

※ センシティブな内容を含みます。

グルーミング

グルーミングとは?

グルーミングとは、もともと「(動物の)毛づくろい」という意味だが、性犯罪の文脈においては、子どもへの性的虐待を行おうとする者が、被害者となりうる人物に近づき、親しくなって信頼を得る行為をさす。チャイルドグルーミングとも呼ばれる。

グルーミングは、加害者が被害者に性的虐待に同意するよう強要し、逮捕される危険を減らすために用いられる。幼い子どもに対して最も多く用いられるが、10代の若者や、大人も同様な危険に晒されることがある。

家族や親しい友人、コミュニティのリーダーなど、被害者と自然に接することのできる関係のある人物がグルーミングの加害者となり得る。

グルーミングの手口

グルーミングにはさまざまな形態があるが、多くの場合、以下の似たようなパターンで行われる。

被害者を選ぶ

加害者は被害者となりうる人物を観察し、被害者への接近しやすさや被害者の脆弱性を認識した上で狙いを定める。幼い子どもを狙う加害者の場合は、未成年者と接触することのできる職を探すことがある。

被害者に接近し、孤立させる

加害者は、被害者を保護する人々から被害者を物理的または精神的に引き離そうとする。

信頼関係を構築し、秘密を保持させる

加害者は被害者に対して、贈り物をしたり秘密を共有させたりすることで被害者の信頼を得ようとする。そして、被害者に自分たちの関係が思いやりのあるものだと感じさせたうえで、その関係を秘密にしておくよう仕込む。

触れ合いへの感度を低下させる、性的な話題について話すようになる

加害者は無害に見える方法で被害者に触れ始める。例えばハグやくすぐりなどが挙げられる。そこから徐々に、マッサージや一緒にシャワーを浴びるといった性的な接触へと移行していく。また加害者は被害者に性的な話題について話し合ったり、ポルノを見せたりすることで、性的接触という概念へと導く。

加えて、加害者は周囲から疑いの目を向けられないよう、自分達の行動を自然に見せようとする。

オンライングルーミングとは?

グルーミングはリアルの場だけでなく、オンラインの場でも行われる。ネットやSNSを利用したものは「オンライングルーミング」と呼ばれる。

オンライングルーミングでは、加害者がインターネットでのチャットやSNS上で偽のプロフィールを作成し、子どもや10代の若者を装い、被害者に近づいて、信頼を得る。これは性的虐待やオンラインストーキング、ハラスメントへの最初の段階となる可能性がある。

全英児童虐待防止協会(NSPCC)は、2021年8月にネット上のグルーミング犯罪が過去3年間で約70%急増していることを発表した。2020年4月から2021年3月の1年間に発生した子どものグルーミング犯罪の数は5,441件で、過去最多である。

オンライングルーミングでは、インスタグラムやFacebookメッセンジャー、WhatsAppやSnapchatなど、若者に人気のSNSアプリが媒体として用いられている。そのため、子どもをオンライングルーミングから守る手段として、子どものネット利用を禁止することを考えるかもしれない。

しかし非営利組織「RAINN(Rape, Abuse & Incest National Network)」は子どものネット利用を禁止するのではなく、子どもの年齢が上がるにつれて自由度を高めること、子ども自身がリスクを認識し、経験したことを気軽に相談できるようにすることを推奨している。

グルーミング被害者への影響

グルーミングの被害者は、加害者による心理的および性的な虐待により深刻なトラウマを抱えることが多い。トラウマは、記憶に強烈な感情を伴い、日常生活において突然のフラッシュバックや悪夢として現れることがある。これにより、安眠できなくなったり、集中力が低下し、常に不安や恐怖に苛まれたりすることがある。

また、多くの被害者は、自分が被害に遭ったことに対して恥ずかしさや罪悪感を抱くと言われている。これは、加害者が被害者に対して「自分が悪い」と思い込ませる操作が関与している場合が多い。また、被害者は社会的な偏見やスティグマを恐れて、自分の経験を他人に話すことができずに苦しむこともある。そして、グルーミングの被害者は、PTSD(心的外傷後ストレス障害)を発症するリスクが高い。

そして、被害者を苦しめることが多いのは、彼らが恐怖や恥ずかしさ、罪悪感から「自分の被害を誰にも話さない(話せない)」状態だ。加害者による脅迫や操作も、被害者が声を上げることを妨げる要因となる。被害者の沈黙は、さらなる被害を防ぐための対策が取られない原因となり、他の潜在的な被害者にとってもリスクとなる。

グルーミングの被害者のサイン

グルーミングの手口は巧みで、周囲も気付かないまま長期間にわたって加害行為が行われることがある。

そこで「RAINN」は、性的虐待を受けている子どもや10代の若者、大学生に見られる警告のサインについてウェブサイトで公開。警告のサインを学ぶことで、子どもたちをより安全に守ることができると述べている。

以下に、性的虐待を受けていると見られる幼い子どもの警告のサインを一部抜粋する。

身体的なサイン
  • 性行為感染症
  • 性器への外傷の兆候(原因不明の出血やあざ、シーツや衣服などに血痕がある等)
行動的なサイン
  • 性的な話題について過剰に話す、または知っている
  • 年齢にそぐわない性的な行動
  • 過剰なほど従順な行動
感情的なサイン
  • 攻撃性が増すなど、気分や性格の変化
  • 自信や自己イメージの低さ
  • 過度の心配や恐怖心

(ここに書かれている特徴は、あくまで団体が公開した警告のサイン。必ずしもグルーミングの被害を受けている、と決めつけられるものではありませんので、ご注意ください)

まとめ

グルーミングを行う加害者は、周囲から疑われないために自分たちの行動を自然に見せようとし、被害者の心を掴んでいるため、グルーミングの手口に気づくのが難しい場合がある。特に、10代の子どもで、加害者と年齢が近い場合には気づくのが難しい。

そして冒頭でも述べたように、グルーミングは幼い子どもや10代の子どもだけでなく、弱い立場の大人も同様の危険にさらされている。

あなたの大切な人をグルーミングの被害から守るためには、あなたの大切な人が他の大人と秘密を共有するような関係を築いていないか、他の大人から不当な支配を受けていないか、といった兆候を見逃さないことが重要だ。

【参照サイト】Grooming: Know the Warning Signs | RAINN
【参照サイト】Record high number of recorded grooming crimes lead to calls for stronger online safety legislation
【参照サイト】Warning Signs | RAINN

【関連記事】「ネットで出会った人」が突然家に来たら?子供をネット被害から守る、NZ政府のキャンペーン
【関連記事】子どもの顔をSNSに載せる親に「ディープフェイク」で警告する、ドイツの痛烈広告
【関連記事】デンマークの警察は、なぜ頻繁にインスタに現れるのか




用語の一覧

あ行
か行
さ行
た行
な行
は行

ま行
や行
ら行
わ行
A
B
C
D
E
F
G
H
I
J
L
M
N
O
P
Q
R
S
T
V
W
X
数字

FacebookTwitter