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クローズドループとは・意味

closed loop/CE

クローズドループとは?

クローズドループとは、従来の「Take(資源を採掘して)」「Make(作って)」「Waste(捨てる)」というリニア型経済システムのなかで活用されることなく「廃棄」されていた製品や原材料などを新たな「資源」と捉えて、循環させること。クローズドループはサーキュラーエコノミーの根本的な概念であり、下図でも「ループを閉じる」ことが示されている。

(c)オランダ政府 From linear to a circulair economy

関連用語に「オープンループ」があるが、オープンループとは、際限なくリサイクルされるのではなく、最終的にはループから外れて廃棄されることを指す。原材料の寿命が延び、廃棄を遅らせられるが、リニア型経済システムから脱却していない。

クローズドループの実現方法

サーキュラーエコノミーのカギとなるのは、製品寿命の延長はもちろんのこと、廃棄を防ぎ循環しつづける設計である。クローズドループを実現する方法について、実際のアイデアと共にいくつか紹介する。

循環型の材料の採用

  • 廃棄物や再生材、バイオベースの材料、再生可能エネルギーを利用する
  • 修理可能・リサイクル可能な製品設計にする
「修理なんて無理」を変える電気ケトル

一般ユーザーでも修理ができる箇所、専門家が修理するべき箇所を明確に分けることで、ユーザーの修理に対するハードルを下げられ、回収コストを最小限にしている。

「修理なんて無理」を変える電気ケトル。リペア促進の秘訣は、複雑な部品を“隠す”こと

ウクライナ避難民向けのサーキュラー木造仮設住宅

一時的に使用する仮設住宅だからこそ、解体を前提とした再利用可能な素材をつかった建材を採用している。簡単に解体でき、また仮設住宅が必要となればすぐに組み立てられる。

誰かの“必要”にすぐ寄り添う。ウクライナ避難民向けのサーキュラー木造仮設住宅

回収のロジ設計

  • メーカー側が商品の所有権を持ち続け、リサイクラーと連携しロジを設計
  • 再生可能エネルギーを使った回収方法にする
AGCが目指す、風土に根差したサーキュラーデザイン

ガラスメーカーのAGCがリサイクラーとつながり、地域の中でガラスを循環させる仕組みを構築しようとしている。

諏訪から始まる、ガラスが地域で循環する未来。AGCが目指す、風土に根差したサーキュラーデザイン

再資源化

  • 廃棄物や副産物から回収した、資源やエネルギーをできるだけ製品のまま市場に投入し、製品のままでは需要がないものを他製品に活用する
バリューブックスが描く、値段がつかない古本の行き先

何もしなければ古紙回収に回っていく、値段がつかない本。それでもできるだけ本を本のまま循環させようと、さまざまな工夫をしている。

「値段がつかない古本」はどこへいくのか。バリューブックスが描く、循環の物語

クローズドループの利点

資源を循環させるクローズドループの利点として、以下が挙げられる。

調達コストの削減

バージン原料の利用を減らせるため、国際紛争や為替変動による物価高騰など地政学的リスクを抑えられ、調達コストを削減できる。

CO2排出量・フットプリントの削減

世界のサーキュラーエコノミーを倍増すれば、2032年までにCO2排出量は39%削減でき、原材料のカーボンフットプリントは28%削減できる。

イノベーション創出

メーカー・小売・回収・リサイクル企業など幅広い業種の連携や、ユーザーに回収をよびかけることで、さまざまな協働が生まれ、その結果、地域のつながりの再構築やオープンイノベーション創出が期待される。

ロイヤルティの高い顧客の把握と価値の創出

修理の頻度や修理が必要になるタイミングや条件をメーカー側が把握することによって、顧客とのタッチポイントが増え、高価値なユーザー体験の創出が可能になる。

循環型モデルへの移行による新規雇用の創出

衣類、スクラップ金属、電子機器など、さまざまな廃棄物を回収・再利用・再資源化するために、約700万から800万の新規雇用の創出が想定されている。一方で、グローバルサウスと呼ばれるアフリカ・中東近辺にある低所得国の労働者の73パーセントが非公式にサーキュラーエコノミーの中核となる仕事を担っており、新規雇用の創出によりこうした人々への影響の想定が不十分だというもある。

クローズドループに関連する注目キーワード

リバース物流

リバースロジスティクスはユーザーから始まり、販売業者や製造業者まで遡る。例えば自動車業界では、廃車から部品を回収し、リサイクラーや製造業者が部品を再利用・金属類は原料にリサイクルする。部品・原料は市場に再投入されることもある。

効率的な物流を実現するためには、製品を軽量化・部品を回収しやすくするための取り外しやすい設計・ユーザーの近くに工場を持つこと・共同回収といったさまざまな手法がある。また、輸送方法は持続可能なものにする必要があり、自転車輸送のサイクルロジスティクスもまた一つの例だ。

デジタル製品パスポート

ある商品の原材料から使用場所・リサイクル方法に至るまで、ライフサイクル全体の情報のこと。この情報をデータとして記録し、追跡することで、再利用や修理・リサイクルなどをしやすくするための取り組みだ。ICチップの埋め込みによる素材や製品のIoT化、改ざん防止のためのブロックチェーン上への記録など、テクノロジーを活用することで、原料調達から回収にいたるまでのバリューチェーン全体で素材や製品の動きを透明化し、信頼性の高いデータを流通させることで真の循環を実現できる。

デジタル製品パスポート(デジタルプロダクトパスポート)とは・意味

PaaS

製品が提供する「サービス(機能)」をユーザーに継続的に販売するというモデルのこと。リースやシェアリング、サブスクリプション(定額・継続課金)モデルなどが該当する。あらゆるものがサービス化されるXaaS(X as a Service)として、空調機を購入・所有せず月額制で利用できる「Air as a Service」などがある

クローズドループの注意点

小さな循環を目指す

製品はできるだけ製品のまま循環させ、廃棄させないのはもちろんのこと、遠方にいる修理業者や原料に戻すリサイクラーの手に渡る製品を少なくするように、ユーザーの近くの循環でループを閉じる工夫が必要だ。たとえばユーザーやその近隣店舗自身で修理しやすくしたり、回収から再資源化までの距離を短くしたりといったことだ。

再資源化製品の質担保

水平リサイクルされた段ボールや缶の質が変わらないように、再資源化された製品が、劣化のない状態である必要がある。特に、汚染物質や毒素が蓄積して二次製品の安全性が担保されなければならない。

製品の寿命と回収・再資源化プロセスのバランス

製品やサービスによっては、売り切りモデルで製品自体の長寿命化を図るほうが経済的にも環境的にも良い場合がある。たとえば、短寿命・低耐久性製品の場合、メンテナンスの頻度が高くなるとコストが増え、売り切りモデルの方が収益性が良くなってしまうことや環境負荷が低くなることがある。

そうした経済性はもちろんのこと、製品やサービスを、原材料採取から、調達・製品製造・輸送・使用・廃棄・リサイクルに至るまで、すべてのライフステージを範囲として環境負荷および影響の観点から定量的に評価(LCA)し、判断する必要がある。

クローズドループのこれから

バージン材料の使用を最小限にして自然のシステムを再生しながら、設計段階からごみを出さないように留意し、製品と原料材を捨てずに使い続けるクローズドループの概念。サーキュラーエコノミーへの移行において重要な要素となるクローズドループの実現には、現在多くの組織が産学民連携で取り組んでおり、今後の展開と成果が期待される。

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【参照サイト】Circular Economy Hub 会員募集ページ

【参照サイト】サーキュラーエコノミーとは・意味
【参照サイト】From a linear to a circular economy




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