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アクセシブルツーリズムとは・意味

アクセシブルツーリズム

アクセシブルツーリズムとは?

アクセシブルツーリズムとは、障害や高齢の有無にかかわらず、全ての人が旅行を楽しめるようにすること。

世界保健機関(WHO)によると、世界人口の15%にあたる約10億人が、何らかの障害を持って生活している(※1)。施設や製品、サービスの提供で全ての旅行者が楽しめるよう配慮することは、「持続可能な観光」の促進においても重要であり、人権の保護はもちろん、ビジネスの機会創出にもつながるとされる。

似たような単語に「ユニバーサルツーリズム」「バリアフリー旅行」などがある。アクセシブルツーリズムと同様の意味だが、主に日本で用いられることが多く、国際的にはアクセシブルツーリズムでの呼称が一般的である。

※1 UNWTO ACCESSIBLE TOURISMより

ツーリズムの課題

東京都産業労働局は、アクセシブルツーリズム普及に向けて、シンポジウムやセミナーを開催している。2019年1月に行われたアクセシブル・ツーリズム推進シンポジウムでの基調講演から、これまでの日本の不自由さについて考えていく。

スピーカーのグリズデイル・バリージョシュア氏は、病により手足に障害が残り、4歳から電動車いすでの生活を送っている。カナダ出身で、日本に住みながら海外の障がい者向けに日本観光の英語サイト「ACCESSIBLE JAPAN」を運営している。訪日外国人観光客で障がいを持つ人の目線から、バリージョシュア氏がかつて日本で感じた不便さを以下に挙げる。

  • イメージの問題
  • 主に海外メディアが発信する極端な日本の印象によって、行きたい場所に訪れることを諦めてしまう人もいるのではないか。例えば、和食のお店は段差があり、正座しなければ食べられないといった偏ったイメージ。車いすでの生活をしている人には、和食のハードルが上がってしまう。

  • わかりづらいバリアフリールートの問題
  • 東京は交通がとても発達しているが、地下鉄のエレベーターの表示は見つけづらい。警備員が日本語しか話せなかった場合、複雑な地下鉄の乗り換えを自力で行うことは困難だろう。

  • 福祉用具のレンタル需要と供給バランス
  • 自分の車いすで海外を旅したい人もいるが、重度の障がいを持っていてヘルパーだけでは移動できない人は、リフトなどをレンタルしたいと考えるだろう。需要はあってもレンタル会社の手続きが難しいことから、うまく供給が行われているとは言えない。

  • バリアフリーの詳細がわかるホテルの情報が少ない
  • ホテルの英語サイトには、バリアフリーについて記載がないことや、記載があっても写真がなく、イメージしにくい場合がある。バリアフリーには基準がなく、手すりだけついていてバリアフリーと呼んでいるホテルや、色々設備は整っていてもホテルより福祉施設に泊まる感覚の場所もあるだろう。特に車いすでの宿泊には、トイレやお風呂の情報が大切で、広さや設備を詳細に記載することが必要とされている。

    バリージョシュア氏は、日本に行きたいと思っている海外の障がいを持つ人に、より正確な情報を多言語で発信する必要があると考えている。

    国内外の取り組み

    国内外では、アクセシブルツーリズムを促進するための様々な取り組みが行われている。ここでは、以下の3つをご紹介する。

    Accessible Tourism Tokyo (東京都産業労働局)

    障害を持った人や高齢の人も楽しめる東京の観光情報を日本語と英語で発信。東京のエリアごとにモデルコースを作成している。サイトを開くと動画が載っており、障害を持っていない人にも普段気付けないことが発見できるページになっている。

    Japan Accessible Tourism Center (特定非営利法人Japan Accessible Tourism Center)

    国連世界観光機関(UNWTO)が発行するアクセシブルツーリズムマニュアルの、行先部門で取り上げられた。日本全国の観光地のバリアフリー情報を8種類の言語でまとめたWebサイト。ページを開くと日本地図が出ており、地域ごとに移動などに不自由があっても楽しめる施設やホテルの情報が写真とともに載っている。

    例えば、鹿児島県の奄美大島を選択すると、車いすの人でも快適に宿泊できる施設や、マリンアクティビティの詳細が記載されている。

    Scandic Hotels (Scandic Hotels Groups)

    スカンディックホテルは、スウェーデンのストックホルムに本社を置き、北欧中心に展開するスマートなデザインを施したホテルチェーン。ヨーロッパ諸国10か国に合計160のホテルを持つ。同社のアクセシブルツーリズムの取り組みを挙げる。

  • 全ホテルで101のアクセシビリティの共通基準を設けている
  • 障害を持つ人のサービスについて、ホテルの従業員を研修している
  • Webサイトで全てのアクセシビリティに関する情報を公開している

    Scandic Hotelsは、これらの取り組みに継続的に取り組み毎年改善しているため、会社のあらゆる部門でアクセシビリティに関する認識が高まっている。同社の今後の目標は、全てのヨーロッパで通用する基準を作ることと、障がいの有無にかかわらず、スマートなホテルとして選んでもらうことである。

    まとめ

    自身や身近に障害を持っていたり、高齢であったりする人がいる人は、日ごろの生活の大変さを知っているだろう。他国への長期間の旅行は様々な心配が生まれるかもしれない。そんななか、ここで紹介したWebサイトやホテルのように、より多くの人々が楽しめる旅行が、少しずつ増えてきた。

    障害のある当事者や観光業に携わる人だけではなく、そこに当てはまらない人であっても、こうした情報を収集をしたり、観光客により気持ちよく過ごしてもらえるようスキルアップをしたりすることで初めて、全ての人が快適に楽しめる旅行が実現するのではないだろうか。

    【参照サイト】UNWTO Manual on Accessible Tourism for All: Principles, Tools, and Best Practices
    【参照サイト】東京都産業労働局 Accessible Tourism Tokyo
    【参照サイト】観光庁 ユニバーサルツーリズムについて
    【参照サイト】特定非営利法人 Japan Accessible Tourism Center Home
    【参照サイト】logmiBiz ビジネスチャンスが眠るバリアフリー市場の可能性 高齢社会でニーズが拡大するアクセシブル・ツーリズム




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