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ASC認証とは・意味

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image via Photo_Pix/ Shutterstock

ASC認証とは

ASC(Aquaculture Stewardship Council:水産養殖管理協議会)認証とは、環境と社会への影響を最小限にした責任ある養殖の水産物である証のこと。国際社会環境認定表示連合(ISEAL)の適正実施に沿って策定された基準をクリアした漁業者が取得できる、信頼性の高い基準だ。サステナブルな漁業の認証制度として、他にMSC認証などがある。

ASCの7原則には、生物多様性や水資源、適切な化学物質の管理などの「環境面」と国や地域の法律への準拠や地域社会に対する責任と適切な労働環境など人間に焦点を当てた「社会面」の2つの視点から成り立っている。

世界の水産における現状

国際連合食糧農業機関(FAO)によると、漁業と水産養殖の総生産量は、2020年に史上最高の2億140万トンに達した。しかし、世界的に漁獲量は年々縮小しており、2020年は過去3年間との平均で約4パーセント減少した。原因は、気候変動などにより自然に変動する魚が減少していることやコロナウイルスによるパンデミックによる混乱などが挙げられる。

そんな中、生産量が史上最高となったのは、世界のほとんどの地域で養殖産業がコロナ禍でも成長を続けていたからだ。養殖が盛んな南北アメリカ、チリ、アジアやノルウェーの一部の国では、生産量の減少を相殺した。2020年には、推定5,850万人が水産養殖に関わる部門で雇用され、世界で約6億人が漁業や養殖に生計を依存しているという。

養殖は、水産物の生産量を増やし安定した食糧供給ができるが、さまざまな問題も抱えている。その一つに、Illegal(違法)、Unreported(無報告)、Unregulated(無規制)で行われる「IUU漁業」がある。中国の養殖場では、移民労働者に1日18時間以上働かせ、食事も十分に与えないなど深刻な人権問題が浮き彫りになった。タイの養殖エビの加工工場では、児童労働が高頻度で行われているという報告もある。

また、養殖は人権問題だけでなく、環境問題をももたらす。養殖の過程で使用される抗生物質や排水、廃棄物は赤潮を発生させ、環境汚染を引き起こす。養殖の餌となる魚は天然のものを使っており、養殖が増えると同時にイワシなどの天然の魚が減少することにもなる。

ASC認証のプロセス

国際的に信頼の高いASC認証。オープン、透明性、包括的という3つの価値観を反映させた認証を取得するのにはもちろん、維持するのにも厳しい基準がある。

認証取得の方法は、養殖場と独立した認証機関が契約を結び、試験に合格した審査員が養殖場のASC基準の適合性について判断を下す。厳しい審査を通過し、認証を取得したとしても有効期限は3年間だ。認証を取得すれば終わりではなく毎年「サーベイランス監査」という改善計画の実施状況などのサンプリング調査を行う、リスク分析を受ける必要がある。

ASC認証を取得した養殖場は、ASC認証水産物として販売できる。ASCのロゴを正しく使用するためには、「トレーサビリティ」を確立するシステムが必要だ。サプライチェーンの中で水産物を取り扱う全ての事業者は「CoC認証」というチェーン・オブ・カストディー (加工流通過程の管理)の所持が求められる。こうすることで、生産から調達まで一貫して透明性を保つことのできる仕組みになっている。

ASC認証のメリット

ASCロゴがあることで、養殖業者や小規模自営業者は取引先や業界内でステータスを向上させることができる。環境と社会に責任を持った業界を先導する業者となったり、信頼性の高いラベルを付けることで、付加価値を生み新規市場へのアクセスが可能になったりする。

政府にとってのプラスの面は、国を上げて取り組む持続可能な開発目標(SDGs)を促進させられることだ。ASC認証を取得した養殖場は、環境面だけでなく、ジェンダー平等も実現できていることなどから、さまざまなSDGsの取り組みを加速することにつながる。

消費者は、レストランやスーパーでASC認証のついた水産物を目にすることで、海の問題を知るきっかけが増える。マークのついた商品を消費することで、身近な行動から社会貢献ができるようになる。

ASC認証の懸念点

サステナビリティの向上につながるASC認証だが、懸念すべき問題の1つにコスト面を挙げる。

認証を取得するまでのプロセスには、審査費用や交通費、CoC認証規格を順守するためのスタッフ教育など諸経費が必要になる。認証サービスのコストは複数の審査機関から見積もりを依頼するなど、準備段階からコスト効率を上げるための工夫が肝心だ。

ASC認証の有効期限が切れた後は更新審査を受ける必要があるため、長期的なコストがかかる。また、ロゴの利用にはライセンス量がかかり、販売する量が多いほど高額になる。個人や小規模団体などは、持続可能な養殖を行っていても費用面でASC認証も取得に壁ができてしまう。

ASC認証の導入事例

持続可能な漁業・水産業で獲られた、もしくは適切に管理された養殖業で育てられたシーフードのことである「サステナブル・シーフード」の導入が進んでいる。

イオン

総合スーパー、企業で流通・加工認証(CoC)の取得100パーセントを掲げ、グループで販売する水産物の金額の20パーセントをMSC、ASC認証のものにすることを目指している。

ヒルトンホテルズ&リゾーツ

2022年までにグループ全体の25パーセントをMAS、ASC認証の水産物から調達することを目標にしている。

パナソニックの社員食堂

約100ヶ所ある国内にある全ての社員食堂へのサステナブル・シーフードの導入を進めている。

株式会社JR東日本フーズ

2020年時点で31企業3,149事業所がCoC認証を取得。「回転寿司 羽田市場」で回転寿司として初めてASC認証の水産物の提供をし始めた。

まとめ

私たちの身近にある魚は、環境と社会の課題に直面している。普段魚を食べる人は、スーパーに行ってASC認証のラベルがついている商品を探してみてはどうだろうか。ASC認証の水産物なら、いくら食べても構わないということでもないため、個人が自分に合った食生活を心がけることが大切だ。

【参照サイト】ASC Japan Aquaculture Stewardship Council
【参照サイト】Marine Stewardship Council (ASC) 2019 認証取得に向けて
【参照サイト】Food and Agriculture Organization of United Nations Towards Blue transformation
【参照サイト】Aquaculture Stewardship Council ASC認証




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